第94話 動向
(イカロス魔導法国国境付近)
「イカロス、いやイカロス上級伯爵か、国境付近の魔獣の討伐という名目で、演習をかねた位置付けで全軍を動かしたが、どうやら動かせるのはここまでのようだな」
「アイオリア子爵、隣国から横やりが入るとは思わなかったよ。
人間界の領地とは面倒なもんだな」
「それは天界でも同じことだろうよ。
ただ区域があるだけだ、どこも似たようなもんだろう」
「それはそうだな。
だが、どうする奈落のダンジョンはここからかなり遠い。
250キロはある地域だと聞いたが、それに獣神の動向が気になる。
すでにあのローパーは奈落のダンジョンを出て行動しているだろう。
そうなると奴らがぶつかるのは必然だ」
「奴らのぶつかりで獣人界に異変があればこちらとしても適当な理由をつけて軍を動かせるので良いのではないか。
斥候は出しており、獣人界の様子は逐一監視されている。
おそらくだが獣神が負けるだろう。
あのローパーは特殊個体だ。
魔王を従えていた獣神程度では相手にもならんだろうな。
ここで演習がてら待って居ようではないか。
それにこちらには、良いものがある。
モンスターを捕らえられると言う罠がな。
人間界にモンスターボックスなるアイテムが存在しているとは私も知らなかった。
どうやら魔王の軍勢を迎え撃つ為、研究されていたモノらしいな。
近年になってようやく完成させたらしい。
特殊な空間魔法を使ってモンスターをこのボックスの中に収納してしまうとはな。
面白い発想だな、私も感心してしまったよ」
「このモンスターボックスを使ってローパーを収納してしまえばいいってことだな。
案外楽に倒せてしまうかもしれないぞ。
ただ問題は罠が大掛かりな魔法陣を組んで捉えなければならないてっいう事か」
「罠に掛かればこっちのものだという事だな。
ここに罠を張って待ち伏せるという事でもいいのではないか」
「そうだな、近々動きがあるのは確かだ。
管理者も見ているだろう。
そうなるとここへローパーをよこす可能性も出てくる。
適当にここらへの魔獣狩って待ち伏せしてもいいと言うわけだ」
「とりあえず斥候の情報を待とうではないか。
情報戦も戦争の内の一つだ。
ローパーはアイテムボックスの事知りもしないだろう」
「あはは、知っていたらおかしいと言う事だな」
「罠を張りこちらにこさせて捕まえる。
いかに犠牲がでようが罠に掛かればこちらのもんだ。
あとは問題なく片付くだろう」
「そうだな、そうするとするか」
・・・
(ネイビス大公国・首都デバイン・ヒル)
(ブラッド・ヒル 会議場)
「アレンよ、イカロス・ドット上級伯爵が動いたようだがどういうことだ」
アルザス・レイン上級伯爵が問いかける。
「演習だと言う話だったが、私がはなった密偵の話では本格的な軍事装備で1ヶ月分の遠征に耐えられる物資など用意した後方部隊も用意されているようだ。
隣国のフリューゲル・ローレリア上級伯爵も自国の領地に軍備を整え迎え撃つ体制を整えていると言う」
「まさかイカロス伯はフィリューゲル領へ侵攻するのではないのではないのか?
今しがたその手の話で持ち切りだ。
フリューゲル伯の使者も間もなくこちらへ到着すると言う。
イカロス伯の使者はすでにこちらに来ているが、あくまで演習と言う目的だと話しているが、あれほど大規模に動かれては私としても信用ができん。
イカロス伯はあの奈落のダンジョンでの会議の一件からかなり情緒不安定になり国民にも圧政を敷いていると言う噂を聞いているだろう。
事によってはネイビス連合国全体で対処しならくてはならないぞ。
どうするかという事だ」
「そうだな、イカロス伯の動向は私も前から気にかけていた。
それに、密偵からの話で奇妙なことが先日あったそうだ。
イカロス上級伯爵が若返ったという。
極秘の魔法を使い、若返りをはたしたと言うのだ。
それも20代後半の姿まで変わったと言っていた。
私もアイテムと魔法で若返りをはたしているが、60後半のイカロス伯爵が20代後半まで若返るなんて、いかに魔法を盛んにした国家でも、それほどの事ができるとは信じられん。
何か裏があるのは確かだと思う」
「え、お前って見た目若いと思っていたが、アイテムと魔法で若返りしていたのか、知らなかったぞ」
「そうなのか?
知らないお前のほうがおかしいと思うぞ。
お前こそ、わざと老けたような装いをしていたと思っていたのだが違うのか?
てっきり貫録を見せる為にしていると思っていたのだが。
貴族間では延命の魔法使うの当たり前ではなかったのか?
知らないとはお前の方こそ問題だぞ。
何の為に貴族をやっているのだ。
若返りの特権使わないでどうする。
為政者としてお前こそ問題があるぞ」
・・・
フリューゲル上級伯爵の使者が到着なされました。
「通せ」
ネイビス・マクアレン大公が話す。
フリューゲル上級伯爵の使者は息をきらせながら挨拶をする。
「お初にお目にかかります。
私、フリューゲル上級伯爵の使者イグニス・ルナマリアと言います。
この度はネイビス・マクアレン大公閣下にお会いできて光栄に存じます」
「これは遠路はるばるご苦労様です。
硬い挨拶は抜きにしましょう。
それよりも隣国の状況を詳しくお聞かせ願いたい。
立ち話はなんですから、そちらへお座りください。
誰か水を、水を持ってこい。
それとイカロス上級伯爵の使者、アルメシオ・カイセン殿をこちらへ呼んできてくれ。
詳しい話は両者揃ってからいたしましょう。
・・・
「イカロス上級伯爵の使者、アルメシオ・カイセン男爵が参られました。
それではこちらの席に座って下さい」
従者の者が案内し対応をする。
フリューゲル上級伯爵の使者イグニス・ルナマリアが、イカロス上級伯爵の使者アルメシオ・カイセン男爵を睨みつけている。
「それでは双方のお話聞きたいと思いますが、イグニス・ルナマリア殿少し落ち着かれてはどうでしょうか?」
この会談の進行役を進めるフォゼス・リヒテンリッター男爵が声をかける。
「これは失礼しました。
何分わたしも国の命運を託されてこの場に来ていますので、どうやら少し焦っていたようです。
以後気を付けたいと思います。
ご容赦をお願いします」
返答したイグニス・ルナマリアはフリューゲル上級伯爵の側近のの一人で20代そこそこの若い女性だ。
敵対国になるかも知れないイカロス上級伯爵の使者に対して、殺気交じりの威圧をし睨み続けていたのだ。
「それでは両使者共に揃ったことだ、はじめようとしよう。
フォゼスはじめてくれ」
「進行役をいたしますフォゼス・リヒテンリッターです。
この度のイカロス魔導法国の軍事行動についてイカロス上級伯爵の使者、アルメシオ・カイセン男爵にお聞きします。
この度の軍事侵攻をどういう訳でなされていますかお聞きします」
イカロス上級伯爵の使者、アルメシオ・カイセン男爵は答える。
「どういう事も何も私達はあくまで軍事演習の一環としてやっているので軍事侵攻という事はまったく御座いません。
ただ、国境の森林地帯に潜む魔物が活発しているので討伐を含めた演習でしてそれ以上は何もないと言うのが私達の言えることです」
アルメシオ・カイセン男爵、中年の太った男性で争いごとを好まない風貌の温和な顔つきをしている男性だ。
「馬鹿な事いうな、演習目的であったら我が国にも通達が来る話だ。
だが、届いていない。
条約の項目に記されているが今回の件いっさい通達がなされていない。
それも昨日今日の日時で軍を動かしているのだぞ。
それも後方に多数の食料を積んだ部隊も用意されているのではないか。
まるで他国に遠征でするような成りたちであろう。
これは我が国に進行するとしか思えはしない」
「はあ、それは私としてはそのようなことは全く聞いていないので、あなた方の勘違いではないかとそう申し上げるしかありません」
「なんだと、勘違いで済む話ではないだろうが」
「イグニス・ルナマリア殿落ち着いてください」
フォゼスはルナマリアがカイセン男爵に噛みつかんばかりの言いようなので止めに入る。
カイセン男爵は額から汗を流し困ったようにハンカチで汗をぬぐっている。
ネイビス大公が話しかける。
「カイセン男爵、あなたの国の言い分はわかりますが、条約で決めた演習日程日時は双方1カ月前には通達すると決まりが御座います。
また緊急の事態の時は使者を送り双方連携して対応する。
今までそれをやって来たのではないですか。
それを考えると私も疑問に思いますね。
もしフリューゲル領へ侵攻なされると言うのならばネイビス連合各国で対処するしかありません。
まして大森林に入り獣人界に攻めいるのであれば見過ごすこともできませんね」
「ネイビス大公閣下、そのようなことは断じてありません」
「そうですかな?
カイセン男爵、これは噂なのですがイカロス伯はあの奈落のダンジョンでの会議より、ご乱心なされていると言う噂が流れています。
あの出来事で国民に圧制をかけていると言う噂もありますね。
国民にあたるというのは違うのではないでしょうかな」
「確かに私もそれについては苦しく思っています。
ですが他国に軍事侵攻などという事は決してありえません。
確かにイカロス伯爵は荒れていました。
ですがそれでもまだ理性はありました。
先日です。
変わったのです。
変わったのですよ。
若返ってからです。
おかしい。
あきらかにおかしいのですよ。
まるでイカロス伯爵ではなく別人のようになりました。
イカロス伯爵だけではない。
腹心のアイオロス子爵までまるで人が変わったようになってしまいました。
私らもいきなり軍を動かし、森林地帯へむかうと言い出した時は何でそんなこと言いだしたのかわからなかったんですよ。
奈落のダンジョンへ軍を送ると言っていましたからね。
あきらかにおかしい。
おかしい。
人が違う、違うのですよ。
見た目はイカロス伯爵とアイオロス子爵ですが別人です。
部下の話ですとアイオロス子爵の事をイカロス伯爵がオーガスと言っているのを聞いた事があると話していた者もいますようです。
誰か別人が成りすましている。
そう思っている人が何人かいます」
「カイセン男爵それはいつからですか?」
「イカロス伯爵が若がえった時からです。
つい2、3日前の事です」
・・・
「アレン、なにかイカロス伯にあったよだな」
「ああ、一つだけ心当たりがある。
・・・
魔人だ。
・・・
「黒翼人が取り付いている可能性が高いな」
「確か人の弱みに付け込み、心の中に入って行く悪魔の技だと聞いたが」
「ああそうだ。
イカロス伯爵は情緒不安定だった。
心の隙間に付け込まれたのだろう」
「しかしアイオリア子爵は有能な方だ」
「そうだがあの方も息子が亡くなられている。
顔には出さないが相当苦しい思いはしているだろう。
そこへ悪魔が付け込んだのだ」
「これは、悪魔が取り付いているなんて、ネイビス連合国崩壊の危機があるぞ」
「そうだな、過去の文献にも残っている。
皆の者には知らされていないが300年前ドラゴンが地上へ現れ人間界を滅ぼしたのは知っているな。
あの戦いはドラゴンと魔人との戦いであったと示されている文献があるのだよ。
300年前の戦いは人間とドラゴンの戦いではない。
確かに人間は獣人界に攻め入り迫害をしてきた。
だがな元を言えば魔人が人間の指導者に取り付いていたと言う内容が文献に書かれている。
奈落のダンジョンからはなたれたドラゴンは、魔人を討伐する為にこの地上に降り立ったのだ。
文献には示し書かれているのだよ」
「これは速急に対応するしかないな」
・・・
「おいアレンこの気配はなんだ」
「奈落のダンジョンの方だな。
凄まじい力のぶつかり合いが感じられる」
「この力、人間界が滅んでもおかしくないくらいの力を感じる」
「どうやら私達の知らないところで何か起こっているようだな。
すぐさま奈落のダンジョンへ調査隊を出さねばならんだろう」
・・・
「イカロス」
「早いな、始まってしまったようだな」
「だがな奈落のダンジョンまでここから250キロはあるんだよな」
「ああ、そうだが」
「ありえないだろう。
ここまで力を感じるとは、それに異変を感じているのは私達だけではない。
一般兵にいたるまで魔法を心得たものが感じているようだぞ。
それほどあのローパーは巨大な力持っていると言うのか。
獣神の力も感じるのだがな、
あの化け物は異常だ。
300年前のドラゴンの襲来いがいにこんな力を感じるとはな」
「獣神は死ぬな。
これは確定と言っていいだろう。
管理者はどうやら今回は本気の用だな。
ローパーの上位特殊個体を出してきたのだ。
もしこの世界で何かあれば次なる資格をも出してくるかもしれない。
結界はすでに解かれているのだからな」
「どうする逃げるか」
「馬鹿を言うな、何の為この身を黒翼人まで落とし魔人となったと思うのだ。
あのローパーだけは殺る、それしか私達には道がないのだ」
「ああ、そうだな奴を殺るしか俺たちに道はない。
動向を見守ろう」
・・・
しばらくしてから天に巨大な雷の龍が見えたと言う。
・・・
「ドガ、バキャーン」
巨大な雷で出来た龍は地に落ち、凄まじい音と雷の柱が天に向かって伸びたという。




