第21話 ゾルジとサーラ、カレンとの初対面。上手くいきますようにっ!
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午後の授業が終わるとクローディアとサーラとカレンの3人は馬車に乗り、グレームズ家の屋敷へと向かった。
馬車の中でも、サーラとカレンは奉納舞について次々と質問をクローディアにぶつけて来た。そうしている間にあっという間に到着した。
友達を招待する旨、執事に話していたので、中庭にはすでにお茶の用意が整っていた。
<おっかえり~! クローディア~>
ララがいつものように出迎えてくれる。
うむ。いつも通り可愛い。
もちろん2人には視えないので、ララの事は話していない。おいおい、機会があれば、話したいと思ってはいる。
ララにもその旨伝えているし、エルネスト以外の人間がいる時には返事ができないのはいつもの事で、ララも了承している。
<この2人がクローディアの新しいお友達ね~>
ララが2人の周りを飛びまわって観察している。
<ふーん。そうね! いい感じかもね~>
満足したのか、ララがクローディアの肩にちょこりと座る。
「さあ、お2人ともどうぞ」
テーブルに2人を誘導する。
「素敵なお庭ですわね。まるで森にいるようですわ」
「ああ、それにとても暖かく気持ちがいい」
「ありがとう存じます」
2人にお茶を薦めながら、まずは自ら作ったクッキーとお茶を一口飲んでほっと一息をついた。学校から帰ってからのこの一口、疲れた体に染みわたる。たまらない一口である。
クローディアは2人が紅茶を飲んだところで、椅子から立ち上がると、近くの木を見上げた。
「ゾルジ」
その声に応えるように尻から糸を伸ばし、ゾルジが下りて来た。
それをクローディアは両の掌で受け止めると、そっとテーブルの上に載せた。
「こちらがお話ししていたゾルジです」
男性の大人の両手を合わせたくらいの大きさ。薄紫色の体、目が8つある蜘蛛。
蜘蛛は虫ではないが、虫が苦手なら、即悲鳴をあげ、逃げ出すレベルであろう。
さて、2人はどうであろうか。クローディアが固唾を呑んで見守っていると、2人はゾルジに視線を落とすや否や、立ち上がり、両膝をついて、腕を胸の前で交差した。
「お初にお目にかかります。私はカレン=キックニーと申します。拝謁でき、恐悦至極に存じます」
「わたくしはサーラ=マホニーと申します。こうしてお目にかかれました事、大変うれしく存じます」
<うむ。我もそなたたちに会えて嬉しく思う>
そうゾルジが答えたが、やはり聞こえていないようである。ずっと2人は頭を垂れたままだ。
ゾルジの姿は見る事ができるが、声は聞こえないのが普通なのだ。
「ゾルジもサーラとカレンに会えて嬉しいと言っていますわ」
クローディアはゾルジの言葉を2人伝えた。
「クローディアはゾルジ様の声が聞こえるのか?」
「うん。普通に会話できますわ」
「すごいですわ! ああ、うらやましい! わたくしもゾルジ様とお話したいですわ! きっと色々な事を知っていらっしゃるでしょうから! お声が聞く事ができないなんて、残念ですわ!」
これは珍しい反応である。本当に残念と思っているのだろうか。サーラをじっと見つめる。うそを言っているようにはとても思えないほどに、目が輝いている。ならば。
「声、もしかしたら、そのうち聞こえるようになるかもしれませんわ」
「本当ですか?!」
ぶんと音がするかと思うほどに顔を向けて来たサーラが少し怖い。
「え、ええ。その、わたくしと長く行動していると感化されて、聞こえてくるかも?」
エルネストがまさにそうだったから。
「まあああああああ!!」
サーラは大興奮である。
「あ、でも可能性があるってだけです! はっきりそうなるとは確約はできませんから!」
そう、それは覚えておいて欲しい。
「それでもかまいませんわ! まあ、まあ、まあ! なんて素敵なんでしょう!」
「サーラ落ち着け。可能性があるというだけだ。おそらくクローディアと同じように神に祈り、妖精に、精霊に敬意を常にもたないとだめだと思うぞ。人間精進が大切だ」
「わかっておりますわ! わたくし、教会巡りに一層力を入れますわ!」
「サーラのそれは教会で販売しているグッズが目当てだろう。それとは違う」
「あら、わたくしお祈りも熱心にしておりますわっ!」
「お祈りもっていうのが、少し問題ではないか?」
<くくっ。面白き子らだな。気に入ったぞ、クローディア>
ゾルジの肩が一段低くなる。ゾルジ自身も少し緊張していたのかもしれない。
まあ、蜘蛛って女子にはあんまり好かれないものね。
2人は全く忌避していないようである。大きな蜘蛛である事も。神でなくなっている事も。
こうもすんなり受け入れるとは2人とも懐が広い。
「なんだ?」
「なんですの?」
その疑問が顔に出ていたのか、カレンとサーラが尋ねてくる。
「いえ、ゾルジを全く怖がっていないようで、すこし驚いたのです。いえ、驚いていないどころか、礼節をもって接してくださって」
「それは、当たり前だろう」
「そうですわ」
「今は神々の位から残念ながら落ちてしまっているとはいえ、尊いお方である事は間違いない。敬意を持って接しなければならないのは、自明の理でだろう」
それはクローディアの言葉を完全に信じてくれないと出ない言葉である。
2人は本当にクローディアを信じてくれている。
それが非常に嬉しい。
「なんですの? 今度はお顔が緩み切っておりますわ。変なクローディア様」
「ふふ。失礼致しました。ゾルジを受け入れてもらえて、とても嬉しかったものですから」
「それはこちらの気持ちですわ。ゾルジ様に会わせていただき、感激しておりますわ」
「2人とも堂々巡りになる。時間もないし、話を進めようか」
<うむ。エルネストに代わる冷静な者がおる。よきかな。クローディアはすぐに話が脱線するからの>
ゾルジの最後の一言に文句を言いたいが、時間がないのは確かである。
仕方ない。先に話を先に進めよう。
「ゾルジ、お2人には、もう作戦の概要はお話してあります。奉納舞のお手伝いも喜んで引き受けてくれました」
<うむ>
「その上学校にいる間に、お2人の希望で、舞の振り付けも一通りお教えしてあります」
<ほお、では一度見せてもらおうか>
「わかりました。サーラ、カレン、ゾルジが2人の舞を一度見せてもらいたいと言っているの。お願いできる?」
「まだ、お見せできる段階ではございませんわ」
サーラが困ったように眉を下げる。
「2人の素質をゾルジは見たいんだと思います。奉納舞はすぐに舞えるものではございませんから、だから出来不出来は気にせずに、舞ってくださいまし」
本当そう。クローディアもすっごい苦労しているから。下手さでは負けない。。
「わかった。サーラ、お見せしよう」
「わかりましたわ」
サーラはそれでも渋っているようだったが、頷いてくれた。
「ありがとうございます。わたくしはその間に少し着替えて参りますので、失礼して一旦席を外します。ゾルジお2人をよろしくお願いします」
<あいわかった。では、早速踊ってもらおうか>
ゾルジは二人に右前足を上げて、合図を送った。
それを確認しつつ、クローディアは急ぎ自室へと向かった。
皆様、いつもお読みいただき、ありがとうございます!
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