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第一章「義賊にして海賊の女]

騎士は一晚船を漕ぎ続けていた。やがて訪れた夜明けと共に陸地が見えてきた。友国の帝国と思った騎士は、砂浜を目指して船を進めていった。浜の手前まで順調に船は進んでいた。

「あれは…!」

だがその時、あきらかに船ではない音が間こえた騎士は船の上で平たく伏せた。

その直後、彼の真上を砲弾が横切って、すさまじい轟音を立てながら海へと落ちていった。

「一体どっから……」

「くそお!外したあ!」

騎士が周りを見ていると、目の前に騎士の船なんかは比べ物にならない程の大きな船が現れた。そして船の先端にはドクロのエンブレムが付いていた。

「まさか、帝国の海域に海賊が潜んでいたのか?」

「帝国だあ?あたし達はヘイムダル王国の海を支配する海賊よ!」

先程砲弾が外れて悔しそうにしていた女海賊が前に出てきて言ってきた。

(ヘイムダル王国……てことは俺は祈祷の帝国とは反対の方角に来てしまったのか。 )

「ていうか、このあたしの砲撃をかわすとは、あんた悪運は強いようね?」

アルバートが考えていると女海賊は悪態をついてきた。

「お前がリーダーか?」

「ご名答!へイムダル王国の海を支配し、邪悪な王からこの美しい海を守るオーシャン海賊団の偉大なるリーダー、ルナー船長とは、あたしの事よ!」

ルナーという女は船の上から青い髪を風でなびかせなからオレンジ色の瞳で騎士を見下ろしていた。

「何なのか知らないが、通してくれ。」

言ってる事かめちゃくちゃだと思いながらも、騎士はルナーに訴えるが、ルナーはチッチッチッと言いながら人差し指を左右に動かした。

「そうはいかないわ。その飾りからしてあんた、騎士でしょ?」

ルナーは騎士が鎧に付けている紫、赤、青色の三色のブローチを目ざとく指さして言ってきた。騎士は恐れることなく間き返した。

「だとしたらどうする?」

「もちろん!」

ルナーは指を鳴らすと、船員に大砲を用意させ、騎士に向けてきた。

「オーシャン海賊団の名の下に、海の藻屑にしてあげるわ!」

「は?おい待て!!」

騎士の静止を聞かず、 ルナーの「撃てえ!」という号令と共に大砲が騎士の船に狙いを定めて砲弾を放ってきた。砲弾は確実に騎士に向かって飛んできていた。

「ならーか八か……!」

次の瞬間、砲弾が船に直撃して爆発した。大破した船からは煙が上がっていた。

「フッフッフ……オーシャン海賊団の力を思い知ったかしら?」 騎士も死んだと思い、勝利に酔いしれるルナー。だが煙の中から光る物が見えた。 宝かと思いルナーが顔を覗かせたその時だった。突如光る物がルナーの方目掛けて飛んできた。

「危なっ!」

ルナーは咄嗟にしゃがんで回避した。飛んできたのは鉤縄だった。かわされた鉤縄はそのままルナーの船の端に引っかかった。

「何なのよ一体!」

「船長!何か来ます!」

「え?」

ルナーが顔を上げたと同時に今度は鉄の剣が煙の中から迫ってきた。だがルナーはこれをサーベルで防御した。剣の主は今の砲撃で死んだと思っていた騎士だった。

「あんた!今ので死んだハズじゃ!?」

「ああ。ボートに鉤縄が無ければ爆散していたな。」

余由で話す騎士。ルナーは騎士とつばぜり合うのに必死になっていた。

「変な小細工使いやがってえ……」

ルナーはサーベルを引いて足を前に出して騎士に蹴りを放った。騎士はそれを予測して素早く後ろに下がった。周りの船員が手出しできない緊迫感に包まれている中、海賊船の上で騎士とルナーは互いに剣を向けて様子を伺っていた。

「隙あり!」

先手を打ってきたのはルナーだった。ルナーは積んでいた木箱を踏み台にして騎士の頭目掛けてサーベルを振り下した。

「くっ!」

騎士は腰に帯刀していた剣を出して受け流した。しかしルナーは慌てる事なく距離を取った。

「へえ。あんた身分だけの奴かと思ったけどいい動きするじゃん?」

ルナーは隙を作ろうと騎士を挑発した。しかし騎士は動揺する様子もなく二刀の剣を構えてルナーの次の動きを警戒していた。その余由そうな態度が気に障ったのか、ルナーは顔をしかめた。

(しょうがない。除見てあたしのとっておきをお見無いしてやる!)

ルナーは騎士に見えないように袖の中に隠している銃に火薬を仕込んでいた。どうした?かかって来ないのか?」

「アンタと違ってあたしは正々堂々がモットーよ。」

ルナーは鼻で笑うと、騎士は態度を変えずに剣を向けていた。

「はあっ!」

真っ先にルナーがサーベルを構えて走り出した。それを予測していた騎士は右手の剣を前に出して踏み込んだ。

(斬り上げるっもりね。けど、先にあたしかアンタに風穴空けてやるわ!)

そして騎士が顔を上げた時にはルナーの袖の中から銃口が覗いていた。

「せ、船長!」

ルナーが引き金を引こうとした時だった。船員の一人が慌てた様子でルナを呼びに来た。呼ばれて調子が狂って引き金から指を離してしまった。

「もう。何よ!」

呼んできた船員にルナーは怒った声で反応した。

「か、怪物が現れました!」

「はあ?どうせ大ダコでしょ?いつもみたいに弓とバリスタで仕留め……てうわっ!」

ルナーが喋っている途中、突然船が大きく揺れ動いた。

「な、何!?」

ルナーが端に掴まって驚いていると、船体を得体の知れない何かが掴んでいた。そしてそれはゆっくりと顔を見せてきた。

「何よ・・あれ・・?」

ルナは驚きのあまり絶句した。船体を掴んでいたのは、どす黒く染まり、邪悪な魔力を纏った巨大なタコの魔物だった。

「いつものタコかと思ってたんですが、よく見たらいつものより体格かあって、吐いてくる墨は何か……」

べちゃ。船員達の目の前に黒い液体が飛んできた。それは船の木板を腐食させ、墨と呼ぶにはおぞましい物体だった。船員達が恐怖で混乱するなか、騎士はタコの怪物を冷静に観察していた。

(この体格にこの邪悪な魔力…コイツまさか…)

「とにかく迎え撃つわよ!撃てえ!」

騎士が観察していると、ルナーが船員達に号令をかけた。船員達は一斉にバリスタと大砲を放った。しかしさっきみたいな爆発音は鳴り響く事は無かった。刺さるはずの矢は弾力のある足に弾かれて、爆発するはずの砲弾は足裏の吸盤で受け止められていた。そして径物は砲弾を掴む足を上げてきた。

「え?まさか……」

ルナーは嫌な予感がした。そして的中させると言わんばかりに怪物は砲弾を投げ返してきた。

「みんな避けろ!」

ルナーの号令を聞いた船員達は一斉に防御態勢をとった。 次の瞬間、落ててきた砲弾が船の床を貫いた。更にはルナーの立っている床も崩れて、彼女は足を踏み外してしまった。

「キャァァっ!」

そのまま海に落ちていくルナー。しかしその直後、何かが彼女の腕を掴んだ。顔を上げると、騎士がルナ―の腕をしっかり掴んでいた。

「あんた、何で…!」

騎士は何も答えないままルナーを引き上げると、怪物と対峙する形で剣を向けた。怪物も騎士の敵意を察知し、攻撃意識を騎士に向けてきた。

「俺がやつの足を斬り伏せていく。お前らはいつでも大砲を放てる準備をしといてくれ 」

「いや何言ってんのよ!バリスタか刺さらないんだから刃なんか通るわけないでしょ!」

ルナーは騎士の言葉を否定したが、騎士は返答を待たずに怪物に向かって走った。怪物は騎士を見て手前の足を指のようにしならせてふりかざしてきた。そして径物が足をふり下ろしてきたところを騎士が剣を両手で構えて、ふり下ろされた径物の足に剣をふり上げてて一刀のもと切断した。切り落とされた怪物の足は船の上で跳ねていた。怪物に傷を負わせたのを見てルナー達は驚きを隠せなかった。その間も騎士は径物に立ち向かっていたが、勇ましく戦っている騎士の手は震えていた。

(やはり邪悪な魔力が溢れている……)

騎士は恐怖に駆られながら戦っていた。それは目の前にいる径からではなく、怪物から溢れている邪悪な魔力からだった。邪悪な魔力に触れる度に騎士の体が拒絶反応を引き起こして言う事を間かなくなった。そして その隙を経物が見逃すはずがなかった。

「しまった!」

突然構から怪物の足がかいくぐるようにに襲いかかってきた。騎士は回避が間に合わず、径物の突き攻撃をもろに受けてしまい、後方へぶき飛ばさきてしまった。

「ちょ、ちょっと!!」

騎士か倒れるを見てルナーは引きながらも倒れた騎士に声をかけた。すると崩れた木箱の中から騎士は起き上がった。

「不意を突かれたか…だが次はくらわん!」

そう言うと騎士は剣を構え直し、態勢を整えて、怪物に向かって再び走り出し言。怪物はそれに反応するように邪悪な魔力で鋭くした足を走ってくる騎士に向けて突き刺さんとばかりに突き出してきた。

「もうくらわんと言ったはずだ!」

それを予測していた騎士は踏み込むと、迫り来る怪物の足を再び一撃で切断した。足を二本も失った怪物は痛みでバランスを崩し、残りの足で船にしがみついていた。

「今だ!」

騎士の声を聞いたルナーは戸惑ったが早く判断しなければ怪物がバランスを立て直す危険もあった。

「えーい!撃てえ!」

もうどうにでもなれと思ったルナーは大砲の前に立たせていた船員達に号令をかけて大砲を一斉発射した。放たれた砲弾は切断された怪物の足の傷口に見事に命中した。傷口が爆発して、傷が裂けて怪物はうめき声を上げていた。

「よし、そこだ!」

好機と見た騎士は鉤縄を怪物の傷口に投げ刺した。そして痛

みで足を動す反動を利用して、騎士は怪物の頭部へ飛び移った。ぬめりがあるものの、傷口にめり込んだ鉤縄で落ちないようにバランスを取っていた。そして狙いを径物の紫色の目に定めた。

(恐らはここだ!)

径物が頭を上げたと同時に、騎士は剣を怪物の目に抉るように刺した。苦痛のあまり暴れる怪物。しかし騎士は慌てることなく剣もろとも目玉を抉り出した。

「やはり、これが力の源か!」

紫色に光る禍々しい目玉を抉り出すと、騎士はもう一振りの剣

を抜刀するや否や怪物の目玉ををの一刀両断した。すると目玉を切り裂かれた怪物は今まで以上に暴れ出した。

「だあ !あんた何しでかしたのよお!!」

パニックになりながら船が壊されてくことに怒るルナー。だが径物が暴れたのも一瞬で、怪物は突然力が抜けたように動きが鈍くなり、もがき苦しみはがら船から落ちていき、海の中へと沈んで消えていった。

「た、倒したの?」

海を覗そ込みながらルナーは言った。

「魔力の源だったあの目玉を壊したからな。もう上がってくる事もないだろう。」

騎士は着地してから答えた。

「ねえ、あんたもしかして、ああいう化物とは戦い慣れてるの?」

「慣れてはいない。だがこれ以上の被害を出すわけにもいかなかったからな。」

「……」

「どうした?」

自分の顔をじー見ているので騎士が困惑していると、「よし、決めた!」と大きい声で指さしてきた。

「あんた、今日からあたしの部下になりなさい!」

「……何?」

突然の提案に、騎士は変な声を出してしまったが、かまわずルナーは話を続けた。

「動きを見るからに、あんたああいう化物を相手どるのは得意なんでしょ?」

「いやだから、俺はああいった類を倒すのは初めてなんだ。」

「ふっふっふ……あんた自身がそう思っていても、並の人間とは比べものにならない力を持っているのはお見通しなんだ

から。」

いきなりそんな事を言い出すので騎士は反応に余計に困った。

「急に何を言っているんだ。それに俺は賊の仲間になる気はないぞ。」

「あーそっかー。」

棒読み気味に言うと、めちゃくちゃになった船とダメになった積み荷を見周した。

「手に入れた積み荷も船の一部もダメになっちゃったなあ。あんた結構良い装備してるし、船の修繕費用くらいはどうにかなりそうかなー?」

「は?おい待て! 原因はあの怪物だろ!俺は怪物を倒したじゃないか!」

「確かに怪物倒してくれたのはあんただから感謝するのが当たり前だろうけど……あたし達は海賊だよ?」

ニヤリと笑うルナー。気づけば他の船員も武器を持って騎士を包囲していた。自分が乗っていた船が壊された以上、騎士の選択肢は一つしか無かった。

「……分かった 。お前に付いてくよ。」

騎士の返答を聞いたルナーは手を上にあげて、船員達に武器を下ろさせた

「そうこなくっちゃ。なかなかアンタも分かってるじゃない?」

自分の思い通りになったからか、ルナーは嬉しそうだった。

「よっしゃ、これで大砲が無くなった分の戦力確保~♪」

「あんまり期待しすぎるなよ。」

騎士は忠告するが、ルナーは聞いていなかった。そしてルナーは「あ、そうだ!」 と思い出したように騎士に向き直った。

「そういえばあんた、各前はなんていうの?船長たるもの、部下の名前は覚えておきたいからね!」

今まで聞かれなかった質問。そして騎士はルナーの方を向いて名前を名乗った。

「アルバートだ。そう呼んでくれればいい。」

「オッケー!そんじゃよろしくね、アルバート♪」

こうして騎士アルバートは、不本意ながら女海賊ルナーの部下になるのだった。だがこれは彼の物語の始まりにすぎなかった。


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