特訓
「つーわけで特訓しようと思う」
翌日、朝ご飯を食べる為にリビングに集まった四人にそう告げた。
「はぁ…特訓ですか?」
「ああ、四人それぞれにメニューを考えてある。王都に着いてこの前の影みたいなのが現れないとは限らないからな」
「…そう言われちゃ、嫌でも断れないじゃない」
ティカが渋々頷く。ティカとしては影に取り憑かれた手前嫌とは言えないのだろう。まぁ嫌と言ってもやらせるが。
「私はもちろん構わない」
「私もです」
俺は一回三人を見回す。恐らくこれからの戦いは厳しいものとなるだろう。だからこそ仲間には傷付いてもらいたくない。
「ならまずティカ、お前は<雷矢>を覚えてもらおう」
俺のその台詞にティカは怪訝そうな顔をする。
「<雷矢>なんて初級魔法とっくに覚えてるわよ」
「いーや、とにかくお前には<雷矢>を覚えてもらう。詳細は後で話す」
ティカは不満気な顔をしていたがあまりティカばかりに構ってもいられないので次はミリーの方を見る。
「お前にはソイツを鍛えてもらう」
そう言って俺はミリーの頭に生えている一方角を指差した。
「角…ですか?」
「ああ。んで最後にシャルか。シャルは魔法使えるか?」
「いや使えん」
「なら<魔>を纏うことは出来るか?」
「ああ、それくらいならな。<武>を纏うのと大差ないからな」
「ならお前にはソイツを鍛えてもらおう」
俺はシャルの持っている細剣を指差してニヤリと笑った。これで三人の特訓内容が決まった。後は王都に着くまでにどれだけモノにさせられるかだ。
それから一週間してようやく王都アステリに着いた。特訓のせいで一日に進む速度が遅くなり到着まで思っていたより時間がかかってしまった。
「よ、ようやく着いたわ!もう特訓はいやぁ…」
「うふふ、シロー様街ですよ~。なので特訓は止めてデートをしましょう~」
「ようやく着いたか。正直特訓はもう勘弁して欲しい」
皆、特訓で頭おかしくなったのかな。ティカとシャルビィは同じ事言ってるし。とりあえずはギルドに行くとするか。
「おい、呆けてないでギルド行くぞ」
トリップ中の三人を引き摺って歩く。しばらくすると三人ともトリップから帰ってきた。
「まずは俺達はギルドランクを上げよう。金も必要だし」
「お金ならあたしが沢山持ってるわよ」
ティカは貴族なので金銭感覚が俺達より鈍いのだろう。
「それは貯めておけ。自分達で稼げるならそれに越した事はないからな」
「ふ~ん」
「依頼はチームで請けるんですか?」
ミリーが質問をしてくる。それについては俺よりもシャルビィの方が詳しいだろう。
「シャルどれが一番効率がいいかな」
「そうだな…最初はソロである程度ランクが上げてそれからチームで行動するのが一番だと思うが」
「という方向で皆さんよろしく」
俺は最後においしい所だけもらって三人をまとめた。話しているうちにギルドに着いていたので俺が先頭で扉へ入る。
中へ入ると奥から複数の視線を感じた。多分ここでは新顔だからだろう。俺たちは気にせずに依頼板の所へと向かう。すると奥から一人の男がやって来た。
「おいおい、兄ちゃんよ。三人も美人連れてるとは随分生意気だなぁ。ギルドは遊びじゃないんだぜ?」
その男の台詞に同調するように奥にいた奴らも笑う。かなり下品な笑い方だ。
「ほらどうしたよ?何か言い返してみろよ。怖くてまともに喋る事も出来ねーのかよ」
シャルビィが動かない俺に痺れを切らしたようで男に文句を言おうとする。しかしそれを俺は眼で止め、男の方を見る。
「馬鹿すぎて喋る気も失せただけだ」
「ほお、態度も随分と生意気だなぁ。知ってるか?ギルドは強い奴が正義だ。だから悪いことは言わねー。女共を渡せば見逃してやる」
「なら俺の方が強いから俺が正義だな。それとこいつらを物扱いするな。俺の大事な仲間だ」
俺の言葉は予想以上に男の気に障ったらしく、いきなり男が殴りかかってきた。男の拳には<武>が流れている。
奥の奴らは死んだな、あのガキ共と思ったが結果は違った。俺は<武>を纏った男の拳を素手で受け止め、不敵に笑う。
「うぜー」
そう言って一瞬で男の背後に回り込み、その首に手刀を叩き込んだ。男は呆気なく気絶して倒れ込む。
こうしていきなりケンカで俺たちはアステリでのギルドデビューを果たした。




