遭遇戦(ミリーの場合1)
これから少しずつ一話一話の文字数を上げていくつもりです(笑)
気付いたら昔の倍になってたよ作戦です、はい
四郎が黒氷レスカー・レインドと遭遇する僅か前、ミリー・サウノーズンは王都の外にいた。
『なんかヤバい奴らが俺らを狙ってるらしい。この前のガルトに影を送った奴らだ。お前ら気をつけろ』
四郎から送られてきた<光字>を読んだミリーは視線を上げる。
「という事らしいですね。黒雷さん」
ミリーは自身の目の前にいる傭兵崩れの男、黒雷ジェンガ・カサールドを睨み付けた。
「ガハハハ、事情が分かってるなら遠慮なく殺させてもらうぜ亜人のお嬢ちゃん」
ジェンガは豪快に笑いながら懐から酒を取り出し一気飲みする。
「残念ですが貴男に殺される程私は弱くありません」
発端は今日の昼頃。雑用系の依頼を終え昼食を食べようとしていた時だった。不穏な気配を感じたミリーは尾行している事に気付いたことを悟られぬように王都の外まで尾行者を誘導したのだ。
元々亜人や竜、魔物、魔族などは人間に比べて気配に敏感なため尾行そのものが困難なのだ。
「そうかい。なら精々俺も楽しませてくれやっ!」
ジェンガが身体に黒い雷を纏い駆けて来る。その速度は異常だ。ミリーは突進してくるジェンガを右へ避けてかわす。
「<水千花>!」
ミリーの周りに水で出来た数百の花が浮かぶ。ミリーはジェンガの攻撃をかわしながらそれを当てていく。
「こんなもん痛くも痒くもないわいっ!」
正に剛力とでも呼べる勢いで水の花を手刀で斬っていくジェンガ。その様子にミリーはほくそ笑む。
「<氷結床>」
するとミリーの足元が凍っていき、すぐにジェンガの足元まで到達する。ジェンガは今、水の花を斬っていたせいで全身ずぶ濡れだ。
「ぬぐっ…!」
瞬間、ジェンガの全身が氷に包まれた。
「呆気ないですね」
ミリーが氷を砕こうとしたその時、凍っているはずのジェンガから大量の魔力が漏れる。しかもかなり邪悪な。
「…これはっ!?」
ミリーは慌てて後方へと下がる。氷にヒビが入り、内側から黒い雷が溢れて来る。ミリーは本能的に悟っていた。
これはヤバいと。
氷が粉々に砕け、中からジェンガが出てくる。
「ガハハハハハハハハ!!!!殴る潰す殺す」
ジェンガはどこから取り出したのか、いつの間にか右手に大きなハンマーを持っている。そのハンマーからは黒い雷が放電している。
「<ダイナミックウェーブ>!!」
ジェンガがハンマーを振り下ろすと大きな地震と共に大地に黒い雷がはしる。
「あああぁっ!!」
ジェンガから離れていたミリーも例外ではなく、黒い雷に感電する。
「まだまだぁっ!!」
いつの間にか距離を詰めていたジェンガはハンマーを横に振り抜く。それはミリーの脇に直撃し、ミリーは数十メートル近く吹っ飛んでいく。
「くぅっ…」
ハンマー自体の打撃は竜であるミリーには大したダメージにはならない。問題は黒い雷の方だ。普通の雷属性の攻撃よりも数倍、いや数十倍の威力がある。
「<水竜の纏>」
今この場でミリーは竜化する事は出来ない。四郎との戦いの時は理性が吹っ飛んでいたので竜化してしまったが、竜化とはそんなに簡単にするものではない。竜化するだけで大地や空気などに多大な影響を与えたりと負の要素が多いからだ。
そこでこの<水竜の纏>の出番だ。先ほどジェンガが身体に雷を纏っていたのと同じような魔法だ。唯一違うのは纏っている水の形が人型ではなく竜型であるということだ。水で作った竜の形の鎧だ。
「はぁっ!!」
ミリーはジェンガにブレスを吐く。ジェンガはそれをハンマーで叩くように防ぐ。その隙にミリーの尾がジェンガへと向かう。ジェンガは左手から黒い雷を撒き散らし尾を吹き飛ばす。しかし元々は水なのでミリーには何のダメージもない上にすぐに回復する。
その様子を見てジェンガは一旦後方へと下がる。
「亜人じゃなくて竜だったとはな。面白い!!」
ジェンガの身体から再び魔力が溢れる。その魔力はあまりにも邪悪だった。まるで魔力よりも深い魔であるかのような。
「<黒鳴>!!」
黒い雷がミリーの<水竜の纏>を消し去る。
「なっ…!?」
黒い雷はそのまま威力が落ちる事なくミリーへ直撃する。ミリーは成す術もなく喰らってしまう。悲鳴と共に地面に倒れる。
「楽しかったぜ、お嬢ちゃん」
ジェンガはそう言ってミリーの前でハンマーを振り上げる。既にハンマーは黒い雷を纏っていない。
そしてジェンガはミリーへ向けてハンマーを振り下ろした。
「……?」
何故かハンマーはミリーを叩き潰す事なく横に逸れた。ジェンガはもう一度ハンマーを振り下ろすが何故かまた横へ逸れてしまった。
「…無駄ですよ」
その声を聞いてジェンガは慌てて後ろへ下がる。
ミリーはひどくゆっくりとした動作で立ち上がる。ミリーにとってこの状態は不覚以外の何物でもなかった。
「何をした。お嬢ちゃん」
出し惜しみをしたからだ。ミリーは自分の力を過信しすぎていたのだ。実際それは強ち間違いとは言えない。本来の竜の状態では獣人なんて相手ではない。
だが今、竜にはなれない。それが全てだ。
「本当ならまだ使いたく無かったんですが仕方ありません」
ミリーから急に溢れ出した威圧感にジェンガは獣人の本能から危険を感じ取った。ジェンガは再びハンマーに黒い雷を纏わせ臨戦態勢に入る。
「見せてあげましょう。シロー様との愛の結晶を」




