壇上に上がる資格1
「今回の大会はどうよ、強い奴いんのか?」
男が肉を喰らいながら隣にいるフードの人物に話し掛ける。
上半身裸のその男は身体の至る所に傷があり、室内だと言うのにスキンヘッドのせいで頭が輝いて見える。
「そうっすねー、いるんじゃないっすかねー」
フードの方は興味なさげに答える。
「相も変わらずやる気がないな<ハーミット>は」
ガチャガチャと音を立てながら次々と食べ物を飲み込んでいく男に対しフードの人物<ハーミット>は静かにコーヒーを飲んでいる。まるで対照的な二人だ。
「自分はあくまで暇つぶしっすからね。闘いを求めてる<筋肉爆弾>さんとは違うっすよ」
<筋肉爆弾>と呼ばれた男は「確かに」と言って下品に大声で笑った。
「そーいえば<最速王>が参加するかもって噂を聞いたっす」
<ハーミット>は街中でたまたま聞いた話を<筋肉爆弾>に話してみた。すると<筋肉爆弾>は首を傾げる。
「<最速王>?聞いた事ねーなぁ」
「まぁ主に王国で名を上げた人っすからねー」
「二つ名からして滅茶苦茶足が速いのか?何か大した事なさげだが」
それを聞いて<ハーミット>はクスクスと笑った。
「違うっすよ。<最速王>の最速は依頼達成が最速って事っす。何でもアステリのギルドにある討伐系の依頼の達成レコードを全て塗り替えたとかー」
「なっ!?それは本当か?不正ではなく?」
<筋肉爆弾>は思わず食べるのを中断して<ハーミット>の顔を覗き込む。ただ認識阻害の魔法を掛けている<ハーミット>の顔は見えなかったが。
「さぁ?でも不正はギルドの泉があるから無理っすよ。だからもし噂が本当ならかなり強いんじゃないっすかね」
「ハハハ、今年は楽しめそうだな!!」
「あなたは毎年楽しんでるっすけどね」
ひとしきり相槌をうってから<ハーミット>は席を立つ。
「それじゃ自分はもう戻りますんで、本戦で会いましょうー」
ヒラヒラと手を振りながら<ハーミット>は帰って言った。
「あいつちゃっかり俺にコーヒー代押し付けていきやがったな。まぁいいけどな!」
<筋肉爆弾>もそのまま食事を再開した。
「はぅぅ、緊張するよぉ~。ミミちゃ~ん」
小柄な身体に桃色の長い髪。それと対照的に大きな胸。そんなアンバランスな少女が目に涙をためて今にも泣きそうな顔をしていた。何故か頭には頭巾を被っておりそれが余計に彼女を幼く見せた。
「どうしたんですかリーダー」
ミミちゃんと呼ばれた女性は少女の方を振り返る。
「怖いよ~、なんでナナが大会に出るのよ~」
「それは貴女が私たちのチーム<姫の花飾り>のリーダーだからです」
「ナナじゃなくてミミちゃんが出ればいいのにぃ。ナナじゃ予選敗退だよー」
「大丈夫です。<ラッキーピンク>の貴女がそう簡単に負けるはずがありませんから」
キッパリとミミは宣言する。それは自信であると同時に絶対の事実。
チーム<姫の花飾り>は女性だけのチームだ。不遇な扱いを受ける女性冒険者を集めたのが始まりの伝統あるチームだ。そしてその六代目のリーダーをしている<ラッキーピンク>があっさりと負けるはずがないのだ。
しかも<ラッキーピンク>は男性との勝負に負けた事がない。逆に言えば男性は絶対に<ラッキーピンク>に勝つ事が出来ないのだ。
「うぅー、わかったよぉ。ミミちゃんがそう言うなら仕方ないもん…」
少々ふてくされながらも渋々了承する<ラッキーピンク>。
「でももし優勝したらナナにご褒美ちょーだいっ!」
そう言ってミミの腕に絡みつく<ラッキーピンク>。端から見ればただの仲の良い姉妹にしか見えない。
「ふふ、さっきまで予選敗退とか言っていたのにもう優勝した時の話ですか?」
ミミは意地悪そうにそう尋ねた。すると<ラッキーピンク>はうぐっ、と言って一瞬返事に詰まる。そんな可愛らしい様子をミミは微笑ましげに見ている。姉妹というより母娘に近いような気もする。
「ナナは絶対勝つもんねー」
「怖さは?」
「もう無いよー!」
にぱー、と両手を広げてアピールする<ラッキーピンク>。思わずミミは頭を撫でる。
「くすぐった~い」
そう言いながらも満更でも無さそうだった<ラッキーピンク>だった。




