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お助けNPC




「これでエリも魔法ゲットね」


「まだ脇腹がピクピクするよ〜」


「……ああ、なんかすまんかった」


「いいのよ。だってこんなに早く魔法を習得できたんだもん!しかもプレイヤー同士で教えられる方法まで!」


「クランチャットに報告しよ〜?それで今いるメンバーに魔法教えようよ!」


「わかったわ。でもそれはエリがやって?エリの助言のおかげでコオロギさんを見つけることができたんだから!」


「ええ〜?でもコオロギさんを見つけたのはサチじゃん!サチの手柄だよ〜!」


「いやいや──」


「でもでも──」



 なんか譲り合いが始まったが、俺はあんまり気に留めなかった。初めてのNPCロールプレイが思った以上にうまくいって、達成感に満たされている


 気分もいいし、ついでにあれも教えちゃおっかな?うん、そうしよう。まだ譲り合っているようだが、ここは奥義「空気を読まないNPC」を発動!!



「エルフの嬢ちゃん、剣持ってんのに魔法を欲しがってたってことは、もしかして『魔法剣』狙いか?」


「いやいや──え?魔法剣って何……い、いえそうよ!その魔法剣が欲しかったの!!」


「そうか!やっぱりそうだったんだな。俺の勘はよく当たるんだ」


「サっちゃん?どしたの?」


「フラグを踏んだみたいだわ。多分『剣』と『魔法』スキルを持ってるからかしら?」



 サチは『魔法剣』のことは知らなかったようだが、とりあえず話を合わせることにしたようだ。俺もそれに乗っかってやる



「直接教えてやることはできねぇが、習得のヒントは教えてやれるぜ?」


「習得、ってことはスキルなのね。それで、どうしたら教えてくれるの?」


「今回は特別にタダでいいぜ。冒険者ギルドの資料室を探してみな。あそこは今ちぃとばかしキナ臭ぇが、資料はそのままのハズだ」


「ギルドの資料室ね!わかったわ。ありがとう!!エリ、行ってみよう?」


「おっけ〜!それじゃおじちゃん、またね〜!」


「──俺はいつもいるってわけじゃねぇ。お前らが行き詰まったときに現れるのさ。願わくば、俺の出番が少ないことを──」


「え?」



 俺はさっきまで考えていた、意味深でそれっぽい雰囲気のセリフを放つ。羞恥心がゴリゴリ抉られるが、このセリフは今後も使うつもりだ


 バサっと背を向け、一瞬で装備を換装。思考操作で[亜麻色のボロマント]を[黒大蛇の外套]へと変える。そして、『闇魔法』Lv.10の『シャドウダイブ』を使い、影の中へと隠れた



「き、消えちゃったよ!?」


「重要人物だったのかしら……。でも、行き詰まったときってことは、救済NPCみたいなのかしら?」


「すごいキャラにあっちゃったね!これもクランのみんなに教えにいこ〜?」


「…そうね。行きましょう」









「───ぷはぁっ!!」



 すぐに行ってくれて助かった。この場で話し合いとかされなくてホントによかった。『シャドウダイブ』で入る影は水中判定なので、酸素値がじわじわと減っていくんだわ


 凝った演出をしたのは、「またここに来ても会えるとは限らない」ってのと「ヒントを出すお助けキャラ」ってのを伝えるためだ


 これだけのために『闇魔法』をLv.10まで上げていた。間に合わなかったら『隠密』を使うつもりだったが、目の前で使ったら効果が落ちるから博打だったんだよな



 一旦ログアウト、アバターを元に戻して再ログインする。装備を変更して初期装備一式にし直す



「さてと、狩りの時間だ!!」



 おっと、ボイチェン外しとかないと





 流れ作業のように採取、戦闘をしながらも、今後のことについて考える


 NPC「コオロギ」は夜だけの出現にしようかな?神出鬼没でいつ現れるかわからないってことで、たまに昼間にも出るって方がいいだろうか


 助言は1日一個までで、2,3日出現しない日もありにしよう。俺もプレイヤーだから寝る必要あるし


 でも、どうやって助言を与えようか。今回みたいに話しかけられるのを待つだけだと、本当に教えたいことを引き出せない。これも今後の課題だな


 あと、神出鬼没を目指すなら、隠密系スキルも揃えたいな。この狩りで【弓士】レベル20にして、【盗賊】に転職だな。ステ補正もAGIとDEXで相性いいし、足りなかった近接も埋めれるしな


 ……いやいや、ダメだダメだ。器用貧乏にするんだった。無意識にガチで行こうとするのよくないな。それにスキルが欲しいならギルドの資料室行けばいいじゃないか


 …あっ、転職にもたしか全体アナウンスが流れるんだわ。さっき確認した時はなかったし、これも待機か……


 このもどかしさは全部、これから挑戦するボス共で発散させてもらうことにしよう





 ボスエリアに入ると、そこはシンと静まり返っていた


 森の中にぽっかりと開いた空間で、フィールドの端にはちょろちょろと小川が流れている


 周囲の木々がザワザワと揺れ動き、1匹の獣が降ってくる。体長2mほど。青い体毛を持ち、腕が異様に太い



「──モキッ?」



 煽りモンキーこと、アクアエイプだ

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