流れは定まり、星は与えられた。
――時は流れ、魔力、槍、そしてコミュ力と言ったものを鍛える事、五年。
前世を思い出した七歳の時から始めた鍛錬は十二と成った今、拙いものあれど一先ずの満足いく形になる事が出来た。
――時は流れ、魔力、槍、そしてコミュ力と言ったものを鍛える事、五年。
前世を思い出した七歳の時から始めた鍛錬は十二と成った今、拙いものあれど一先ずの満足いく形になる事が出来た。
――そして今日この日を以って、俺達は新たなる力と共に自らの定めを知る事と成る。
「神父~!早く早く!」
「おやおや……そう急かさなくても、直ぐに行いますからの」
今か今かと朝から頻繁に体を揺さぶり、教会へと急かす。
教会に着くと、リグトはしきりに神父へまだかまだかと儀式を急かす。
「………」
「まぁ仕方ないよ。なんたって、【星進譲渡】の儀式は特別なモノなんだからね。
そう言う俺達だって、どんな力を得るか楽しみで仕方無いだろ?」
「……」
「………んー、まあ。どんなギフトスキルでも、一緒にはいられるね。」
教会の端に座り、キューと話ながらその様子を見守る。
キューはリグトに対して少し辛辣だ。今も急かすリグトを見ては「これだから暴れん坊小僧は……」と馬鹿をみて呆れる様にため息を吐く。
まあ、リグト程じゃないが俺達もこの日を楽しみにしていた。
現に、キューはリグトに呆れながらも神父にまだかと目で訴えているし、しきりにどんなギフトスキルを得るのかとワクワクしている。……まあ話していると言っても声を出している訳では無いがね。
キューが言いたい事を俺が感じ取り、それに応える。はたから見たら、無言無表情の少女に俺が一方的に話している様に見えるだろう。
これが前世で言う高校生ぐらいの男女だったなら、悪質なナンパとして通報されるレベルだ。
「……よし。では、お二人もこちらへ」
準備を終えた神父の言葉に従い、教会の中心部、男神像の前に膝を付く。
リグトは隠しきれていない喜びを。キューは静かな期待を。
俺は未知への思いをそれぞれ抱きながら、祈る様に目を瞑り頭を垂れる。
「―¨告げる¨。
¨我らが男神【アルガルト】よ。我らが女神【リルラルト】よ。我らが宝、我らが希望たる種子に加護を与え給え。道を示し給へ。
勇満たる者に力を。探究せし者に知を。作産する者に技を。絆求だく者に繋を。
今、この時を以って種は芽吹く。¨」
――【星進譲渡】
―暖かい光が体を包む。意識が眠る。
視界は晴れず、五感の全てが闇を感じ取る。しかし、感じる闇は光と同等かそれ以上に暖かく、確かな愛を感じ取れた。
――汝、異なる海より生まれ育ち者よ。■■■と縁を結びし子よ。
声が響く。闇の様に暖かく、光の様に篤き声が呼びかける。
――しかし、我が愛する子には変わらず。故に問いかける。
――汝、未来に求めしものは何や?自身が抱きし願いは何だ?
そんなもの、前世から変わらない。
未知だ。心を満たす事が出来る探求だ。………だが、それとは別に新しく芽生えた願いがある。
―友と、仲間と、愛する者と一緒に居たい。欲張るならば、一緒に旅して、一緒に未知を求めて欲しい。
――強欲なりや。しかし、その強欲こそ人が人たる所以。……よろしい。
――汝の道は、汝が汝で在る限り、その最果ては満ちているだろう。故に、我らが贈る言葉はこうだ。
――汝は全てと絆満ちし者。汝はこの世の全てを求めし強欲の化身。汝、異なる海より生まれし愛子。――貴方の道に、幸福と未知があります様に。
その言葉を最後に声は終わり、徐々に意識が闇より浮上する。
意識が朦朧として、ウトウトした感じで脳が回らない。
「――起きなされ、子供たち。儀式はこれで終わりじゃよ」
神父の声が聞こえた途端、一気に意識が元に戻る。例えるならば、すっごい快眠の後に気持ちよく目覚める感じだ。
若干一名、今だウトウトしているがな。……いや、キューのこれは普通に寝ていないか?
「………!」
「あ、起きた」
ぱっちりと目を開き、授業中に居眠りをしてしまい慌てて起きた学生みたいな感じでキューは目覚めた。傍から見てると少し面白い。
「ふぉふぉ、三人とも起きた様じゃの。お待ちかねのギフトスキルじゃ。自分がどんな力を授かったかは、≪オープンギフト≫と唱えると―」
「「≪オープンギフト≫!」」
「……早いの。まあ、説明することは無いし別にいいんじゃが」
神父の言葉を遮り、二人は一目散にギフトスキルの確認を始める。……俺も確認するか。
「≪オープンギフト≫。」
〈クアズア〉
:<コネクター>
[心を繋ぎし絆の旅人]
∟≪心交≫
∟≪絆の契約≫
:<リサーチャー>
[この世全ての未知・この世全ての探求者」
∟≪未知への期待≫
∟≪抱くは全ての探求心≫
:<フェイト【アモン】>
[愚者の如き勇者]
∟≪未知への勇気≫
[強欲の名を冠する者]
∟≪異海の強欲≫
:≪心交≫
心を交わし、思いを伝えあう。
言語や知性の壁を越え、通じ合う。
正し、心を持たないモノには意味が無い。
:≪絆の契約≫
心が繋がる事で生まれる絆。
その絆を以って契約する事が出来る。絆があれば、全てのモノと契約可能。
契約した存在は、自身の心象世界に滞在可能。また、心を通じていつでもどこでも召喚や帰還が出来る。
:≪未知への期待≫
何かしらの未知を感じる事が出来る。
未知の存在を感じ取ると、自身の全てが向上してバフが掛かる。
未知を解き明かす事が出来れば、未知を認知にした数だけ自身の格が上がる。
:≪抱くは全ての探求心≫
探求する事で、探究、研究、解明対象の全てを自分の力に変える。
自身が納得するまで探求し続ける。
この探求には探究の意味も含む。
満足いく結果にならなくとも、一区切りつけれた対象は(仮)として本来の四割程の力を得る。
完了満値が高い程、得る力は増える。
・完了満値対象
≪槍術(仮)≫≪魔力操作(仮)≫
:≪未知への勇気≫
未知を恐れず飛び込む勇気。
未知を認知に、初見を既存に、恐怖を興奮に変えるその勇気は人々を驚かすだろう。
正し、未知には愚直に一直線になり、貴女を知らない人には恐怖を与える事もある。
故にまた、この勇気を持つ者は、愚者であり勇者でもある。
:≪異海の強欲≫
異なる海より生まれた魂。そして刻まれた悪魔より大きな強欲。
求めたモノを自分の物とする。求めるモノを手に入れる時、悪魔の様な力を発揮する。
何で在ろうと何があろうと、己が道を塞ぐものは許さない。僅かに憤怒の因果を持つ。
邪神■■に至る可能性を持ちながら、起■【■ク■】と縁を結ぶ事で反転した運命。
満たされる事無く……だがしかし、一度は終わりを迎えた魂が二度目の生を受けた事でバグった存在。
異海より成された転生。洗われる事の無く引継ぐ命題は、理をも我がモノとする。
その欲は人たる所以。しかしその所業は人では無く、正しく悪魔の所業で在る。
―故に、汝は悪魔で在りながら人である。
「……これは」
思わず言葉が詰まる。
確かに、俺の根底は<リサーチャー>向きだと思っていたし<コネクター>に成れる様に努力もしてきた。
―だが、その両方ともに成るとは思いもしなかった。
そしてそんな二つの物を消し飛ばす勢いで存在を主張している最後のクラス。
―<フェイト【アモン】>。
そのギフトスキル、[愚者の如き勇者]と[強欲の名を冠する者]。
先ずこのギフトスキルが無くとも割とチートに近い性能を持っているのに、止めとばかりに唯一無二のスキルを発現させてきた。
前二つは分かる。人間一人の一生分の経験値を持ったまま転生したから、その経験値分、力が強力に成っているのだろう。分かりやすく言えば、強くてニューゲームってやつだ。
だが、悪魔や勇者と呼ばれる覚えが無い。前世でも、その様な存在に関わった事なんて一度も無い。
いや、確かに旅をする都合上、自身が強くて良いことはあれど困る事は無い。
けど物事には限度が存在するはずだ。過ぎた強さは厄に成る。
そして何より、力の詳細部分が不穏すぎる。
何だ、悪魔って。バグってどういう事だよ。結局俺は悪魔なの?人間なの?
異なる海かたの生まれ……この言葉の意味は分かる。
元いた世界からこの『カーイス』に転生した事を示しているのだろう。
刻まれた強欲………これが分からない。
確かに人一倍、未知に敏感で憧れて求めていたけど、強欲と呼ばれる事では無くないか?
それも、悪魔の名まで付く程の強欲って……いや待てよ?
もしかして、探求心も強欲の対象なのか?だとしたら納得できる。
未知への欲求。焦がれる程の探求心こそが俺の全てだった。………うん。改めて考えてみると、それ程おかしくもない。というか、受け入れてすらいる。
「―な、何とっ!?」
神父の驚愕の叫びが耳に入る。思考を切り上げ、歓喜と驚愕に染まった顔を向ける先、リグトの方に目を向ける。
リグトは、何時もよりテンションが上がっており、何処か使命と自信を抱いたような笑顔を浮かべていた。
六十歳腰痛神父が、その姿からはあり得ない速度で走る。
教会の奥へと行ったかと思えば、すぐさま手に結晶で出来た板を持って戻ってくる。
「リ、リグト……はぁっ………この、魔道具を持って、はぁっ……また≪オープンギフト≫と唱えるのじゃ、ゲホっ!」
「お、おう……神父、大丈夫か?」
すっごい咳き込みながら板をリグトに渡し、リグトも神父を心配しながらも言われた通りに唱える。
―すると、結晶の板に謎の文字が浮かび上がり、謎の文字が徐々に俺達にも分かるものに変わっていき、空中に転写される。
〈リグト〉
:<ブレイバー>
[強大なり、汝が剣]
∟≪心の如く大きなる剣≫
:<フェイト【スリックアース】>
[剣王の勇者]
∟≪英雄への勇気≫
∟≪建国せし王剣≫
[大地の名を冠する者]
∟≪広大なり、我が大地≫
[定められた王道]
∟≪偉大なり、我が王道≫
∟≪我らが勇王、此処に在り≫
「………ワァオ。」
―俺よりチートなヤツが直ぐそこに居た。




