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6 スラムでの出会い

 商業地区を回った後、ラントと相談してスラムで行われるオークションに参加してみようという話になった。

 オークションはスラムの奥にある建物で行われる、参加にはお金と事前に配られたチケットが必要だ。

 チケットを持っていなかったが、入手先には心当たりがあった。


 「あの爺の店か」


 先程店に寄った時チケットらしき物をみたのだ、お金があれば入手することは可能だろう。

 ラントはしばらく考えこんでいた、そして腰にある剣を見て何かを決めたように前を向いた。


 「金ならなんとかする、開催は明日だったか?金を作ってくるから案内してくれ」

 「いいよ、明日お昼にスラムの酒場前に集合でいい?」

 「それでいい、じゃあまた明日。その剣、無くすなよ」


 ラントはそう言って屋台街の道を外れ、坂道を登っていった。

 あちらの方向にはウルスの店しかない。


 (剣を手放すつもりなのかな)


 ウルスの店は安く買い取り高く売るという場所である。剣を手放すにしても然るべき場所で売ったほうがいい。


 そう伝えようと思ったがラントは既に遠くまで歩いていた。

 日は既に暮れかかっている、スラムの夜は危険だ、進んで外出はしたくない。

 夕日が沈みかけ影も長くなっている、今から追いかけるのもどうかと思った。


 そうして悩んでいるうちに、ラントの姿は見えなくなった。


 

     *




 翌日早々にスラムの酒場前に来ていた、日はまだ出たばかり、待ち合わせの時間にはまだある。

 ラントから預かっている剣は布に包んで隠している、スラムで高そうな剣を持っていたら悪目立ちするため、自衛の為の策だった。


 しばらくの間酒場の前で立ち尽くした。

 だが空いた時間をただ立ち尽くして浪費するのは勿体無いと感じ始めてもいた。


 (せっかく出来た時間だ、この辺りを歩いてみようかな)


 布で包んだ剣を抱え、スラムの路地裏に足を進める。

 

 整備されていない道を歩く。

 風が浮けば砂埃が舞い、視界を奪う。

 しばらく目を閉じその場をやり過ごしてから目を開ける、そうして改めて周囲に目を向けると様々な人がいる事に気がついた。


 朝から酒を飲み寝ている者。

 目を見開き口からよだれを垂らしている者。

 何かを抱えながらしきりに周囲を警戒している者。


 (みんな大変そうだな)


 そう思いながら歩いていると、前方から妙な服装の二人組みがこちらに向かい歩いてきているのが目に入った。

 その服装はラントが着ていたものに良く似ている。


 その二人組みは目の前まで来るとこちらに声を掛けてきた。


 「そこの少年、少しいいか?」

 「……なんでしょう?」

 「この辺りで背の高い女性を見なかったか?我々と同じような格好をしていて腰に剣を差している女性なのだが」


 (女性?男性なら昨日見たけど)


 「見ていないです」

 「もし見つけたら教えてくれないか、お礼はする」

 「はい、見つけたらでいいなら」

 「次は北の方だ、いくぞ」


 そう言うと二人はそのまま走り去っていった。


(僕も少し探してみようかな、日が出ている内はそこまで危険じゃないし)


 二人がきた方向とは別の道に足を進める、酒場やウルスの店とは逆の方向だった。


 道は狭く子供一人がようやく通れるような荒道だ。

 そこを抜けると開けた通りに出る。


 そしていた。


 背は高く髪は腰の辺りまで伸ばしている、服装は先ほどの2人組みやラントと同じ格好をしていた。

 さらに顔立ちは整っておりそれが周囲の目を集める要因になっている。

 スラムには似つかわしくない綺麗な女性だった。


 (目立っているな)


 何人か声を掛けようとしている者がいた。

 だがその腰に差してある長い剣が近づきがたい雰囲気をだしており、実際に声を掛けるものはいなかった。

 目つきも心なしか鋭い。


 女性は周囲をみまわしていたが、その視線はある一点で急に止まった。

 クロが持っている剣を包んだ布を凝視しているのだ。


 「そこの方、少しよろしいでしょうか」


 視線はこちらを向いていた、思わず後ろに人がいないか確かめる。


 「あなたです、仮面を被っている君の事です」


 自分に声を掛けたのだと確信し女性と向き合う。


 「あなたが持っている物、それは剣ですか?」

 「……そうですが」

 「少し見せて頂いても宜しいでしょうか、私剣には目が無いのです」



 本来なら断るべきなのだろう、だが女性の目が据わっているのを見て断れなかった。

 剣に掛けていた布を外し女性に見せる。


 「これは魔炎剣イクリプスですね。使用者の考えを読み取り、炎を巻き起こすという魔剣です、この剣どちらで手に入れました?」

 「これは預かり物です、スラムの案内をしていて、今はお金が払えないからその代わりだそうです」

 「スラムの案内?その男はいま何処にいるのでしょうか?」


 さすがに教えるのは不味いと思った。依頼人の情報を売るのはあまり宜しくない。


 「多分その男、私の兄だと思うのです。数日前から失踪しておりまして、探しているのですが手がかりも無く困り果てているのです」


 (身内?ならば教えてもいいのだろうか)


 「スラムの案内と言いましたが、お金はまだ頂いていないのですよね、御幾らでお受けしたのですか?」

 「金貨3枚です」

 「なら私はその倍を払います、ですから兄の居場所を教えて頂けませんか?もちろん現金一括で払います」



 そう言って女性は金貨6枚を差し出してきた。

 

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