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ハチミツください

 悲鳴の先に見えるのは、数十、下手したら百匹以上いる巨大蜂の大群と、そいつらから必死に逃げ続けている3人のプレイヤーだった


 この量は、おそらく蜂の巣にちょっかいだしたな?巣から離れているから蜂の数は半分ほどに減ってるはずだが、怒った蜂が周囲から仲間を呼び戻しているからこのままだとどんどん増え続けるだろう


 あいつらの自業自得だし、助けるメリットもないが……俺の心は助けたい方向に傾いている


 お助けNPCごっこをし始めたせいなのか、単純に初心者に優しくしたいのかわからない。もしかしたらチヤホヤされたいだけかもしれない


 ……もしかしたら、封印したはずの「俺ツエー願望」が漏れ出ている可能性もある



 とにかく!彼らを助けることに決めた。だがログアウトしている暇はなさそうだ。ボイチェンとフードだけで誤魔化せるかな?







◆Side:トレイン中のプレイヤー





「やべぇぞ、もうスタミナが切れそうだ!そろそろ覚悟を決めたほうがよさそうだぞ「チョコフォンデュ」!!!お前も人のこと言えないぐらい変な名前じゃねぇか!!」


「うっせぇかわいいだろが!!くっ、こうなったら最前線組の意地見せたるわよ!!!」


「姉ちゃんタンク!はよ前出て!!」


「マ行てめぇあとで覚えてろよ…!!」



 クソ、こんなことなるならタンク職なんて選ぶんじゃなかったわ



 最前線組、またの名を人柱。未知の要素に果敢に挑み、後続の助けとなる情報を入手するプレイングのことだと私は認識している


 成功すれば先行利益と栄誉を得ることができ、失敗したら追い抜かされる一因になることも


 他の最前線組の中にはとにかく一番になろうとするやつらもいるが、私はそれを「攻略組」と言い分けている


 やってることは同じだが、失敗しそうなことにも軽々と挑戦できるのが最前線組で、ある程度安全マージンを取るのが攻略組だと思っている。どちらがいいとか悪いとかはないが



 そして今回も、最前線組足るべく行動した結果だ。【料理人】の連中の「もっと食材のレパートリーを増やしたい!!」という要望に応え、こうして新素材の開拓に来たわけだ


 決して私がハチミツ欲しかったわけではない。甘いもの好きな私でも、虫が大量にいるところをつついたりしない。本当だぞ?



「『タウント』!卓上、バフよこしな!!」


「『アースブレス』!マジで迎え打つのか!?地獄が長引くだけだと思うぞ!?」


「『エンチャント・ファイア』、『身体強化』!ただでやられるのは面白くないってか?」


「その通りさマ行!!半分ぐらいは道連れにしてくよ!!」


「「おう!!!」」



 と、意気込んだはいいものの、さっきのアーツでスタミナがすっからかんなんだよね。半分どころか一体も倒せるかどうか……





 ──コン、コロンコロン



「……ん?」



 盾を構える私と迫り来るハチの大群の間に、小石のようなものが転がってきた




 ───ボンッッ!!!



「のわぁっ!?」


「「「ギギィッ!!?」」」



 転がってきたそれは小さな爆発を起こし、それに驚いた蜂が急ブレーキをかけた


 今のは……爆弾?そんなことを考えていたら、さっきのと同じものが何十個も転がり込んできた




 ──ボボボボボボボボボボッッッ!!!!!



「「「「「ギィィィィィ!!!??」」」」」


「な、なんじゃこりゃあ!?」


「姉ちゃん!?何やったの!?」


「おいフォンデュ!!今度はなにやらかしやがった!?」


「私じゃねぇ!!私にもなにがなんだか……」



「おい、そこの三人」


「だ、誰だ!!」



 いつの間にか後ろに人がいた。振り向くと、そこには夜闇に溶け込むかのような外套を纏った人物が立っていた



「黒い、ローブ……?」


「これを飲みな。スタミナポーションだ」


「あ、ああ。なあ、あんたもしかして」


「いいから飲め。そんで俺についてこい。あの爆発じゃ大した足止めにはならない。はやく行くぞ!」



 そういうと、その黒ローブは走り出した。私達はスタミナポーションとやらを飲み、慌ててそれについて行った



「『ダッシュ』!姉ちゃんあれって!!」


「『ダッシュ』!ああ!十中八九あの徘徊ボスを倒したやつだ!!!」


「『ウィンドブレス』!トレインしたから出てきたのか?」


「プレイヤーがやらかした時の救済NPCか!なら試すの躊躇ってたあれやこれやもやれそうだな!!」



「今回はたまたま見かけただけだ。次やっても助けないからな」


「あ、すんません」「聞かれてたな」「怒られちった」



 意図的にやるのはあんまりよろしくないようだ


 黒ローブは時々後ろを確認しながらも、森をかき分けドンドン進んでいく。だが、一番足の遅い「卓上ボール盤」に合わせているため、ハチ共との距離は一向に広がらない



「……ちょっと減ってきたか?そこの盾持ちの姉ちゃん!あのハチ共に挑発かけてやれ!!」


「は!?逃げるんじゃないの!?」


「いいから早く!そろそろ着くぞ!!!」


「どういうことかワケワカメなんだが!?くそ、『タウント』!!!」



 言われた通りハチのヘイトを取り、さらに引きつける。意図が全くわからないが、救済キャラの言うことには従った方がいいだろう



「───あった、あそこだ!お前ら、あの穴を飛び越えたら茂みに隠れて待機!!」


「了解!!でもなんでこんなとこに穴が……?」


「え、もしかしてここって……」



 目の前に直径1mはありそうな穴があった。その付近にはいくつかの影が蠢いているが、よく確認している暇はない



「目眩しいくぞ!『フラッシュ』!!!」


「うおっ、例の『光魔法』か!?よっと」


「『消臭』。このままじっとしてろよ?よ〜く見てな。面白いことが起こるぞぉ?」



 言われた通りに穴を飛び越え、茂みの中に身を潜める


 私たちを見失ったハチがそこらじゅうを飛び回っている。これじゃすぐに見つかってしまうぞ!?



 だが、そこには別の一団もいた


 ブンブンと縄張りを荒らす無粋な侵入者たちへ、その小さな体躯が次々と飛びかかった





「「「「「「ギギギギギギッ!!!!」」」」」」


「「「「「「ギギギギッ!!!?!?」」」」」」



「あれは……ジャイアントアント!?」


「やっぱそうだったか……そりゃそうだよね、蜂の巣があるなら蟻の巣もあるよね」


「魔物同士が争ってる……?」



 私たちが飛び越えた穴から、次々と巨大アリが這い出てくる。その体長は50cm程と巨大ハチの半分ほどであるが、いかんせん数が多く拮抗している


 まさか、黒ローブはこれを狙って……!?



「さあ、蟻vs蜂の虫戦争、開戦だ!!!」


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