何度でも言おう
「何度も言うようで悪いけどさ…」
ハルシヲンを出発した四郎たちは予定通り帝都メサイアを目指していた。
「歩くのが嫌だっ!」
そして現在、いつも通り四郎の歩きたくない病が始まったのだ。やはり現代っ子は軟弱らしい。
「それならこの前みたいに浮けばいいじゃん」
ティカが迷惑そうな顔をしながら答える。他のメンバーは最早見向きもしない。
「同じネタは二回はやらないのさ」
まるで手品師のような信条を掲げる四郎。
「という訳で俺は先行する。<先駆車>」
久々に漆黒のバイクを呼び出す四郎。基本的にチームで行動する時は使えないのであまり出番がない残念なバイクだ。
「は?先行するって?」
「つまらんから先を見に行くだけだ。しばらくしたら戻るから」
それだけ言ってバイクに跨り、エンジンを入れる。消費されるのは四郎の魔力。アクセルを回し急発進する。
「ちょ、ちょっと…!」
突然の行動にティカの思考は追いつかない。基本アホの子なので仕方ない事ではあるが。
「いやはや爽快爽快」
あっという間にティカたちを置き去りにした四郎は久々のバイクに興奮していた。
「何か面白いものないかな~」
キョロキョロと周りを見渡しながら走り続ける四郎。
すると前方に人がいるのを発見する。桃色の髪をした女の子だ。
「何でこんな所に人がいんだ?」
気になった四郎は女の子に話し掛けてようと思い、バイクを寄せる。
「お~い!!」
大きな声で呼び掛けると肩がビクリと大きく揺れて、それから恐る恐るといった感じに女の子はこちらを向いた。
「こんな所で何してんだ?」
バイクから降り、それを仕舞う。女の子はこちらを見て明らかに安堵しているようだ。
「そ、その…あの…」
どもっていて答えてくれそうにないので、四郎は不躾だと思いながらも彼女を観察する。
まず耳があった。頭の上に。猫か犬かは分からないがどうやら獣人らしい。桃色の髪はおかっぱのようになっておりそれだけで清楚な雰囲気が感じ取れる。胸は控え目らしく服装はお世話にも綺麗と言えない。首には首輪が付いている。
「……もしかして脱走奴隷?」
四郎が思い当たった事を言うとドンピシャだったようで彼女は眼を大きく見開く。そこから涙が溢れてくる。
「…ち、ちがっ…ボクは…う、うぅぅ…」
四郎は頭をポリポリと掻いてどうしようかと思案する。このまま見捨てるのはあまりにも不憫だ。
「安心しろ。別にお前をどうこうするつもりはないから」
すると少女が四郎の言葉の真偽を確かめるかのように瞳を覗き込んでくる。四郎はその瞳を真正面から受け止める。
「ほ、本当にボクにヒドい事したり…しない?」
恐る恐る少女が尋ねて来る。
「しないよ。俺はシロー・タチバナだ。よろしく」
「…ボクはメイナー。狐の獣人だよ。…奴隷だから姓はないよ」
メイナーと名乗った少女は首輪を触りながら辛そうにしている。
「その首輪は外しちゃダメなのか?」
そんなメイナーの仕草を見ていた四郎は堪えきれずに尋ねる。
「これは無理に外そうとするとボクの身体の中にあるが石と反応して爆発しちゃうから…脱走とか命令違反を起こさせないように付いてるの」
「ん?じゃあ何で脱走したお前は爆発してないんだ?」
「それはボクが狐の獣人だから。珍しいから爆発させずに連れ戻そうとしてるんだよ」
狐の獣人だから捕まったのに狐の獣人だから逃げれるなんて可笑しな話だよね、と言ってメイナーは泣きそうななりながらも笑った。
「……よし!なら俺がその首輪外してやるよ」
「え…?」
メイナーが頭に疑問符を浮かべているのを無視して四郎は意識を集中させる。
すると四郎の身体が真っ白に塗りたくられる。
「きれい…」
それを見ていたメイナーは思わずそう呟いた。しかし四郎には聞こえて無かったようでそのまま十神技を使う体勢に入る。
「<組換>」
それだけ告げるとメイナーの首輪とお腹のあたりが青白く光った。その光が収まると首輪がまるで腐ったかのように崩れ落ちた。
「これでもう大丈夫だ」
「え…首輪が…」
メイナーは茫然自失としている。とりあえず四郎は創造魔法でワンピースを創って渡してやるのだった。
結局メイナーは何が何だか分からないままティカたちの所へ四郎に連れて行かれた。




