野宿は嫌
「………飽きた」
突然の俺の発言に三人がこちらを向く。
「飽きたって何が?」
「歩くのに飽きたんだよ。魔法でピューンと行っちゃダメなのかよ」
そう。俺たちは今ガルトの街を出発して王都アステリに向かっているのだ。しかし街を出てからずっとひたすらに草原の中を歩いているだけだ。それに俺は飽きていた。
「魔法は目立つ。無駄に使う必要もないだろう」
「それに皆さんとピクニックしてるみたいで私は楽しいですよ」
シャルビィとミリーは優等生発言をした。ティカは俺と同じように思っていたらしく喋りこそしないが態度ですぐ分かる。
「まぁしょーがない。歩くしかないか」
「うむ。シローはアステリに着いたら何かプランはあるか?」
「ん~、仲間を増やしたいね」
「なになに!?あたし専用のパシりでも探してくれんの!?」
ティカの発言は無視することにした。ミリーはティカの発言で何故か説教モードに入ってしまい、ティカに仲間とは何ぞやと説き始めた。
「ミリーは回復担当、ティカは魔法担当、シャルは近距離担当だ。とすると遠距離担当の奴が一人欲しいな。あと弟子も」
「遠距離担当については私も同意見だが、弟子はどうしてだ?」
「師弟関係は男のロマンだからさ!」
シャルビィは少し引いた。やはり女には男のロマンが分からないのだろう。シャルビィなら下手な男より男らしいから分かってくれると思ったんだが。
「シロー今なんか失礼な事考えてなかったか?」
ニコニコ笑顔のシャルビィ。しかし眼は笑っていなかった。
「考えてないです」
「まぁいい。次はないと思え」
「……はい」
俺たちは無駄話をしながらもひたすら歩いているが一向に何も見えてこない。
「なぁ近くに村とかないのか?」
「ないですよ。恐らく今日は野宿かと…」
ミリーのその言葉に俺とティカはガクッとうなだれる。ティカは大きな荷物を背負っていたのでうなだれた時にその荷物に潰されてカエルみたいな声を出していた。
「ティカちゃん、何一人でコントやってるんですか?」
「コントじゃないわよ!!見てないで助けなさいよミリー!」
「あらあら、それは大変」
「…あ!ちょっと行かないで!!し、師匠~!!」
ミリーは結局助けずにシャルビィの方へと行ってしまった。ティカは諦めて俺に助けを求めてくる。
「全く、こんな大きな荷物背負ってるからだろ…」
「いいのよ!女の子にはこれ位が普通なの!!」
俺はティカの上に乗っている荷物を片手で持ち上げる。
「しょーがねーな。空間魔法を使って別次元で……」
そこで俺は言葉を止めた。あることを思い付いたからだ。ティカが何故か変人でも見るかのように俺を見ているが気にしない。
「寝床がないなら創ればいいのさ!」
「はぁ?師匠頭腐った?」
「くくく、黙ってみていろ小娘」
俺はまず地面に手をつける。創造の魔法で一発で家を創ってもいいのだが、何かしらの媒体があった方が効率がいい。
「<拠点設営>」
土が盛り上がり分解され新たに構築されていく。大きな音にシャルビィとミリーは何事かとこちらを振り返っている。
「……し、師匠…これはさすがに…」
ティカがあっという間に出来上がった家を見て絶句している。
「屋敷…なのか…?」
「神殿並みですが…」
シャルビィとミリーもティカと同じく絶句している。
出来上がった家は俺の想像以上に凄まじかった。特に具体的なイメージがなかったので大きくなりすぎたのだろう。
3階建てで屋上とテラスがついている。見た目は完全に地球の家なのだが素材の方がこちらの物なのでちぐはぐに見える。広さは貴族の屋敷にあるので、それが3階建てだと考えるとかなり大きい。
「完璧だぜ。次は<次元部屋>!!」
俺の前にドアが現れる。そこに大量の<魔>を流し込み別次元との扉を固定させる。
「すごい量の<魔>ですね」
「まさに次元が違うな」
「なかなか上手い事言うわね!!」
後ろがガヤガヤしてるが気にせずに<魔>を注いでいく。しばらくすると扉が固定したので、更に次の魔法を発動させる。
「<併合>」
家の扉と別次元の扉を併合させることで家を別次元へ送る。恐らくこれで別次元の扉を開けば家の中に入れるようになったはずだ。
「よし、これで大丈夫だな。お前らも<オープン>って言えば家に入れるようにしといたから」
「いや…私は<魔>がほとんど使えないんだが」
「私も別次元の扉を開くほど魔力持ってないですよ」
「あたしは気合いでいけるわよ!!…きっと」
「大丈夫だよ。扉を開くのはカードを開くのと同じような感じだから。最も扉を開けるのは俺が認めた人間だけだけどね」
俺の言葉は三人は呆れたような視線を送ってくる。少々やりすぎたかと思ったが気にしない事にした。
ティカの荷物を家の中に放り込んで、俺たちは再び歩き出した。




