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元の世界へ


朝。目を覚ます。肩にとても重たい物が乗っかっているように感じる。たぶん、相当疲れている。


昨日は、散々だった。ルーナと戻ってきたら、レイスとジャック塾長に質問攻め。酔ったセバスが、「魔術戦じゃ!この野郎!」と俺にしつこく絡んできた。酔ったクレアは、なぜか泣いていたし…もう収集がつかない状況。何とか自分の部屋には帰ってこれたが…疲れ果てて、またそのままベッドに倒れこんでしまった。


とりあえず、水を飲もうと、コップに水を注いでいた時、勢いよく扉を叩く音が聞こえた。思わず、コップを落として割ってしまった。


「うわー、割っちまった。しかし、誰だよ、こんな朝っぱらから。こっちはただでさえ疲れてんのに。」

愚痴をこぼしながら、扉を開けるとそこには恥ずかしいそうに少しうつむくルーナがいた。俺は、ルーナの姿を見て、昨日の出来事がふと思い出された。指切り…思わず赤面する。


「何顔赤くなってんのよ、バカ!さっさとスーツに着替えなさい!それと、会社の荷物も!」

ルーナも顔を真っ赤にして俺に言い放つ。俺は、恥ずかしさを隠したくてすぐさま部屋の扉を閉めた。


シャワーを軽く浴び、ルーナに言われた通り、スーツに着替えビジネスバックを持ち、部屋の外で待つルーナと合流した。


「遅い!遅い!遅い!いつまで待たせんのよ!」

両手を組み、履いていたヒールをコツコツと鳴らすルーナ。どうやら相当イライラしているようだ。


「仕方ねぇだろ。昨日、そのまま寝ちまったんだから、シャワーぐらい浴びさせろよ。それより、何でスーツなんだ?」

「パフェ…」

ルーナは、頬を赤らめ恥ずかしそうに言う。


「パフェ…って、えーー!!今日行くのかよ!」

思わず大声で叫んでしまった俺。


「うっさい!あたしが、今日食べたいから行くの!ちなみに、あんたもあたしも今日はサボりだから。」

自由すぎるルーナの行動に呆気にとられる。

「とにかく、あんたの世界に戻るわよ。」


戻ると言われた瞬間、俺はハッとしてしまった。自分の世界に戻るということは…

「やばい!!この世界に来て、4日目ってことは…俺、会社3日もサボってんじゃねぇか。やばいやばい。新入社員でこれはマジでまずい。」

この世の終わりでも見たかのような顔になる俺。


「あー…言うの忘れてたけど、この世界に来た瞬間に、あんたの世界の時間はストップしてるの。つまり、出会った日のあの時間に戻れるっていうこと。いわゆる、ご都合主義設定ってわけ。」


異世界っぽい設定だなと感心しつつ、内心サボりにならなくてホッとしている俺だった。


「ほら、さっさと行くよ。」

先に歩き始めるルーナについていく。向かっていく先が近づいていくにつれ、嫌な予感がどんどん増幅していく。そして、着いた先を見て俺は思わず部屋に戻ろうとしたが、ルーナにガッチリと肩を掴まれる。そう、この世界に来た時の再来だ。


「ちょっと待ってよ、ルーナ!また女子トイレかよ!」

「そうよ。別に鏡さえあればいいんだけど、変態のあんたにはお似合いかなって思ってねー。」

平然と毒を吐くルーナに思わずイラつく。この世界に来た時と同様に、俺の腕を引っ張り無理やり女子トイレへ連れ込む。そして、洗面台の鏡の前で2人が並ぶ。


ルーナは、鏡に右手を置く。俺もルーナと同じようにそっと鏡に手を置いた。すると、この世界に来たのと同じく、俺たちは鏡の前に吸い込まれていった。


気がつくと、どこかで見た光景が目の前には広がっていた。そう、異世界に連れてこられた時の女子トイレだ。


「おい、ルーナ!何でここなんだよ!また変態みたいに思われんだろうが!」

「仕方ないじゃん!異世界に来た時と同じ場所に戻る仕組みになってるんだから。まあ、元の世界に戻れたんだし良いじゃん。それにあんたにはお似合いよ、変態凡人さん。」

先ほどの恥ずかしそうな表情とはうってかわって、嘲笑うルーナ。思わずイラついてしまう俺。


ルーナの後ろに隠れ、何とか誰にも見つからず女子トイレを抜け出し、会社に向かっていた。すると、会社の入っているビルに着く手前でルーナが、

「あたし用があるから」と言ってどこかへ行った。


俺は、そのままルーナと別れ、会社へと向かった。少オフィスに着くと、どこか懐かしさを感じた。いつも通り挨拶をして、デスクに座る。パソコンを開きメールチェック。しかし、新入社員なので、たいしたメールは来ず、朝礼までぼーっと座っていた。


そして、チャイムが鳴り、全員が起立をし、部長が全員に「おはようございます」と言う。その挨拶に続けて、部下全員で「おはようございます」と言う。いつも通りの朝礼だ。そう思っていたのだが…


「あー、みんなそのまま立っていてくれ。急なんだが新しい社員がこの度入ることになってな。君、こっちへ来なさい。」

部長が手招きをする。俺は手招きした方向に視線を向ける。黒ブチのメガネをかけ、オフィスカジュアルのようなシンプルな服装をした女性。髪色はダークブラウンで、ミディアムぐらいの長さ…


(ん?どこかで見たことある顔だな…)


「この度、弊社に入社することになりました、佐藤 瑠奈です。よろしくお願いいたします。」

みんなが拍手をする。俺は、名前を聞いた瞬間に気づいてしまった。あれがルーナだということに。


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