¨奮う者¨リグト ¨正す者¨キラシュー・ラドガルド
誤字脱字があれば教えて下さるとありがたいです。
前世ではその概念も存在しなかった力――魔力。
先ずは、その力を感じ取るところから始めた。
至る所にその力は漂っており、そして己の内にも存在しているそうだ。
最初に感じ取るべきは内に秘めた魔力。
自然由来の魔力と、心から生まれた魔力では操作難易度が桁違いだ。
特に自分自身の体内に在る魔力は、それこそ赤子でも出来る程には簡単に扱う事が出来る。
直ぐに自身の魔力を扱える様になり、一年で自然由来の属性が宿った魔力も扱える様に成った。
参考にした本には、属性魔力を扱える様に成るまで二年は掛かると書かれていたので、一年で出来た俺は魔力に対して適性があると思って良いだろう。
魔力鍛錬を始めたのが八歳の時で、属性魔力を扱える様に成ったのが九歳の時だ。
魔力鍛錬が満足いく結果になり、次に始めたのは槍の鍛錬だ。
これは、父のギフトスキルが槍関連と言う事が関係しており、子供でも扱えそうな鍛錬用の武器が木の槍しかなかったんだ。
本当は長杖が望ましかったが、まあ槍も似たようなモノだろうとそのまま槍の鍛錬を始めた。同じ長い棒だしな。
そうやってブンブンと庭で振り回していると、それを見た父に簡単な指導をして貰う事が出来た。
農家と成った父だが、ギフトスキルは今だ健在。その指導は的確なモノだった。
これまた満足いく仕上がりに成るまで、槍の鍛錬を一年。
そして現在。
俺は<コネクター>に成る為に、他との意思疎通……簡単に言えば、コミュニケーション能力を鍛えている。
<コネクター>の契約には、大前提として人に限らず魔物や精霊と言った存在と意思疎通が出来ないといけない。
人は言葉で通じ合えるが、人語を持たない魔物は意思疎通が難しい。
その為、魔道具だったりスキルだったりで心を交わして契約するのが一般的な<コネクター>だ。
しかし俺はどういう訳か、魔力に乗った又は元に成った相手の感情や思いを感じ取る事が出来る。
これのお陰で、今相手が何をして欲しいか、どんな気持ちかが分かり、自分で言うのも何だが上手く相手の懐に入り込める。村の住人全員と俺は仲が良い。挨拶すれば八百屋のおじさんは果物をくれたり、雑貨屋のおばあちゃんはお小遣いをくれたりな。……流石に悪いから、できるだけお手伝いをした後に貰う様にしているが。
何故あるか、何故俺は使えるのか。……まあ、あるものは何でも使うのが旅人だ。
色々と疑問はあるが、有難く使わせてもらいコミュ力を高めている。
―前にも言ったが、この国はギフトスキルを重要視している。
その為か、【星進譲渡】の儀式で授かるギフトスキルが強力なモノ、又は重要なモノの場合、国……と言うより、その力を欲した王族や貴族が支援を送る事がある。一様断る事も出来るが、基本はみんな受けているな。
支援を受けた者は、支援者の要望にもよるが国が経営する王立学院に最低でも三年間は通わなければいけない。
そしてその学院卒業後、支援者と関わりがある仕事に就く。
ただ、支援者は支援しているからと言って何を要望しても良い訳でもない。
しっかりした内容を王家支援課と呼ばれる、この国で四番目位に偉い立場の人が確認し、許可が下りたら支援者は要望を出す事が出来る。用は、唾つけやお願いは良いけど相手に命令やお手付きはするなよ?ってことらしい。
色々言ったが、まあ支援は受けて損は無い。将来的に自分に合ってそうなモノなら気軽に受けても問題は無い。
「―おーい!クア、遊ぼうぜ!」
……おっと、もうそんな時間か。
「ああ!今行くよ!」
今、俺を呼んでいるのが生まれた時からの幼馴染の一人、「リグト」。名の意味は¨奮う者¨。
俺とは反対の超男前のイケメン。俺と同じ歳にして、天性の年上キラー。
この世界に置いて、¨僕¨の憧れで¨俺¨のライバル。
七歳までの僕の時、何をするもリグトの後ろを歩いていた。
好奇心が高く、森に入っては迷っていた僕を家まで力強く導いてくれていた。
七歳以降の俺の時、夢の為に鍛え始めたのを境に、リグトとは競い合うライバルと成った。
もう一人の幼馴染を審判役にし、事あるごとに勝負を繰り返した。
戦績は魔力関係で俺の圧勝。訓練用の木で出来た武器での戦闘ではリグトが圧勝。
「おまたせ。……あれ?キューは?」
「キラシューは教会の手伝いがあるから後から来るってよ」
俺のもう一人の生まれた時からの幼馴染、「キラシュー・ラドガルド」。名の意味は¨正す者¨。
村唯一の女の子。艶やかな薄紫の髪が似合う、綺麗系の超が付く程の美少女。大きくなれば、眼鏡が似合う美人になる事だろう。……完全に俺の上位互換だな。
ただ、感情を表に出すのが苦手であり、基本無表情。
俺は魔力に乗せられた気持ちや感情が分かるので、気持ちを表せずともキューのしたい事やして欲しいことをくみ取り、妹の面倒を見る様に世話をした。……小さい時からそうやってしていたせいか、最近では言葉すら滅多に発しない。無口無表情のクール美少女の体現者。
後、この村で一番強く偉い人の娘。
キューの親父さんは割と最初から好意的ではあったが、最近、何故か年がら年中俺とキューが一緒に居るのが当然の事だと思われている。
十歳から外堀を埋めて来るのはちょっと………。
―まあ、それは兎も角。
リグト、俺、キューの三人は毎日一緒に遊び、学び、競い合う。キューはほとんど審判役だけど。
今日も今日とてそれは変わらず、今回は競争では無く普通に村にある広場で遊ぶ予定だ。
「そういや聞いたか?」
「ん?何を?」
「俺達が受ける二年後の【星進譲渡】の儀式の時、何か偉い人が見に来るらしいぞ。」
支援者が支援を決める相手を選ぶために直接足を運ぶ事はまずない。
儀式を行う教会の人からの報告を聞くか見るかして、良さそうな相手を屋敷に呼び、支援の有無を決める。
……それが、貴族のお偉いさんが見に来るとな。それも二年後、か。
別に、今年も来年も儀式はあると言うのに。幾らこの村の子供が俺達だけだと言っても、教会はちゃんとあるし、報告を聞いてからでも支援は遅れるだろうに。
「父さんが言うには、俺らの代は何個か特別なギフトスキルが授けられるらしいぞ?」
「ほ~~ん………何故、俺達の代何だろうな」
「なんか、王都の方が騒がしいそうだぜ?神託だー!勇者がー!魔がどうたら王がどうたら……。王都にいる姉ちゃんからの手紙に書いてあった」
リグトの姉は、王都の方で働いている。
リグトのお姉さんは、<リサーチャー>関係のギフトスキルを授かっており、支援者が付いている。
支援をしてくれた貴族が王都に屋敷を置いており、その紹介で王都の学院の研究者になった。
因みに、お姉さんは支援者の息子を仕留めており、玉の輿に乗った感じで結婚している。ラブラブで幸せの絶好調って感じだそうだ。俺宛の手紙には、惚気がびっしりと書かれている。……正直、勘弁してほしい。
……コホン。さて、それは置いといて。
リグトのお姉さんがそう言っているのなら、本当の事なんだろう。
リグトの姉、ルリラさんはそのギフトスキル故かとても頭が良い。今まで書いてくれた手紙の文を見れは分かるが、子供の俺達にも分かりやすく端的に書いてくれている。まぁ、偶にある少し説明じみた文は理解が追い付かないが……。
「……魔に王、ね。」
「ん、何か言ったか?」
「いや、ルリねえが今回は帰ってこれるのかなって。」
「ああー……無理じゃね?かなり忙しいみたいだし、多分帰ってこないんじゃない?」
「だよねー。今回は王都のお土産はお預けかぁ」
魔と王。単純に考えるならば、現れる言葉は¨魔王¨。
この世界において、何を以って魔王と示されるのかが分からない。
魔王を悪と仮定し、単純かつ王道に考えるならば、世界を脅かす魔王が復活又は誕生した!それを倒すor対抗する為に神は勇者の力を相応しい者に授ける。その者が勇者の力を使える様に成るまで鍛えるもしくは保護する為に神託で国に知らせた。
………妄想の域を出ないな。予想するには情報が少なすぎる。
というか、俺が気にする必要があるのか?……いや無いな。
俺は自分の心が満たせれば、未知の探求が出来ればそれでいい。ならわざわざ関係ないものに思考を割くのは意味無いな。
「……遅いなぁ、キューのやつ。」
「どうする?先に遊び始める?」
「んー……よし!俺達も手伝いに行こうぜ!」
「言うと思った。じゃあ、行こうか」
元気よく教会に向かうリグトの横に並び、キューの用事を手伝いに行く。
―心を満たす。その為に色々とするし、切り捨てる事もあるだろう。……だが、今は。
「―リグト」
「何だ?」
「ちゃちゃっと終わらせて三人で遊ぼう」
今は、二人と共に日常を過ごせるならそれで良い――。
「―おう!」




