16 教会騎士ナーデン
教会所属の騎士、ナーデン・エクレムは上司から与えられた仕事に辟易していた。
急な仕事が入るのはいつもの事だ、だが今回はかなり面倒な仕事だった。
先日教会が管理する魔道具『聖人のロザリオ』が盗まれた。
だが犯人はスラムから脱出しようとしていた所を巡回中の衛兵によってあっさり捕まったらしい。
大変だったのはここからだ、犯人は盗んだ『聖人のロザリオ』をあろう事か危険な魔道具の中に収納した。
この魔道具は決められた番号を正しい順番で入力しないと中身共々爆発するというふざけた魔道具だった。
番号を聞き出そうと一部の騎士が拷問を行ったそうなのだが勢い余って男を殺してしまったらしい。
ナーデンに与えられた任務は『聖人のロザリオ』を無傷で回収することだ。
だがこうなってしまった以上、無事に魔道具を回収することは不可能だろう。
魔道具の番号を知る男は既に死んでいる。
その上怒り狂った司祭が闇雲に番号を入力し、本来は三回試せる入力が残り二回しかできない。
男に協力者でもいない限りそれを特定することは不可能だ。
(適当に入力して何とかなるとでも思っていたのだろうか。あの爺さんは)
そして自分に仕事が振られた理由も何となく察していた。
ナーデンが所持する魔道具『リードの針時計』を使えという事だろう。
時計型の魔導具である『リードの針時計』は長針と短針は付いているが秒針は付いていない。
秒針の代わりに普段はまったく動かない金色の針が付いている。
この金色の針は人の心を読む。
持ち主が望んでいる物や人の場所、あるいは事象を指し示すのだ。
自分が存在を知り得ない物すら指し示す事もある。
ゆえに魔道具が示す先を辿っていけば大体の事柄は解決する。
だが無意識下の願望も読み取ってしまうのでいまいち使い勝手が悪かった。
もし自分が仕事なんてどうでもいい、ケーキを食べたいと思っていたらこの魔道具は躊躇いなく一番近いケーキ屋を指し示すだろう。
さらに厄介なのはこの魔道具が他人には使えないという事だった。
この魔道具は血統魔道具なのだ。
魔道具の中にはある特定の一族しか使えないという制限が課せられている物がある。
種族だったり血脈だったりだ。
この魔道具は後者でありエクレム家に連なるものしか使用できないという魔道具だった。
手のひらに『リードの針時計』を乗せる。雑念が入らないように事件の事だけを考える。
『聖人のロザリオ』を無事手に入る方法、その手がかりが欲しい。
(手がかり手がかり手がかり手がかり)
そう思いながら魔道具を起動する、すると『リードの針時計』は南を指し示した。
(あちらは歓楽街、さらにその先はスラムか)
歓楽街ならばいい、だがスラムを指し示しているとしたら厄介だ。
あそこは無法地帯だ、盗みに殺し、恐喝暴行なんでもありだ。
武装する必要がある、一人では危ない、従者も連れて行くべきだ。
戦闘用の魔道具も大量に用意しよう、他にも準備が必要かもしれない。
考えられる全ての対策をして南に向かうことにした。




