ゴブリンスタンピード ②
ベータでのスタンピードでは、戦闘メインのプレイヤーが4000人ほど参加したらしい。そして、その時に出てきたゴブリンはざっとプレイヤーの3倍ほどの数だった
ボスが倒されるまでは、ゴブリンが新たに湧いて補充されてたけど、開始前に出てきた数はそれくらいだった。なので今回も、プレイヤーの3倍、半数が街に戻るとしても6倍程度だと予想されていた
だが、目の前のゴブリンの数は、ここにいるプレイヤーの10倍…下手したら15倍はいるだろうか?明らかに俺たちだけでは手に負えない
「おいおいおい、こりゃさすがに1匹も通さねぇってのは無理があるんじゃねぇか?あいつら呼び戻すか?」
「……いや、問題ない。あの時と比べて魔法を持つプレイヤーが格段に増えた。殲滅力なら倍以上だろう」
「いや魔力がすぐに尽きるだろ。マナポーションが足りなくなるんじゃねぇか?俺たちなら予備もあるが、全員がそうじゃないだろ」
「…しかたない。私のクランの備品を解放し、売ることにしよう。君たちもそうしてくれ。それから、我々上位クランは後ろに陣取ることにしよう。まず他のプレイヤーに任せて、崩れたところの補助に入ることに注力すべきだ」
「…チッ、しょうがねぇ。おめぇらがやるんならうちの備品も出すぜ」
ここにいるクランのマスター達が了承し、一斉にクランチャットで連絡をとり始めた。念の為、【薬師】プレイヤー達に増産のお願いもしておこう
魔法はたしかに高火力だけど、MPという残弾数がある。補充しようにもクールタイムがあるので、短時間に連続して使うことは難しい
マナポーションを自分たちだけで使おうとしても、クールタイムのせいで十全に使用できないだろう。それなら多くのプレイヤーに使ってもらったらいい。デリックの判断は正しいな
「よぅデリック、俺っちのクランは前に行かせてもらうぜ。俺っち達は遊撃ジョブばっかだし、前が詰まると動きにくいんだわ」
「遊撃こそ補助にいて欲しいが……数を減らすのも重要か。いいだろう、〈ビーストロード〉に先陣を任せる」
「おいずるいぞ!オレたちも行くからな!!!」
「あまりそっちに偏らせても意味がない。そのかわり、〈竜殺の光剣〉には次鋒を任せようと思う。プレイヤーが大きく崩れたら、クラン全体で当たってくれ」
「……じゃあいいや!!オレの獲物残しとけよ!!!」
「あー、俺たちはバラけて動くか。仮にも〈傭兵団〉なんでな、知らん奴と合わせるのは慣れてる」
「私らもそうさせてもらうよ。〈オルキヌス〉はどうする?」
「そうだね、俺たちもパーティ単位で動いて補助に当たることにするよ」
俺たちのクランも人の入れ替えはできるけど、基本固定パーティだからな。みんないつものメンバーでいたほうが力を発揮できる
クランごとの方針を決め、メンバーに通達したところでイベント開始のアナウンスが流れた
〈〈まもなく、『ファスト』でスタンピードが開始されます〉〉
〈〈開始まで 10…9…8…〉〉
「『ファイアアロー』、『ウォーターアロー』、『ウィンドアロー』、………」
「え?」
ガヤガヤとうるさかったところに、何故かスキルを使用する声が聞こえてきた
声の方を見れば、デリックが頭上に魔法を待機させているところだった。しかも彼だけじゃない、〈アルファウィザード〉のメンバー全員が魔法を溜めている状態だった
〈〈…1…0!!!〉〉
「斉射!!!」
カウントがゼロになり、侵入不可エリアが解除されると共に、デリック達が魔法を放ち始めた
魔法はゆみなりの軌道を描き、スタンピードへと飛んでいく。一部は途中で霧散していたが、大半がゴブリンの前列、その少し奥に着弾した
ゴブリン共は、スタンピードボスのバフを受けていて通常より強化されているはずだが、そんなもの無意味だと言わんばかりに一撃で屠っていく。中には、一つの魔法で2,3匹倒すものもあった
「おおおおいテメェら!!!?抜け駆けしてんじゃねぇよ!!俺らには待機しとけって言っといてそれかよ!!」
「すまない、伝え忘れた。遠距離攻撃ができるものは、スタンピード後列を削り、前衛の負担を減らしてやれ」
「ぜってぇワザと忘れただろうが!!チッ、【弓士】と魔法ジョブ!撃ってかまわんぞ!!!」
「『魔力操作』レベルが足りず届かなかった者は待機。届く者は、マナポーションの効果を加味し、一分に40MPまで使用可能とする。全力はまだ出すな」
悪びれる様子もないデリックは、そう指示を出しながらもポーションを使っている。伝え忘れたことはどうかと思うが、指示自体は的確だと思う
「俺たちのクランも同じ指示を出すよ。ハナさんも撃っちゃって!」
「わかったわ!『ダークアロー』!」
うちのパーティの紅一点、魔法アタッカーのハナさんが放った魔法も、プレイヤー達の頭上を越えてスタンピードに着弾した
「あんなに密集してると、どこを狙っても当たるわね。もっと近くに行って範囲魔法を撃ちたくなるわ」
「あ、前の方で使ってるプレイヤーいるね」
「ええ!?ずるいわ!私も撃ちたい!早く劣勢になってー!!」
範囲魔法系はスキルLv.10からで所有者は少ないけど、伸ばすスキルを一つ二つに絞ればそこまで難しくはない
前方ではそのLv.10魔法が放たれていた。特にあそこの連携は上手いな。1人が『ウォーターウェーブ』でゴブリンを押し戻し、固まったところに他の人たちが『フレアボム』や『エアカッター』で一掃している
消耗の激しそうな作戦だが、たしかにあれならこのスタンピードの数にも対処できるかもしれない。これならなんとかなりそうだ───
────ドッッゴオオォォォォン!!!!!!!
「「「「「「ゲギャァァァ!!?」」」」」」
「「「「「ファ!!?!?」」」」」
少し気を抜いていたところに、特大の爆発音が襲ってきた
爆音のほうを見ると、大量の土埃が舞っていた。それに巻き込まれるように、ポリゴンに変わる途中のゴブリンが何十匹も巻き込まれている
「な、なん、なんだ今の──」
だが、これは混沌の始まりに過ぎなかった
ドッッゴオオォォォォン!!!!!!!
ドッッゴオオォォォォン!!!!!!!
ドッッゴオオォォォォォォォオン!!!!!!!!
スタンピード各地で連鎖するように発生する大爆発。中には、前方のプレイヤーも何人か巻き込まれているようだ。前衛として仲間を守る、タンク職のプレイヤーがだ
突然の大惨事に、プレイヤーもゴブリンも呆気にとられたように戦闘を中断する
そのとき、うちのパーティの斥候兼回復役のフィルが、何かに気付いたのか声を上げた
「あ、あれはもしかして………「火山の地雷原」ですか!!?」




