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G.W.S.-グリムリーパー・ウェポンズ・サービス-  作者: 来賀 玲
作戦記録1番:ようこそ新兵ども!間違ってこんなトコ来たのかい!?
20/26

PHASE 12 :なんやこの猿ぅ?






 ど田舎


 それは、本当に田んぼと個人商店しかなく、軽トラやトラクターと老人ばかりの場所。


 幹線道路があらゆる場所を繋いでも、日本にはまだそんな場所は多い。



 あ、安心してください。

 最近は、近くにイ◯ンモールが出来たおかげで、遠方から結構人が来てくれるんですよ。


 まぁそこ以外何もないんですけど、ええ……



 この一文こそ、ここがど田舎の証に他はならない。





「良い空気だねぇ……ベトナムと違って、草の匂いがいいんだよねぇ……」




 ブラッキィは、すぅーと深呼吸し、


「って臭っ!?!ゲホッ、煙臭っ!?!」


 と、微かな自分の撃ち出した硝煙の香りを吸って咳き込む。







 一戸建ての、新しい家。


 でも土地の広さ的には、昔は古い家があったんだと分かる。


 ベランダから覗く、今時珍しい仏間には、泣きながら震える家族が1組。


「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

 やめろやめろやめろやめろぉぉぉよぉぉぉ!!!」



 家族に取り押さえられた、明らかに正気を失った若い男が、泡を吹きながらもがく。



「…………オンキリキリソワカ……オンハヤシ……」



 その近くで祈祷する、紅白装束のおばさんが、木の先に紙を四角くギザギザにした物───御幣(ごへい)という、神道の御祓に使う物を必死に振るう。




「おいゴラァ!!お前のせいで咳き込んだんやぞ!!

 どうしてくれんの!?責任取れやこの猿ぅ!!」



 と、若干ふざけた口調で自分ことM16A4を構える先には……



「フーッ!!フーッ!!!」



 すでに腹や肩に血を流す、日本産と思えない巨大な猿がいる。


 この猿、ゴリラではない

 オランウータンでもマンドリルでもない


 日本の猿の意匠を持ち、それでいて巨大。

 それでいて獰猛な顔。しかし傷を抑えてこちらを見る目にはの知性を感じる。



「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

 やめろ、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 まるでこの猿を代弁する様、家族らしきみんなに押さえられた若い男が叫ぶ。


「それしか言えないのぉ!?

 ベトコンでももうちょっとこう……知性あるぞ!?」


「キシャァァァァァァァァ!!!」


 飛びかかる巨大な猿。

 とっさに自身の体格を生かしてスライディングし、上空を通過する猿を、下から構えて素早く撃つ。


 タタタタタタタタタッ!!


「ギャァァァァァァァァァ!?!?!?!?」


 下から、つまり無防備な腹、そして男の急所が撃ち抜かれる。


 ビクンと大きく取り押さえられた男が上を向いて痙攣し、やがてパタリと倒れて大人しくなる。


「…………」


 無残に急所を撃ち抜かれた猿が震える中、油断なく構えて立ち上がるブラッキィ。


「やっぱり5.56×45mmNATO弾じゃあ、やっぱり簡単には殺せないか……

 にしてもこれだけデスサイズ弾頭撃っても死なないって、コイツ何人食ったんだ?」


「〜〜〜ッ、ウギャアッッ!!!」


 と、突然渾身の力で立ち上がり、大きくあらぬ方向に跳躍する猿。


 ターンッ!!


 直後、頭が横から撃ち抜かれ、続けざまに撃たれたもう一髪が恐らく心臓の位置を捉える。


 どさり、と落ちてきた死骸は、どす黒い血を流しながらピクピク痙攣していた。


「……死んだね?」


「死亡確認」


 しゅー、と青白い煙が抜けていく様に立ち込める死体。

 しゅたっ、と屋根の上にずっと待機していたリュドミラが降りてブラッキィの言葉に答える。


「さすがソ連製、いい弾だわ」


「あらあら、銃の精度は褒めてくれないのかしら?」


「ごめんね、型番の後ろにAって言葉つく前からソ連製には酷い目にあってるのさ」


 ふと、二人に近づく足音。


「まずは、1匹(いっびき)ですね?」


 田舎の鈍り特有のイントネーションで話しかけてくる、先ほどまで祈祷を行っていたおそらく……


「まさか、霊能者の木村ヨシ子ちゃんと出会うとはね〜……おっきくなったわよね?」


「その節はどうもです。私ぁしも、まだまだ未熟みたいです」


 と、リュドミラと親しげに話す霊能者ことヨシ子。


「買い物帰りに呼び止められて、まさか『ウェンディゴ』とはびっくりだよ」


「なるほど、『ウェンディゴ』ですかー……かぁー、言い得て妙な、しかしこいつらを英語で言うならそれが適切ですなぁ?」


「じゃあ、なんて言うの?」


「『ヒサルキ』です。

 被る猿の鬼、とも書くんです」


「この大陸のウェンディゴは猿か……

 類人猿って、どーしてこう魂に手を出すんだかな」




 ギャ────────ッッ!!



 遠くから、怒りの雄叫びが聞こえる。

 それも、同時複数、かなりの数で。


「……発情期ですかこのヤロー共?」


「数日前、イ◯ンモールが出来たのに便乗しての山の開発の時に、洞窟の古過ぎる祠の封印を解いた跡がありました。

 それが多分、今回の原因です」


「またかよ……最近北米(セクター6)でも問題になってるパターンかぁ〜…………おのれ、そりゃイ◯ンモールは便利だけど、ショッピングモール作る場所はちゃんとお祓いなり事前調査なりしとけや……!」


 あぁ〜、と頭を抱えるブラッキィ。

 せっかくこのまま幸せな気分で歓迎会で肉を頬張りながらビール片手に酔いつぶれてそこらへんで吐いて寝る予定だったのだ……リュドミラの知り合いだからと付いて行ったのが大間違い。



「…………

 うん、大ごとにしよう、そうしよう。

 人海戦術で早めに終わらせて、みんなでパーチーだ」




 怪しい外国語風に言うや否や、ブラッキィは即座に通信を繋ぐ。



          ***

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