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第65話 報告


 ネイビス大公国周辺国家の貴族連合の代表たちが、会議場に集結した。


 今回の議題の内容は奈落のダンジョンでの調査隊の報告結果だ。


 当初の予定では長くて1年ほど長期の調査日程だったのだがすでに2年以上経ってしまっている。


 ダンジョンを定期的に移動する手段を用いる予定だったが定時連絡も一度も無かったのである。


 2年以上も音沙汰もなく、行方不明になってしまっているのだ。


 不明なことが多い奈落のダンジョンだから、なんらかのトラブルの為時間がかかっているのだと各国の重鎮達は思っていたのだが、あまりにも長い期間が不明だった為悪い噂は以前から囁かれていた。


 そんな中の緊急招集である。


 ・・・


 ネイビス大公が秘密入り監視役の密偵を忍びこませていたのだが、2年前にすでに帰還している。


 調査隊を派遣したわずか2週間で密偵はダンジョンを脱出したのだがモンスターに任務途中襲われたのか、ひどいダメージを負っていた。


 部下が奈落のダンジョン前で待機していたところ、出てきたときにはすでに瀕死の状態であったのである。


 傷は魔法で治療できたが目覚めることが無く、2年もの長い月日を寝たきりで過ごしていた。


 2週間と早い期間に出てきたので定期連絡の為と当初は思われたのだが月日が流れるにしたって異常事態に陥っていたことはわかっていた。


 だが最上級の奈落のダンジョンだ手の施しようが無い為、放置され2年以上の月日が流れてしまっている。


 密偵が目を覚ましたのは、1週間前の事、ネイビス大公国の医療班の治療によってリハビリと介護により何とかしゃべれるようになるまで回復はした。


 本人の口からの聞き取りとり調査の結果、奈落のダンジョンで何があったのかをネイビス大公は報告受けた結果今回の緊急招集にいたってしまったのである。


 今回の議題はかなり深刻な事態に陥っており、大貴族の代表である党首自ら今回は参加しているのである。


 ことの事態はそれほど深刻で人間世界が滅ぶかも知れないと言う予測さえ伺わせている。


・・・


 緊急会議は始まる前で各国の党首が着席している。


ネイビス・マクアレン大公を筆頭に時計回りの席順で

フリューゲル・ローレリア上級伯爵 女性(29歳)

オルトス・アレイ上級伯爵 男性(37歳)

ロイロ・ディードリット上級伯爵 女性(28歳)

アルザス・レイン上級伯爵 男性(56歳)

カンザス・メイファン上級伯爵 女性(70歳)

オルネリア・ゾニス上級伯爵 男性(48歳)

イカロス・ドット上級伯爵 男性(69歳)

バルバトス・テスタロッサ上級伯爵 女性(21歳)


大貴族上級伯爵の面々が席についている。


 それぞれ、自分の銘をした国を治めており、傘下に下級伯爵や子爵、男爵という官僚級の貴族を従え国を統治している。


 ・・・


 「奈落のダンジョン、やはり行かせるべきではなかったな」


 そう、はじめに言い放ったのはアルザス・レイン上級伯爵だ。


 9大貴族の1角を担うネイビス大公と並ぶ重鎮の一人だ。


 ネイビス大公と共に先の戦乱に真っ先に参加を表明した貴族で、領地も隣同士でいわば、子供の頃から見知った仲で幼馴染といっていい。


 ネイビス大公とは2つほど年が離れており、兄貴分的な位置にあった。


 幼少からアレン、レインと言って呼び捨てで名を言えるほど仲が良かった。


 ネイビス大公とは違って家督を継ぐべく幼いころから英才教育を受け、貴族の中の貴族であるという格式ばった色が強く出ている。


 ネイビス大公はかなり若く見えるが、この人物は現在56歳になるが、初老の爺さんといえるほど老けた外見をしている。


 すでに髪の色は真っ白になっており、顔のほほに深いしわがくっきりとはいった顔筋が出ている。


 なにかと苦労を抱えているようで見た目も老けた様相にかわってしまったみたいだ。


 奈落のダンジョンの調査団の派遣を最初に反対したのも彼である。


 ・・・


 まずは、報告をとネイビス大公はアルザス・レイン上級伯爵の話をさえぎる。


 アルザス・レイン上級伯爵は両腕を組んで黙り込む。


 ・・・


 通せ、ネイビス大公は従者に声をかける。


 全身黒ずくめの装束に身にまとった男が部屋の中に連れられ椅子に座らさせられた。


 隣には神官らしい治療班に属する年輩の男性と若い女性も2人ほど同行している。


 ネイビス大公は話す。


 「彼は私が放った密偵だ、奈落のダンジョンの遺跡の調査に伴い密かに監視役として潜らせていた。

 参加した16名の調査人には誰にも知らせていない。

 むろん、ここに集まった方々へもだ。

 この件については、先の奈落のダンジョンについての調査だ。

 むろん、あの最上級のダンジョンだ。

 監視役がついていても問題は無かろう。

 誰かしら監視役が同行しなければ、逆に問題があるだろう。

 諸君らに一通り、手紙で伝えていると思うが、詳細な話をしたいと思い、今回皆に集まっていただいたという事だ。

 それでは、議題の内容はわかっていると思うがあらためて話をする事にしよう。

 フォゼス、進行役は私の部下のフォゼス・リヒテンリッター子爵に任せようと思う。


 燕尾服の様相をした貴族フォゼス子爵が黒ずくめの男の前に立つ。


 フォゼス子爵は議題の話を進行する。

 「進行役をおおせつかまりました、フォゼス・リヒテンリッターです。

 それでは、今回の議題、奈落の調査団についてのお話を進めたいと思います。

 この度の奈落のダンジョンの調査団について16名の参加者すべて死亡という結果になりました

 調査の結果は今からこの男の口からお話します。

 ですが何分彼はまだ体長が優れない状態にあります。

 詳しいことは手元にある資料をご覧ください。

 それでは調査団の結果のご説明お聞きください」


 ・・・


 黒づくめの男は自分で見てきた内容をできるだけ事細かく話し、調査団が全滅いたった経緯を話しのべた。


 体長が優れない為片言で聞きづらい部分もあったが内容は手元にある資料と同じことを話されている。


 ・・・


 あまりにも、信じがたい内容だったので皆一様に驚きを隠しきれない。


 ・・・


 「馬鹿なアレスは魔王グラトニー・パイロンを倒したのだぞ。

 それがいかに奈落のダンジョンのモンスターであっても返り討ちに合うとは、信じられん。

 それも神の血を開放して負けただと、あり得ない話だ」

 大貴族の一人オルネニア・ゾニス上級伯爵は言い放った。

 「私は魔王グラトニー・パイロンでさえ神の血を解放せずに倒したと聞いた。

 神の血の開放したアレスと一度立ち会ったことがある。

 遊び半分の訓練だったが、あの時の姿と力、目の前に戦の神が降臨したと感じたほどだった。

 それが死んだのだと信じられん、何かの間違えではないのか」


 「落ち着けゾニス伯爵」

 ネイビス大公は彼をなだめる。


 ・・・


 「全滅と聞いたが、我が孫も死んだということかと」

 イカロス・ドット上級伯爵は黒づくめの男に問つめた。


 黒ずくめの男は、

「はい」 

 という言葉だけ答える。


 ドット上級伯爵は、大理石のテーブルをたたき怒りをあらわにする。


 ・・・


 「馬鹿なそんなはずはない、魔導の粋を極めたゴーレムを持っていたはずだ、それが一瞬で消えただとそんな馬鹿な話はないわ」


 涙ながらに声を荒げる。


 ・・・


 「個人手的なことは今は差し控えさせてもらおう」

 ネイビス大公は言う。


 イカロス・ドット伯爵はネイビス大公を睨みかえす。


 ・・・


 「困ったことになりましたね」

 かなり年老いた女性、カンザス・メイファン上級伯爵が話す。

 「我が領内は奈落のダンジョンに接した地域にあります。

 これからどう対策をしたらいいか私では考えつきません。

 300年前このアストリア大陸は神の怒りにより、人間界は一度滅びをむかえました。

 今まさにその轍を踏んでしまおうとしているのです。

 今回の件で神の怒りをかったとしたら、私ら人間は多大な被害がでるでしょう。

 せめて少しでも国民を非難させたいですね」


 「まだ、報復を受けるとは考え難い」

 オルトス・アレイ上級伯爵は答える。

 「我が国も奈落のダンジョンには近い。

 もし報復があるのであれば我が国も真っ先に被害が出るだろうな。

 だが、神の怒りをかったとは思えない。

 すでに2年以上たっている。

 何も起きてはいないではないか。

 もう少し様子を見てから考えてはどうでしょうか。

 メイファン殿」


 ・・・


 「そうですね。それは失礼しました。

 私の考えすぎですね。

 ですが時間を考えるのはどうかと思います。

 神と我々の流れる時間は違いますから。

 天罰は忘れたころに降りると言います。

 私らがこの世から去った時に起こるとも考えられますから。

 そこが怖いところですね」


 ・・・


 フリューゲル・ローレリア上級伯爵は話す。

 「それもそうですが、報告によれば魔獣の活発化しているのは、奈落のダンジョンとは、関係は無いと言う話でしたがどうなのでしょう。

 最近、大森林に接した地域でなくても魔獣の被害が報告されているという。

 このことも話題にしたいですわね」


 「それは別の話ではないのと」

 ロイロ・ディードリット上級伯爵が答える。


 「それは違いますわよ。 

 もともと奈落のダンジョンの調査は魔獣の活発になった原因を探るべく出したのだから、話題にすべきなのは確かなことよ。

 イカロス伯、もともとそのこと言いだしたのはあなただったわよね。

 今回の調査の責任をどうするのか答えてほしいわ」

 

 ・・・


 皆の視線がイカロス・ドット上級伯爵にむけられる。


 皆一様に責任はイカロス・ドット上級伯爵あるかのように睨んでいる。


 ・・・


 「まて、今回の奈落のダンジョンの調査は、魔獣の活性化した原因がどこへあるかの究明だ。

 私も派遣には納得している。

 イカロス・ドット伯爵に責任を押し付けるようなことはするな。

 全責任は調査団を出した私にある」

 ネイビス大公は答える。


 アルザス・レイン上級伯爵は言う。

 「確かに、今回は異常事態だがまだ神の怒りを買ったとは思えない。

 今回の件の調査は魔獣の異常なまでの活発かの為だ。

 それについては仕方がなかったことだろう。

 今回の件と魔獣の活性化の原因は関係なかったということだけわかったのだけでも良いだろう。

 おまけがついてきてしまったのかはまだ不明だがな。

 神による報復があるかは臨機応変で対応するしかあるまい。

 どうしようもならんがな」


 ・・・


 「魔獣の被害については、我がネイビス大公国が全面的に出て協力しよう。

 各人には、今回はそれだけしか言えない。

 今後の事はどうなるかわからんが、各国親密に連絡を取り合うことだけとしか言えないが、異常があったらすぐに報告してくれ。

 今はそれしか言えん」

 ネイビス大公は話す。


 各人神妙な面付きで下をむきうなづいている。


 しばらく沈黙と静寂が続いている。


 ・・・


 ネイビス大公はフォゼスに声をかける。


 「それでは、これにて貴族会議は終了します」


 フォゼスが閉幕する合図をおこなった。

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