第19話 音楽室の怪、解決に向けての話し合い ぐっ!ゾルジ、やはりそうですか‥‥
長いです。そして苦労しました。今はこれで精一杯。文章が上手くなりたいです。
クローディアとエルネストの2人は、グレームズ家の屋敷に到着すると、早々に中庭に向かった。
<クローディア~。お帰り~>
ララがすぐに気づいて、クローディアたちを迎えてくれる。
「ただいま、ララ」
そう返事をしつつ、ゾルジを急いで庭に解き放つ。
今日一日、バッグにいる時間が長かった。さぞ窮屈だったに違いない。
それに学院の空気は、ゾルジには良くない。
<うむ。やはり、ここはいいの。ほっとする>
ゾルジはいそいそと草の上を進む。
「今日はありがとう。もう少し付き合ってもらえる?」
<もちろんだ。計画を立てねばなるまい。その前にエルネストとララに報告をせねばな>
中庭のテーブルにメイドがお茶の用意をして、早々に下がっていく。
そこには、クローディアの作ったクッキーが皿に盛ってあった。
昨日目一杯焼いたものである。
<わーい!>
<うむ。疲れた体にこの甘さが身に染みる>
2人が喜んでクッキーを頬張っている。
「本当だね。僕も今日は心配して疲れたから、クッキーを食べるとほっとする」
エルネストがチクリと刺す。まだ怒っているらしい。
その気持ちはわかるので、触らずにおく。
「一息ついたところで申し訳ございませんが、早速今日わかった事をお話致しますわ」
クローディアも紅茶を一口飲んでそう切り出すと、今日のお昼休み、第3音楽室であった出来事、そして先程のカフェでのサーラとカレンと話し合った事を話した。
「そう、彼女たちに話したんだね、妖精が視える事」
エルネストはソーサーにカップを置いた。
「はい。そうしないと、話が進みませんし。これから部が無事に発足したら、隠しておくのもどうかと思いまして」
「彼女たちは信じてくれたんだね。そして受け入れてくれた。よかったよ」
「はい。話すにはすごい勇気がいりましたけど、話してよかったです」
彼女たちとは学院を卒業しても、ずっと友達でいたい。
「エルネスト様の事はお話していません。話すか否か、それはエルネスト様がお決めになる事ですから」
「うん、ありがとう」
エルネストは侯爵家の子息である。クローディアよりも色々としがらみも多い。
クローディアが勝手に話していい事ではないのだ。
「よかったね。信頼できる友達ができて」
「はい」
サーラとカレン、2人の友ができただけでも、学院に入ってよかったと思える。
「でも少し焼けるかな。クローディア、僕の事も忘れないでね。彼女たちばかりと話をしないでね?」
甘えたなエルネスト様、可愛すぎる。
「ふふ。もちろんですわ。エルネスト様もわたくしの大事な友人ですから」
「‥友人ね。僕はそれ以上になりたいんだけど?」
エルネストにじっと見つめられて、うっと言葉に詰まる。
前はすぐに受け流す事ができたのに、近頃胸がざわつく。
エルネストは小さい頃、彼を助けた恩義を好きと勘違いしているのだ。それがわかっているのに、落ち着かない。
なぜか今、スルースキルが上手く発動しない。困った。
「さ、さあ、現状の共有ができたところで、時間もない事ですし、今後どうするか対策を練りましょうか。ゾルジ、ララもいい?」
それでも無理やりスルースキルを発動させる。
テーブルの上、彼専用のお皿でクッキーを食べていたゾルジに話しかける。
<おお、もちろん>
<私もいいわよ~>
クローディアの肩で同じくクッキーに夢中だったララも返事をする。
「では始めましょう。今日の昼休み、あの黒妖精が求めていた事、人間に妖精の存在を認知させる事ができた為、音楽室の怪である肖像画の目が動く原因となっている閉じ込められた妖精の開放はしてくれそうなのよね?」
黒妖精とゾルジの会話からそれは理解できたが、念のための確認である。
<うむ。むしろあのマールズオースの黒妖精は、封じの妖精を解き放つのをずっと心待ちにしておったと思うぞ>
<ねえ、そのマールズオースの妖精ってなあに~。私、聞いた事ないよう~>
「え、そうなの?」
ララが白妖精とはいえ、同じ妖精仲間の黒妖精の事を知らないなんてありうるのか。
<あ~! 今クローディア、ララの事、もの知らずと思ったでしょ! 違うんだから~>
「そんな事思ってないわ」
そう今思っているのは、ぷーっと膨れてぽかぽか頭を叩いてくるララが、激可愛すぎるという事だけだ。
<妖精も年月を経て、新たなものが生まれる、消えゆく者も多いがな。ララが知らぬ妖精がいても不思議ではなかろう>
<そうなんだよ~。生まれては消えて~、存在し続けるほうが難しいんだから~>
<生まれても神の加護がなかったり、誰にも存在を認められなければ弱きものは消えていく>
<人が心を寄せてくれるととっても力になるんだよ~>
<人の気は強い。人の強い祈りは我々に力を与えてくれる>
<私たちはその力で、家を街を綺麗にするんだよ~>
ララは飛び立ち、手を広げてクルリと回転した。
すると、そこからきらきらとひかりが舞い落ちてくる。
空気が澄んでいく。
今の話はララから、ゾルジからずっと聞かされている事だ。
人の気は強いがその反面、邪気も強い。邪気を放つ人間が増え、邪気がたまりすぎると瘴気に代わり、病気や争いが増える。すると、妖精、精霊が弱る。弱るとその存在が人間の中から消えていく。神もしかり。
そうする悪循環に陥いり、やがては人も妖精も衰退していくらしい。
グレームズ男爵家の領地は田舎の中の田舎にあるので、のどかでそんな事は感じなかった。王都に来て、ララが具合が悪くなった事で、王都の空気が悪いという事に気づいたが、侯爵家の温室を借りたり、こうしてグレームズ家の屋敷で、ゾルジとララが元気に過ごせていたので、危機感などまるで感じなかった。けれど学院の充満した邪気を感じて、不安が膨れ上がった。この邪気が学院だけでなく王都全体に広がってしまったら、数少なくなっている妖精や精霊が全部いなくなってしまうのではないだろうか。そうなったら、王都はどうなってしまうのか。
「クローディア、どうしたの?」
黙り込んでしまったクローディアを心配してか、エルネストが顔を覗き込んできた。
「いえ、何でもありませんわ」
顔をぶんぶんと振り、いやな考えを吹き飛ばす。
「話を戻しましょう。ではそのマールズオースは新しい妖精な訳ですわね」
<うむ。マールズオース、古い言葉で悪い口という、そのままじゃな悪口の妖精じゃ>
まんまだ。そのまんま。納得である。
<そしてあやつはツインワンフェアリーだ>
「ツインワンフェアリー?」
確か第3音楽室でもゾルジが言っていた。
<私、聞いたことないな~>
ララが首を傾げる。
<ツインワンフェアリーは2人一組で動くことが多い。絵に閉じ込められているのは片割れだ>
<悪口の妖精って言ってたわよね~。人の悪口をずっと言ってるって妖精って事~。変なの~>
<人を馬鹿にするだけだから、害はあまりないな>
「それと対をなす妖精って、どんな妖精かしら?」
どちらも口が達者というのは間違いないのではないか。
<うむ。たとえば、全く真逆の性質の異なる妖精かもしれんな>
「と、いうと人を誉める妖精ってことかな」
エルネストが顎に手をあて、呟く。
<そうだな。ボヌスオース、良い口か。誉める妖精といったところか>
「そんな妖精がいるのですか?」
<わからん。妖精の生まれは制限はないからな。なんにでもいずれにもなる>
うむ。妖精、奥が深い。
「課題が一段落したら、図書棟で調べてみたいですわ。」
「そうだね。部が無事立ち上がったら、部の活動として調べに行こう」
「そうですわね!」
まさにそうだ! エルネスト様、いい事を言う。
「それにしても、あの黒妖精は人間をすごい嫌っていたように思う。彼女の性質のせいもあるのでしょうが、人間によい感情を持っているとはとても思えない。その彼女がなぜ人間に自分の存在を知って欲しかったのか」
エルネストが考えを整理しようとして呟く。
「それは、自分の片割れを肖像画から解放したかったからでしょ?」
「では誰が彼女の片割れを絵に閉じ込めたの?」
「あ!」
確かにそう言われれば、そうである。わざわざ自らが好き好んで自分の片割れを絵に閉じ込めるような馬鹿はいないだろう。
誰かに命令された? それはどういった理由で?
「誰が指示したのか? 人間に妖精の存在を知らしめる事で何の得があるのか気になるけど、今は目の前の目的に集中しよう。時間もないしね」
エルネストは自らの疑問を振り切るように、1つ首を振り思考の追及を打ち切った。
「そうですわね」
そうだ。今は部の発足させるにあたっての課題をクリアする事が重要である。
部の発足に必要なのは、学院七不思議である肖像画の目を動かなくする事。そして笑い声などをとめる事である。なぜそれが起こったかについての原因の追究は求められていない。
今は絵に閉じ込められている白妖精の解放する事だけを考えよう。うん。
「あの黒妖精は肖像画に閉じ込められている彼女の片割れを開放できるといったわ。けれど、邪気が充満する場に解放するのに難色を示していましたね」
<そうだ。マールズオースは片割れは白妖精だと言ってたからな。封じられていたおかげで、邪気に触れずに済んでいたのもあるから、いきなりあの場はきついだろう>
<え~。そんなに空気悪いんだ。こわーい!>
ララが可愛い顔を顰める。
「音楽室の空気を改善すれば、解放するって言っていましたわよね。妖精がいなければ、肖像画はただの絵だもの、目なんて動かないわ」
「とすると、問題点は2つだね、あの場の空気をどのように清浄にするか、そして肖像画の目が動かなくなったのをどうやって会長に証明するか?」
エルネストが話を整理してくれた。助かる。
「空気の改善については、ゾルジに何か考えがあるみたいだったわよね」
その方法は薄々そうだろうなという予想はつくが、一縷の望みをかけてゾルジに聞いてみる。
頼む。予想している方法とは違う方法を示してくれますように。
<うむ。それに2番目の問題にも考えがあるぞ>
「本当に!?」
流石、元神さまである。是非とも拝聴しなければなるまい。
もしそれが妥当ならば、一挙に課題がクリアされる事になる。
ゾルジ様様である。
<まず一つ目の問題解決だが、クローディア、おぬし、予想はついておるだろう? 場の空気を清浄にするには、精霊や妖精、もしくは神に祈りを捧げる事。そして、その祈りを強力にする方法は、奉納舞だ>
「あ、やっぱりですの」
クローディアはがっくりと肩を落とした。
神や妖精、精霊に祈りを、舞を奉納する。それが彼らの力になる。
クローディアとしても奉納舞が嫌いな訳ではない。部が発足しても、神事として無数にあるであろう舞を復活させようとは思っている。
ただ、ただ!
‥‥クローディアは舞のセンスが今一つなのだ。
ダンスも実は苦手だが、正確さを求められる神への捧げる奉納舞はもっと苦手なのである。
ララにゾルジに教えてもらったものがいくつかあるが、正確に踊れるのは一番単純な一つのみだ。
「僕も、一緒に踊るよ」
「あ、ありがとうございます」
フォローするようにそう言ったエルネストは、音感が抜群なようで、2人に教えられた舞はすべて完璧に踊れる。侯爵家子息ハイスペック。
悔しくなんかないっ。
<エルネストよ、おぬしはだめだ。殿下という会長とやらが、出しゃばらぬように近くで見張る役目がある>
どうやらゾルジの頭の中では、もうシナリオが完璧に出来上がっているらしい。
「わ、わたくし一人で踊れとおっしゃるのですか!」
<おぬし以外に誰がおる。音楽室で我にあの妖精にそしてこの国の神々に舞を捧げよ。さすれば、あの場が清められるだろう。それを王子に見せればよかろう>
「ええっ!! 王子の前で躍るんですか!? 無理無理無理です! 王族に見せられるレベルでは到底ないですわ!!」
なんと無謀で無体な事をおっしゃるのか、元神様ゾルジよ。
<いつも言っておろう。型ももちろん大事だが、心、つまりは捧げる祈りが最も大事だと>
「うう。はい」
とはいえ、生まれて来て最大の恥をかくのは間違いないだろう。
<クローディア~。大丈夫よ~。多分‥>
ララもクローディアの舞の出来を知ってるだけに、慰める言葉がでないようである。
「ララ」
クローディアはがっくりとうなだれる。
それを見かねたかのようにゾルジが口を開いた。
<ならば、3人で舞うのはどうだ?>
「‥どういう事でしょう」
<おぬしの友の2人、いい気を持っておる。彼女たちに手伝ってもらったら、どうだ?>
「そうします!」
1人から3人なれば、目が分散される。恥も分散される筈っ。
「でも、大丈夫でしょうか? そんなにすぐに覚えらますか?」
<一番簡単な舞であれば、大丈夫だろう。クローディアが完璧に踊れるのもそれだけだしな。通常は1日あれば振りは覚えられるだろう。それが、奉納舞になるかどうかは、本人たち次第だな>
舞を祈りとして受け取るかいなか、妖精や精霊、神次第。どのように選別されるかは不明だ。クローディアの勘では、単に好き嫌いじゃないかと踏んでいるが。
ゾルジがサーラとカレンの気が気に入ったのであれば、舞はゾルジの力になる可能性が高い。それは如いては場を浄化する事ができるという事である。
「では、舞を奉納し、音楽室の空気を清めた後、黒妖精に肖像画に閉じ込められている妖精を解放してもらう、という事でいいんだね?」
「はい」
くっ。頑張って踊りを練習しなおさないと。
「課題をクリアする為の残りの問題は後1つ。王子である会長や生徒会の方々に、どのように証明するかだよ。殿下は僕たちのような目を持っていないからね。レポートで提出するのでは弱すぎると思う」
「王家には国を支える聖獣様がいらっしゃると言われていますわ。会長は第2王子です。聖獣様を視る目をお持ちであれば、妖精も視えるのではないでしょうか?」
「それはどうかな。もし僕らと同じ目を持っているなら、そもそも学院七不思議をご自分で問題を解決するんじゃないかな? それに聖獣様は国の守護獣と言われている。きっと強い力を持っているに違いないよ。聖獣様自身の魂の輝きで通常の人もお姿を視えるとしたら」
「第2王子様は視える目をお持ちでないかもしれませんね」
がっかりである。それでいいのか、王子よ。
しかし視える可能性が低いなら、視えないとして作戦を考えなければならないだろう。
視えない人に妖精を視せる。それができれば、クローディアやエルネストも苦労はなかった。
「あ、でもゾルジに考えがあると言ってたよね。もしかして王子に妖精が視えるようにしてくれるの?」
<うむ。一時的だが、我の目を貸そう>
「ええ?! そんな事、できるの?!」
目を貸す? 人間であれば考えられないことである。
<うむ>
ゾルジは8つある目のうちの2つを自らとった。
「ゾルジ! なんてことを!」
クローディアは驚いて叫んだ。
「痛くないの?!」
ばかな事を言った。絶対痛いに決まってるのに!
<多少はな。だが、大丈夫じゃ。それにまたはめ込めばもとに戻る。ほれ>
そう言ってゾルジは目をはめ込む。
すると、普通に目が機能しているようだ。
妖精の、元神様の身体の神秘である。
「ちゃんと元に戻るとわかって安心しましたわ」
いきなりだったから心臓に悪い。
<自ら取る分には大丈夫だ。話を戻すぞ。この我の目を使ってアイテムを作ってやろう。それを使えば常人でも我らが視えるようになろう>
「でも、ゾルジ、不便じゃない?」
<何、我には後6つの目がある。大丈夫だ。それに貸すだけだ。それにこれでやっとおぬしに礼ができる>
「え?」
<消滅寸前の我を助けてくれた。クローディア、そなたにずっと礼をしたかったのだ>
「そんな礼なんていらないわ! わたくしこそ、ゾルジと出会って色々な体験をさせてもらって本当毎日幸せなんだから!>
<そなたがずっとそういうから礼をせずに、今まで来てしまった。それでも我はずっと礼をしたかったのだよ>
「でも」
<クローディア~。受けてあげて~。そうしないと、ゾルジずっと気にしたままになっちゃうよ~>
ララに言われると弱い。更にゾルジにじっと見上げられると更に弱い。
「わかったわ。ありがとう、助かります」
クローディアは折れて、頭を下げる。
<そうしてくれ。そう言って置いてなんだが、実はアイテムが悪用されないように、クローディアと坊主の血がいる。少しもらうぞ>
「私たちの血ですか?」
<元神のアイテムだからな。念のため、お前たちの使用許可がないと使用できないようにする、それと使用期限を設ける>
「そうだね。レタの鏡のように2重ロックにしておいた方がいいね」
<うむ。それとアイテムを作るには1日かかる>
「わかりましたわ。ゾルジはアイテムの作成を頼みます」
<承知した>
「これで2つの問題は解決したね。僕たちは、後どのように会長に見せ、音楽室の怪を解決したと納得してもらうか。細かいところを詰めておこう」
「はい!」
希望がいよいよ現実味を帯びて来た。
やはりララ、ゾルジ、エルネスト。頼りになる仲間だ。
よかった。部の新設にぐっと近づいた。顔が自然と綻ぶ。
<クローディアは舞の特訓だね~。ララも手伝うよ~>
「はーい」
クローディアの顔が一瞬で陰った。はあ。
わかりにくかったかもしれません~。申し訳ありません。
そしていつもお読みいただき、ありがとうございますv




