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妖刀龍輝丸

挿絵(By みてみん)



来花らいかは床の間の前でひざを抱えて座っている。

つまり龍輝丸りゅうきまるの前だ…


来花はひとり、部屋の中で床の間の刀に向かって話しかけた。


「おめぇ、龍輝丸だか?」

『ん?そうだ。』


「妖刀って喋るんだか?」

『他の妖刀は知らないが、俺様は喋る。』


「なんでおめぇだけ喋るんだ?」

『さぁ…』


「さぁって!おめぇ何で自分が喋れるのか分かんねぇのか?」

『じゃあ聞くが、なぜお前は自分が喋れるのか知っているか?』


「……知らねぇだ。」

『だろ?俺も知らねぇ。』


「なんであたいには、おめぇの声が聞こえるんだ?」

『さぁ…』


「それも知らねぇのか!」


『でもな、一つ言えることがある。』

「なんだべ?」


『百年ほど前に一人だけ俺様の声が聞こえるヤツがいたんだが…』


「…で、それがどしただ?」


『そいつだけは俺様を召喚できた。』




「…なんだって?」


『つまりお前なら、俺様を召喚できるかもしれねぇってことさ。』

「ほんとだべか!」


『あぁ、やってみるか?』

「やってみるだ!」


『それとな…』

「なんだ?」


『俺様はお前よりずっと年上だ!』

「としうえ?」


『俺様のことは、龍輝丸様、と呼べ!』




「で、どうすんだ龍輝丸?どう修行すればいいだ?」

『龍輝丸「様」だ、お前頭悪いのか?』

「あたいはお前じゃねぇ、来花だ!」


『……まぁいい、来花、修行はいいから、とりあえず俺様を…刀を鞘から抜け。』

「さや?あぁこの筒か…」


『そうだ、お前ホントに素人だな。』

「お前じゃねぇ、来花だ!龍輝丸は頭悪いのか?」


『様だ!ったく…何度も言うの嫌になってきた…なんでこんなヤツに俺様の声が聞こえたんだか…』


来花は刀を手に持った。

「刀って重てぇんだな、ずっしりしてるだ。」

『今日は別に振り回す必要はないからな、鞘から抜くだけだ、出来るだろ?』


右手に刀の柄を、左手に鞘を持ち、ゆっくり鞘から引き抜くと、銀色に輝く刃が出てきた。


その美しく光る刃は、そのままで部屋の空気を真っ二つに切ってしまいそうなくらい、鋭利で研ぎ澄まされていた。


「す、すげぇだ…あたいの包丁とは雲泥の差だべ…」

今まで見たどの刃物も、龍輝丸の前ではおもちゃに見えた。


『いいか来花、妖刀は鞘から抜かないと具現化出来ない、それはどの妖刀も同じだ、覚えておけ。』


「わ、分かっただ!」


『来花は刀に触るのは初めてだろ?』


「か、刀は初めてだが、包丁なら毎日使ってただ…」


『そうか。』


「な、なんだべ…」


『いや、別に…』


「やっぱ、包丁じゃダメだか?」


『まったく違う物だが、やいばで切るってことは同じだ。役には立たないが、使ったことがないよりはマシだ。』


「…どういう意味だべ?」


『今までの技術は忘れろ、でも自信は無くすなってことだ。』


「わ、分かっただ…」


『ホントに分かったのか?』


「分かっただよ。」


『じゃ、何が分かったか、言ってみろ。』


「え?」


『どうした、分かったことを言うだけだ。』


「それはだな…えっと…」


『ほら分かっちゃいない。』


「これから…言うとこだべさ…」


『じゃ、言ってごらんよ?』


「んと…つまり、刀の使い方はちゃんと一から学ばなきゃいけねぇけど、今まで自分がしてきたことも大切だ…みてぇな感じだべ…」


『…!』


「どうだべ?」


『ま、まぁそんな感じだ、分かってるじゃねぇか…』


「えへへっ!褒められたべさ…」


『じゃあ、次いくぞ、俺様を召喚してみろ!』


「え、ここでだか?」


『どこでやるつもりなんだよ…』


「いやだって、昼間見た妖刀はでかかったべさ!部屋の中でやったら屋敷壊しちまうべ!」


『俺様はあんなに無駄に大きくないから大丈夫だ。』


「なんだ、龍輝丸はちっちぇえのか。」


『なんかムカつく言い方だな!』


「で、どうやるだ?」


『俺様が出てくることを念じろ!そして叫べ!』


「叫ぶ?なんて?」

『何でもいい!何か掛け声を…』


「何でもいいのか?呪文とかいらねぇだか?」


『あぁ、呪文も理屈は同じ、要するに合言葉だ。来花が強く念じて、俺がそれを理解すればいいんだ。とにかく強く念じて何か叫べ。』


「分かった、じゃあ言うぞ。」

来花は布団の上で正座して龍輝丸を手に持った。


「龍輝丸でてこい!」

『それ、そのまんまだな…』


グワァーー


刀が輝き、その輝きは拡散されたあと一箇所に集まり、それが徐々に形となっていく。


「うわ!」


来花の目の前に一人の男が現れた。


白く長い髪、冷たく切れ長の目と鼻筋は、今まで見たこともないくらいに端正だ。

肌は青白く、着物も白い、

中でも目立つのは頭に生えた龍のツノ。

全身がうっすらと光っているようにも見える。


片膝を立てて座っている。

そして自分の両手を見つめながらつぶやいた。

「こいつ…ホントに俺様を召喚しやがった…」


「こいつじゃねぇ!あたいの名前は来花だ!」






「なぁ龍輝丸…」

「なんだ?」


「龍輝丸って、龍だって聞いたぞ?」

「そうだが?」


「どう見ても人だべ!」

「ちゃんとあるだろ?」


龍輝丸は頭のツノを指さした。


「鹿のツノ?」

「龍のツノだ!」


「龍輝丸は妖刀なんだべ?強えぇだか?」

「何と比較してだ?」


「湖の主だ。」

「ぬしだと?」


「あぁ、退治できるだか?」

「主を?」


「あぁ、そうだ。」


湖の主?

こいかなにかか?

なぜ魚を退治したいのだ?

まぁ相手が魚なら…


「楽勝だな!」


「ホントか?」

「あぁ、楽勝だ!」


「でも…」

「なんだ!」


「なんかちっちゃくて弱そうだべ…」

「小さい?どこが!」


「昼間見た虎と蛇はでかくて強そうだべ!それに比べたら、ちっちぇだよ…」


「あんな犬畜生と同じにすんな!」


「犬?虎と蛇だべ…」


「ものの例えだ。」


「龍輝丸は、あんなあやかしと闘っても勝てるんだか?」


「まぁ、ちゃんと準備すれば、俺様は誰にも負けねぇな。」


「ほんとか龍輝丸、すげぇだな!」

来花は目を真ん丸くした。


「あとあれだ龍輝丸、妖刀でどう操るかを教えてほしいだ!」


「操り方?」


「今日見た妖刀使いの弟子達は、刀で妖魔を操ってただ。」


「あんな事は必要ない。」

「え?」


「そもそも来花は刀を扱ったことがないんだろ?あぶねぇから振り回したりするな!怪我するぞ!」


「か、刀ってあぶねぇだか?どうしたらいいんだべ?」


「俺が具現化してる時は、刀はこの鞘に入れてしまっておけ。」

龍輝丸は自分の腰から刀のない空の鞘を渡した。


「ちなみに元の鞘に入れたら俺様は消えるからな!間違えるなよ!」


「分かっただ。でもそれだと、どうやって操るんだ?」


「俺たちは会話できるんだから、口で言えばいい。」


「言えばいいって、あたいが龍輝丸に、右から行けー!とか言うんだか?」


「馬鹿言うな、お前の言うことなんか聞かねぇよ…」

「は?」


「言う事を聞くのはお前、来花の方だ!」


「へ?」


「来花は俺様の言う事を聞いていればいい。」


「い、嫌だべさ!なんで龍輝丸の言うとおりにしなきゃいけねぇんだべ…」


「歳上の言うことは聞くもんだ!ついこないだ生まれたばかりの小娘のくせに。」


「こないだじゃねぇ、14年前だ!」

「こないだじゃねぇか…」


「お、おめぇ…龍輝丸は何歳だべ?」

「俺様か?俺様はなぁ………忘れた。」


「はぁ?自分の歳を忘れただか?」


「ここ百年近く誰とも喋らず、ずっと刀のままだったしな、退屈すぎて忘れたよ。」

「ひゃく、ねん!」


「少なくとも来花よりはずっと年上だ。」


「刀のままだと退屈なんだか?」

「刀のままじゃ退屈だ。」


「百年間つまらなかっただか?」

「あぁ、つまらなかった。」


「あたいが来て嬉しいか?」


「…なにが言いたい。」


「龍輝丸は年上なのは分かっただ、ちゃんと言う事は聞くだ、でもあたいの話しも聞いてくれ、あたいが嫌になって龍輝丸を手放したら、またずっと刀のままだぞ!」


ち…痛いとこ突いてきやがった…


「あたいは湖の主を退治したいんだ、ただそれだけだ。龍輝丸の言う事もちゃんと聞くだ、だからおねげぇだ!湖の主を退治するの、手伝ってくれろ!」


来花は龍輝丸に向かって土下座した。


来花がここに来た理由はそれか?

鯉なんて誰にでも退治できそうだが…

まぁどのみち、ここから出ていくには来花が必要だし…


「いいよ、鯉を退治してやるよ。」


「ホントだべか龍輝丸!」

コイ…?




つづく


突然現れた、喋る妖刀龍輝丸

湖の主退治を手伝ってくれるというが…

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