PHASE 2 :現実でも本部とかを襲撃する作戦はあるさ
「今月2度目です!!撃て!!」
タタタタタタタタタッ!!
H&K MP7達は、手際良く襲撃してきた悪魔の群れを殺していく。
新兵の死神がもたついている中、やはり本部を守る屋内戦闘のプロ集団なだけ合って動きにみだがないというか……慣れすぎている感すらある。
「うわわ、入社して即実戦っすか!?」
「気を付けろ!
私もお前も室内向きの銃じゃない!!」
慌てつつもグレネードでフットボール選手並みの体格が普通な悪魔の群れを対応するチャイナレイクに、冷静にパイプ椅子を支えにして狙撃していくPSG-1。
そんな様子を壇上で見ているスクルドが、静かに天井へ顔を上げる。
「出てきてはどうですか!?
この程度の襲撃で、いったい何がしたいんですか!?」
瞬間、空気が変わる。
すぅー、と窓際で飛び回っていた悪魔達が道を開ける。
直後、ガシャァァン、と全ての窓と枠を破壊して、馬鹿でかい豹のような体毛全てが燃え盛る炎のような怪物が上半身を突っ込んできた。
全員が状況の整理中の中、豹の上から飛び降りる影。
全身をフルプレートアーマーで包み、上等そうなマントを翻す大柄な人型。
その兜は、王冠を被りツノを生やしたハエを模したような荘厳な物。
「ああ……蝿の王、ことベルゼビュートさんですか」
さも当然のように、スクルドはそう言葉を漏らす。
「古い異教の未来視の女神といえど、我だと言うことは直前まで気づかぬか」
す、と兜を外し、その下から偉丈夫な身体に似合うナイスミドルの顔が現れる。
「あなたは若いから知らないでしょうが、未来など数秒先もあやふやな事しかないのです。
私や姉様がどれほど正確な未来視をしても、細かい事は分からない」
「フン……ババアめが、襲撃を完璧に予測しておいてよく言う!」
ベルゼビュートが剣を天高く構える。
ウォォォォォォォォォォォォ!!!
瞬間、あの巨大な燃える豹が、オオカミのような鳴き声とともに腕を振り、いく人かの死神達を吹き飛ばす。
「!」
「はっはっはっはっは!!
形勢逆転というやつだ!!
流石にこの狭さでは、あーるぴーじー、やら何やらは持ち込めぬだろう?」
どうやら、敵も間抜けではないらしい。
屋内戦闘のためのPDWが主兵のこの場では、流石にこのデカブツを仕留めるのは無理だ。
瞬間、スクルドは壇上に隠していたハンドガンを取り出し撃つ。
だが、放たれた弾丸を剣で切り裂き、気がつけばベルゼビュートの剣がスクルドの首元へ突きつけられている。
「選択を誤ったな古い女神よ!
貴様もワルキューレの端くれならば、槍の一つでももってくれば良かろうに!」
「……今の時代に、ナイフ以上の刃物を使うのはトレンドではないですよ、クソガキ」
「そのナイフ以上の武勇を蘇らせる事こそ我が本懐よ!」
「年下の癖に懐古厨ですか」
「その通り!!
我は、貴様のようなババアが何故こんな無粋な物に頼るかが分からん!!」
スクルドの手から強引に奪い取るハンドガンを、まじまじと見つめて笑うベルゼビュート。
「戦場のロマンはどこへ行った!?!
戦いの矜持がこんなものにあるか!!
人のか弱き知恵の生み出した小賢しい物が!!」
無造作に、ハンドガンを放り投げる。
弧を描いて地面に落ちるのを見ながら、スクルドは静かにため息をついた。
「ロマン?戦場に、ロマン?
…………愚かな、戦場にあるのはどこまでも悲劇とただ無機質な殺し殺されるという結果だけ」
「それも変わる。お前を殺して、再び素晴らしき混沌の戦場を!!」
「すでに状況は混沌としているでしょう。
まぁ、ここまでは予想通り」
何、と言うベルゼビュートの前で、静かに肩を竦めるスクルド。
「さっき槍を使えと言いましたね?ええ、私は銃を扱うのは苦手です。
じゃあ、何故あのハンドガンを選んだのか?
そもそも、『誰がハンドガンを使うのか?』」
「!!」
「遅かったですね」
振り向き、ギリギリで数発の弾丸を防ぐ。
だが、続いてやってきたのは予想外。
振り下ろされたのは、工具。
杭打ち用のハンマーは、ベルゼビュートの剣の隙をつき、左腕の籠手をへこませて骨を砕く。
「グッ!?」
距離を取る。
相手を見ると、意外でもないが驚く姿。
可憐な少女。いや凛とした表情は凄まじい美人だろう。
黒い髪をたなびかせ、右手にあのハンドガン、左手に自分の腕を砕いたハンマーを持ってこちらを見据えている。
「彼女のTACネームは『ナイファー』。
わざわざセクター4から来ていただいた、あなた好みの近接戦闘のスペシャリストです」
G.W.S.所属死神:『FN Five-seveN』
銃種:ハンドガン/小型PDW
弾種:5.7×28mm弾
TACネーム:『ナイファー』
役職:セクター4第2小隊隊員
ナイファーは、静かにハンマーと自身であるFive-seveNを構えてベルゼビュートを見ていた。
***




