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召還フラグと鈍感系 ※異世界召喚しようとしてもなかなか召喚されない物

「最近物が良くなくなるんだよね~。」


「珍しいな、かなりしっかりしてると思ったんだが・・・・・・」


「うん、そうなんだよな~」


彼が机に上半身を伏せると、先ほどまで顔があった場所へ魔法陣が浮かぶ。


「ちょっ、太郎、頭の上っ。」


「ん?」


太郎と呼ばれた少年が頭の上をさするが、何も突いていない。


そんなことをしている内に魔法陣は光となって霧散した。


「何も付いて無いぞ?」


「いや・・・そうじゃなくてだな・・・・・

 いや・・・・俺の目の錯覚だろう。すまんな。」


そう言うと少年は目頭をほぐすようにしながら自分の席へ戻る。


「うん?ああ、疲れてるならゆっくり休めよ。」


そして太郎は考える。最近物が無くなった時の出来事を。



---放課後---


[ミステリー研究会]


「お邪魔しま~す。」


太郎が部屋に入ると、3人の部員がいる。


1人はPCをいじりながら、視線を入り口に向け、入ってきたのが太郎だと知ると、すぐにPCに向き直った男性。


1人は雑誌「MUー」を読んでいたが、太郎が入ってきたことに気づくと、お客用のマグカップを持ってコーヒーを入れに行った女性。


1人はオカルト小説を読んでいたが、太郎を見つけると、「太郎今日はどうした~?」といって出迎えた男性だ。


太郎は出迎えてくれた男性の机に腰掛けると、


「なぁ、次郎さんさ、最近良く物がなくなるんだけど、ミステリーの知識で分からない?」


問いかけられた次郎は、


「太郎、無くなった時、物を何処においていたか覚えているか?」


「ああ、無くなったのは大抵直前まで盛っていたり、身につけていたものばっかりなんだよ。

 例えばケータイのストラップとかさぁ。

 そうそう、このストラップ無くしたんで、新しくしたばっかりなんだよ。」


そう言って太郎は携帯を取り出すと同時に、虚空から現れた手が太郎の手を掴もうとして、空を切った。


その手には携帯のストラップが握られ、手と一緒にストラップが虚空に消えて行った。


「あーーーーーー、着けたばっかりなのに、もう無くなってる・・・」


「いや、太郎それよりさっきのっ。」


次郎は顔を青くしつつ、さっきの手が消えた場所を見ている。


「次郎さん、聞いてくださいよ、ストラップ無くしたから、姉ちゃんのコレクション譲って貰ったばかりなんですよ・・・」


「太郎先輩っ、さっきの何ですかっ。」


コーヒー片手に女生徒が駆け寄ってくる。


「いや、さっきのって言われても・・・」


「これっ、私のストラップです、これつけてみてください。」


女生徒は興奮して太郎にストラップを渡す。


リラックスした熊のストラップだ。


「おぉ、悪いね?

 ありがたく着けさせて貰うよ。」


そう言ってストラップを着けるが、今度は何も起こらない。


「部長、今度は何も起こりませんでしたが、さっきの見ましたよねっ。」


「ああ、あれこそまさしくオカルト現象だ。まさかこの目で見るとは・・・」


2人は手を握り合い涙を流している。


「はて、なんか立て込んでいるみたいだし、お暇するかね。」


そう言って先ほど女生徒が持ってきたコーヒーを一気飲みすると、


「忙しい所邪魔したね。また今度相談に来るわ。」


と言って部室を後にしたのだった。




帰り道を進む彼にも、不可思議な現象は続いた。


靴の紐がほどけたとしゃがみこんだ所へ、頭の有った位置へ魔法陣が浮かんでいたのは当然。


水溜りと思って避けて更に進むと、後ろの方で避けられた水溜りが影のように消えていったり。


暴走したトラックを皮切りに、鉄球、乗用車、ダンプカー、クレーン車、果ては消防車までが太郎にぶつかりそうになるが、運よく回避する。


ゆがんだ壁から、色の違う壁、影のように真っ黒な壁、『見るな』と張り紙された穴のあいた壁もあったが、太郎は1つとして触らずに家路につく。




家に着いた太郎は、玄関を開けようとする、隙間から虹色の光が漏れていたが、目の前を通りかかった猫を見つけ、猫の後を追いかけていく。


「お~い、ちょっともふもふさせてくれれば煮干やるからおいで~。」


猫は太郎と一定の距離を置き、太郎が近づくと一定の距離を離れる。


まるでどこかに誘っているかのようだ。


「ちぇっ、撫でさせてくれないなら、仕方ない。帰るか・・・」


太郎は追いかけるのを諦めて帰ってしまった。


猫は帰らせてたまるかっ、とばかりに太郎の足元に駆けていく。


「隙ありっ。」


太郎はそのチャンスを狙っていた。


目が光ると、高速のような速さで足元によってきた猫を拾い上げ、思う存分もふもふを堪能した。


「ふぃ~、久しぶりに堪能した。またもふらせてくれよな。」


30分はたっただろうか。


もふもふを堪能した太郎は猫に煮干をあげると、家に引き返していった。


太郎の姿が見えなくなった頃、猫のいた場所には頬を紅潮させた少女が地べたに座っていた。


「ううう、もうお嫁に行けない・・・」




家に戻ってくると、玄関の隙間から漏れていた光はもう閉じてしまっている。


「ただいまー。」


家の中から「おかえり」の言葉は響いてこない。


「母さん、今日も執筆中か。

 差し入れでも作ってやるか。」


太郎はそう言うと、冷蔵庫の中から卵とごはんとケチャップとミックスベジタブルと鳥ササミを取り出す。


フライパンに火をいれ、十分に温まった所で油を均一に引き、鳥ササミを投入。


塩コショウをまぶし、軽く火を通した所で、鳥ササミを取り出す。


次はご飯をいれ、ある程度炒めたところへ、レンジですこし解凍したミックスベジタブルと鳥ササミを入れる。


ケチャップと塩コショウで味付けし、


「これぐらいでいいかな・・・っと。」


味見をした上で皿に盛り付ける。


キッチンペーパーでフライパンの汚れを取り除き、次は卵焼きに取り掛かる。


十分に熱したフライパンへ油を引き、そこへ十分といだ3つ分の卵を入れる。


ジュワァー


卵の焼ける音をBGMに5秒ほど待ったところでフライパンの中身をかき混ぜる。


しっかり焼けた部分と生の部分が交じり合って程よい感じになってきた。


フライパンの柄を手で叩きながら、中の卵焼きをふんわりと包んでいく。


「ほい、できあがりっ。」


卵を慎重にケチャップライスの上に載せ、包丁で卵を開く。


「ひまわりオムライスかんっせいっ。」


出来上がったオムライスの上に、ケチャップで文字を書いていく。


「ば・・・ば・・・あ・・・っと」


それを持って2階にある、母の書斎に向かう。


「母さん、差し入れ作ったよ、どうせ昼食って無いんでしょ、きちんと食っておきな。」


「おーう、ありがとう。」


こもった返事が聞こえると、



ピンポーン



玄関が鳴ったので1階に下りようとしたところで、階段から滑り落ち・・・・・なかった。


とっさに掴んだ手すりのお蔭で太郎は落ちなかったのだ。


「っぶね~。あやうく大怪我する所だった。

 最近多いし、気をつけないとな・・・」


「気をつけなよ~。」


階段の下ではぽっかりと空いた空洞があったが、太郎が落ちてこない為、そのまま閉じていった。


太郎は足元に気をつけつつ階段を下っていった。



玄関を開けると、そこには美少女が立っていた。


先ほど猫のいた場所にいた少女だ。


「あのっ、先程はありがとうございました。」


「先ほど?」


太郎は心当たりを探ったが、思い当たる事は無い。


「はいっ、そのお礼に」


「気にしないで、それじゃ。」


バタンッ



心当たりの無い太郎は遠慮なくドアを閉じた。


「ちょっ、お礼っ・・・お礼をさせてっ」


少女はドアの前でそう言うと、パンパンとドアを叩いた。


「悪いが、心当たりは無い。

 それ以上しつこくするなら警察を呼ぶぞ。」


「いえ、私はさっき煮干を貰った猫で、煮干のお礼にっ。」


太郎は顔が真っ赤になる。


さっきの様子を見られていたのだろうか・・・見た事も無い少女だし、相手にしなければそのうち帰るだろう・・・

と思ったかは定かではない。


「なら今お礼は言って貰った。それで十分だからさっさと帰れ。」


「ちょっ、せめて、顔を合わせてお礼を・・・」


ドアをそっと開けて、太郎は顔を覗かせる。


「あっ、先ほどはっ」


だが、少女が言い終わる前に太郎はドアから顔を戻すとドアを閉めた。


「これで十分だろう。これ以上いるのなら警察呼ぶからなっ」


恥ずかしさもあったのだろう、かなりぶっきらぼうな口調でそういった。


「ううう・・・はい、失礼しますぅ・・・」


それだけ言うと、少女は去っていった。


「ふぅ、おちおち猫ももふる事が出来ないな・・・

 やはり、飼い猫を母さんに頼んでみるしかないか。」


太郎はすでに少女の事は忘れ、どうすれば猫を飼うことを母さんに許可して貰えるか考え始めたのだった。



夜。太郎はいつも予習復習で2時間は勉強に時間をとっている。


部屋には解き終わった参考書が山と積まれていた。


「・・・・・・・ふぅ、今日はここまでにしておくか。」


太郎は参考書を机の引き出しを開け、その中にどさどさっと入れていく。


「ぐえっ」


何か聞こえた気がして引き出しの中を見てみる。


そこには何冊も入れたはずの参考書が何故か5冊しか残っていなかった。


「ぐぁ・・・・また無くなったか。

 まぁ、今回は解き終わった参考書だからそれほどの被害じゃないが・・・」


頭をすこし掻いて


「また母さんに怒られるんだろうな。はぁ・・・・」


と俯いてしまった。


「しゃぁないっ、風呂にでも入って寝るか。」


気を取り直し、着替えを持って風呂へ向かう。




シャカシャカシャカシャカ


太郎は風呂場で頭を洗っている。


その横でバスタブから泡が浮かんでいる。


ゴポッ・・・ゴポポッ・・・


そしてバスタブの中から手が現れ、太郎の肩を掴もうとした。


「あ、母さん?悪いね、すぐに出るから待っててくれる。」


それだけ言うと、太郎は肩に乗せられた手を払いのけ、頭をすすぎ始める。


払いのけられた手は光の粒となって消えていった。




風呂から出た太郎は2階の書斎の前に向かうと、


「母さん風呂でたから、入るならどうぞ~。

 俺は先に寝るね。」


太郎はそれだけ言うと、自室に戻っていった。




「これ起きぬか。」


「ん~、なんだい?」


目の前には、昼間あった少女が成長するとこんな感じになるだろうと思われる女性が立っていた。


「我は異世界「ファブ・リーズ」を見守る女神、ハナーコと申す。」


「ん~、変な夢だな。」


「夢じゃが、夢ではない。今はお主に用事があり、夢を貸して貰っておるのじゃ。」


「んあ、それでハナコさんが何の御用で?」


「それは、お主にファブ・リーズを救って貰うため、勇者として行って貰いたい。」


「勇者って、ゲームのあれ?」


「そうじゃ。お主には力があり、素質もある。

 そなたなら世界を救い、英雄となることができるであろう。」


「それって、他の人じゃ駄目?」


「我はおぬしを選んだのじゃ。」


「あっそ、じゃ、他の人選んで。」


「なっ・・・」


「んじゃ、眠いんで・・・・ぐぅ・・・・」


「ちょっ、待て。起きんかー」


叩いてもつねっても、耳元で大声でわめいても太郎が起きる気配は無い。

30分はあれこれやっていたが、そのうち疲れたのか、少女の姿になって半べそかいていた。


「もう嫌ぁ・・・。

 なんでこの人間召還できないのぉ・・・

 ・・・・うぐっ・・・・ひっぐ・・・・ぐすっ・・・

 可能な召還全部試したのにっ・・・、全部蹴られちゃうしっ・・・・

 寝てるところ無理やり召還しても自力で魔法陣壊しちゃうし・・・・

 どうすればいいのよぉ~。

 もうやだぁ~・・・ひっぐ・・・えっぐ・・・ぐすっ・・・」


少女がそのまま太郎の夢の中で1時間は泣いていただろうか。


隣に唐突に男性が光とともに現れた。


「ちゅっすちゅ~っす。

 ハナーコちゃんどしたのぉ~?

 泣き顔なんて、キャーワーイーイーんですけど~?

 もしかして、彼にふられちゃったぁ~?」


少女は男性を見ると、驚愕のあまり、泣き止んで直立不動になった。


「しゅっ・・・主神様っ。

 ほっ・・・本日はごきげんうるわしくっ。

 わちゃ(ガリッ)・・・いたひ・・・」


「ハナーコちゃん、そんなにキンチョーしてちゃマジキャワイイ顔がダーイーナーシーだーぞー?」


「はっ・・・はひっ。」


「マジ俺でよければ相談に乗る系?言いたい事いっちゃいなー?」


「おっ・・・お願いしましゅっ(ガリッ)」


ハナーコはチャラ男神に今までのことを説明し、どうすればと言う相談をした。


「うっわ、マッジ?そこまでやっといて全部ディスるなんて、マジパネェ~。」


「そうなんですよ、彼じゃないと駄目なんでしゅけど、もう手がなくなっちゃって・・・」


「そんなん簡単っしょ。」


そう言って、指をパチリッと鳴らすと太郎の姿が消える。


現実の太郎も家ごと消え、そこには更地となった元太郎の家だけが残った。


「ショーネン?だけじゃなく、家ごと召還しちゃえばマジオッケーっしょ。」


少女は目を見開くと、


「さっ・・・さすが主神様っ。まじぱないっす。」


「あ~と~は~。

 話を聞く限りじゃ、この世界と太郎ちゃんの結びつき強い見たいだっしぃ~、

 こっちの世界が太郎ちゃんを引き戻さないように、ハナーコちゃんを只のチャンネーに変えて魂結びつければ、ファブ・リーズ側に傾くっショ。

 うっわ、オレマジ天才っ。」


「えっ・・・ちょっ、主神様?」


「じゃ、ハナーコちゃん、しばらく人生楽しんでキテネー。」



「ちょっ・・・主神様っ・・・・何でこんなのばっかりぃ~」


「あ、魂結び付けちゃ、太郎ちゃんマジこっちの世界には戻ってこれなくね?

 まぁ、ハナーコちゃん美人だったし、あっちの世界も悪くないっショ。」




そして異世界ファブ・リーズでは女神の神託を受けた、勇者太郎とその従者、花子の物語が始まるのだった。


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