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スライムわんこそば




▼▼





「ふむ、ここら辺でいいかな」



 翌日、俺は『ファスト』から少し離れた草原にいた


 サービス開始からそこそこ経ったためか、周囲にプレイヤーはまばらにしか見当たらない。あの激怒スライムを狩っていた集団も先へと進んだようだ


 俺はスライムが密集しているポイント───[魔草]の群生地の一つに到着し、そこにいたスライムを一掃する



「今いる奴には効果ないからな、『テイム』は後だ。さてと……」



 俺はポーチから一つのアイテムを取り出し、群生地の真ん中に置く



「『薬効促進』、『種火』」



 アイテムに火をつけると、周囲にうっすらと薄紫色の空気が漂い、人間にはわからない匂いが拡散する


 このアイテムは、[魔草]をはじめとした様々な薬草で自作した[魔寄せのお香]の一種だ。これはスライム系限定で、本来闘争本能を刺激する要素を鎮静作用に置き換えた、ネコのマタタビみたいな効果である




「プルプル」「プルルン」「ピキー!」


「お、来た来た」



 水色のゲル状のスライムが、四方八方からフラフラポヨンポヨンと近づいてきた


 それを見た俺は、ポーチから[魔草団子]を取り出してあたりにばら撒いた



「ほ〜ら、お腰につけたきび団子だぞ〜」


「プルプル」「コポコポ」「プヨプヨ」


「はい食った〜!お代は身体で支払ってもらうぜ『テイム』『テイム』『テイム』ゥ!!!」


「「「ポヨ?」」」



 スライムが団子に覆い被さり、体内に吸収したのを見計らって『テイム』をかければ───三連続で淡い契約の光が出て、1発で『テイム』が成功した




 モンスターをテイムする方法は大きく四つあり、「弱らせてテイム」「好感度を上げてテイム」「有精卵を孵化させる」「専用クエストの最中、または報酬でゲット」がある


 一つ目の「弱らせる」は一番メジャーな方法だ。体力を削ったり状態異常にかけたりして『テイム』の成功率を上げる方法だ


 二つ目の「好感度を上げる」は、実はあまり使いたくない方法だ。前言った「好感度」が上がった状態から始まるので調整が面倒なのだ。ただ材料が揃えば成功率を100%にできるので、手っ取り早くテイムしたい場合によく使う


 三つ目の「有精卵を孵化」はボスをテイムするときによく使う方法だ。卵はほとんどのモンスターが激レアドロップとして落とし、その中でも「(食用)」がついていないのはさらに稀だ。ボスエリアでは『テイム』できないため、どうしても欲しい時はこれを狙う必要がある


 最後、四つ目の方法「クエストでゲット」は、一番重要な方法だ。ほとんどが一人一体しかゲットできないモンスであり、その分強力なやつばかりだ。『決闘鯖』のパーティ戦で使われるモンスターのほとんどがクエスト産だったりする




 さて、今回使ったのは二つ目の方法だ。スライムは[魔草]が好物で、よく魔草の群生地に集まることが多い。なので魔草セットを使って引き寄せたのだ


 『料理』ではなく『錬金』で作った団子なため、あまりいいものはできなかったがそこは[魔草]の品質で補った



 俺は、テイム成功したスライムを一体『鑑定』する




「ハズレか、まあ期待してなかったけどね。『逃がす』」


〈テイムモンスターを逃がそうとしています。本当に実行しますか?〉


「はい」


〈一度逃した個体は二度とテイムすることができません。本当に実行しますか?〉


「イエス」


〈最後の確認です。この行動は取り消すことができません。本当に実行しますか?〉


「鬱陶しい」



 3回の警告を全て「はい」を選択し『逃がす』を実行すると、そのスライムは離れるように歩いていき、ある程度移動したところで消滅する


 テイム枠には限りがあるからな。こんな雑魚モンスで埋めるわけにはいかない



「『鑑定』、お前もハズレか『逃がす』。『鑑定』、『逃がす』。『テイム』『テイム』『テイム』『テイム』『鑑定』、『逃がす』……………」



 寄ってきたスライムを次々に『テイム』しては逃がしていく。一々「はい」を3回選ぶ必要があるのがちょっと面倒だ。ついでにとあるスライムを探しているのだが、流石にこれは見つからない



「野生ポップ率、たしか0.0001%だっけなぁ………でも気づかず逃してたら悔しいし」



 今『テイム』できれば、あの面倒なクエストをクリアする必要もないのになぁ………



 時折[魔草団子]を撒きながらもスライムを『テイム』していき、そのついでに『裁縫』のレベリングもすることにした


 [初級裁縫セット]を展開し、[綿雲花]を糸車を使って紡いでいく。後で[中級裁縫施設]を買って、機織り機で布にしよう


 まだ余裕を感じた俺は、『魔力操作』を使って魔法を頭上でグルグルすることにした




「早いとこ金を稼がないとな、『鑑定』。あのイベントが終わる前に、全中級生産施設をコンプしなきゃいけないし、『逃がす』。後どれだけ稼げばいいんだ?『テイム』。たしか錬金と調合は取ったから後は────」






〈『魔力操作』レベルが上がりました。Lv.MAXです〉

〈条件を満たしました。スキル『魔力感知』が獲得可能になりました〉

〈条件を満たしました。スキル『二重詠唱』が獲得可能になりました〉




「おお!?神スキルキターーーー!!!」



 うわ、後1レベだったのかよ!?これがあったらテトロ戦も楽勝だったのに!!!


 『二重詠唱』で高密度の弾幕が張れるし、『魔力感知』さえあればテトロを見失うことも………あいつの『隠密』レベルがわからんけど、多分見失わないだろう


 たらればは後にしといて、早速スキルを習得していく



〈BP5を消費し、スキル『魔力感知』を獲得しました〉

〈BP5を消費し、スキル『二重詠唱』を獲得しました〉



「くっくっく、もはやワガハイを止められる者はいない……!!」



 しょうもない一人芝居をしながら、『魔力操作』で操っていた魔法を『二重詠唱』のものへ変える。もちろん『テイム』も続行している


 だんだん楽しくなってきた。ついに明日はスタンピードだ!!


 俺は活躍しないけどね

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