5 魔道具売買
屋台街を抜けると整備された道がある。
その道をしばらく歩き続けると、開けた場所へと出た。
みれば複数の人物が地面に敷物を敷き、その上に胡坐を掻きながら自身の前に様々な道具を置いている。
「なんだここは?」
「スラムの商業地区だよ、売買する人は大体ここに集まるんだ」
商業地区は閑散としていた、客もまばらで繁盛しているとは言い難い。
「魔道具は奥の方だよ、行ってみよう」
奥の一角、客は少ないが店員多いエリアがある、高級品の魔道具を守るため、人を配置しているようだった。
「ラント、ありそう?」
「今探している」
ラントは腕を組んで店先から動かない。
「何かお探しですか?」
店の奥から店員がでてくる。上客っぽいラントを見て冷やかしではないと判断したのだろう。
「魔道具を探しているんだ、腕輪型で身体能力向上の効果がある物なんだが」
「腕輪で能力向上系ですと二つあります、一つはこれです、『ラークの腕輪』。身につけると人によっては筋力向上が見込まれます」
「人によっては?」
「例えば女性や幼い子供がこれを身につければ成人男性くらいの動きができます、しかし普段から鍛えている、それこそ戦士や武芸者がこれを身につけると普通の成人男性くらいまで能力が落ちてしまします」
「いらないな」
「お客さんは鍛えているみたいですからこれは必要ないかもしれませんね」
「参考までに聞きたいんだがこの魔道具はいくらなんだ?」
「金貨55枚です」
スラムの外で働く普通の人が年に稼げる額が金貨300枚くらいと言われている、そんな中で金貨55枚はかなり強気な値段設定だ。
「金貨55枚か…買えなくもないが」
「腕輪の魔道具はあと一つしかないですね、こちらの『地濡死神の腕輪』です、値段は金貨10枚です」
「これはどういった効果があるんだ?」
「なんと純粋な身体能力向上系ですよ、どんな方が身につけても能力の向上が見込まれます」
「なんでそんないい物が金貨10枚なんて値段なんだ」
「この腕輪ですね、残念ながらデメリットがありまして」
「デメリット?」
「はい、まず装備すると外れなくなります、そして段々自我を失い狂気に苛まれ、夜な夜な人を切り殺して回るそうなのです」
「はい?」
ラントがドン引きしている。
「前の持ち主は町で人を切りつけている所を衛兵によって取り押さえられました、しかし腕輪は外れず、持ち主は暴れ続けたため衛兵が仕方なく持ち主をその場で殺しました」
「こえーよ」
「能力向上系の魔道具はこの二つしかありませんが、当店では他にもいい品を揃えておりますよ」
ラントは店員との話に夢中になっている。
(本来の目的を忘れているような、声を掛けた方がいいかな)
「ラント、目的の腕輪を探さないと」
「お?おぉそうだった」
「なぁ店員さん、他に腕輪の魔道具は無いのか?能力向上系だ、それなりの値段がすると思うのだが。」
「当店にはそこまで高い魔道具は置いていないのですよ、この時期はオークションも行われますから目玉商品はそちらに流れてしまうのです」
(オークションか、あそこはちょっとなぁ)
「取り合えず他の店も色々回ってみる、機会があったらまた来る」
「またのお越しをお待ちしております」
店員は上客を逃がしたと思ったのだろうか、ラントが背を向けると悔しそうな顔をしていた。
「しかし魔道具っていっても色々な物があるんだな。なぁクロ、お前が身につけているその仮面、それも魔道具だったりするのか?」
「これは普通の仮面だよ、格好いいから着けているんだ、いいでしょ?」
「ん?あぁ……」
その後もラントと共に商業地区を回った、だが『風神の腕輪』は見付からなかった。




