第52話 帰郷……
非情だ。
彼女と別れてからこんなに思いが募るなんて、なんだかんだといっていっしょにいられたことは楽しかったんだ。
ローパーの習慣で一時期だけ、つがいになり個別で行動する生態かもしれない。
群れたりつがいで生涯を過ごすのは、少ない時間なのかもしれないな。
私は必ずここへ戻ってくることにしよう。
約束したのだ、守らねばいけない。
私は地下にいく階段のところへ来ている。
上層よりも一端戻って下層の探索をしてみる。
母親がどうなのか気になるのと、最終階層がどうなっているのかみて見たい。
階段前の壁に数字でも刻んでおこう。
ここに来たときは7階層ほど登って来たが、私の最初の生活の基盤としていたところだ。
このフロアに0と大きく刻んでおこう。
神剣を使い階段の前の壁に大きく0と刻み込む。
ここが新たな出発地点だ。
0のところ、必ず戻ってくるからな。
下の階層に進もうとしようか、7階下は探索で来ている。
それに透視能力があるので問題なく戻ることができるだろう。
目的の場所は私が生まれた階層と、最終階層がどうなっているか見てみたい。
それでは下の階層に行くとしよう。
私は透明化能力と透視能力を使い階層を降りていく。
階層を降りるごと、モンスターは強くなっていったが、今までの経験で苦労もなく敵モンスターを倒せるようになっていた。
冒険者と上位インプたちの方がはるかに強かった。
あれはどちらともイレギュラーだろうな。
階層を下がる階段前に神剣で数字を刻みこんでいく。
最初に0刻んだが下の階層に行くのに、マイナスと入れるのが変に思い、そのまま普通に1、2、3と刻んでいく。
まぁ、私がわかればいいだろう。
気にすることはない。
透視能力があるせいか、ダンジョンの探索は簡単に攻略できて行く。
一度探索したところだ。
何もないとわかっているが、透視能力があるのでもう一度なにか見落としがないか調べていく。
これで地下6階層まで探索終了か、あいかわらず何もなかった。
モンスターも脅威と感じられる敵はいなかったし、残念ながらローパーの種族も見当たらなかった。
次の階は私が生まれたところだ。
母親ローパーが生きている可能性は低いが捜索してみようとする。
…… …… ……
うん、ここだ懐かしい。
この階層は雰囲気が違うんだ。
広範囲索敵をし、母親であるローパーを探してみる。
うむ、残念ながら感じられないか、索敵範囲の中にはいないようだ。
前に寝床にしていた部屋に行って見るか。
向かう途中にインプにあったが簡単に倒してしまった。
おいおい、上の階層のインプのほうが強いぞ、ここのやつらはいまいち歯応えがない。
まぁ、食糧として役に立つからそれだけがいいところか。
自分が前にいた部屋にむかいたどりついた。
母親ローパーはいないか、しかし先日まで何かが居た形跡がある。
もしかしたらと思い、広範囲索敵で見つけようとする。
おぉ、反応があるぞ、でも反応が小さい、それに何かと戦闘している?
透視能力を使い確認してみる。
母親ローパーがヒュドラに襲われているではないか。
かなりのダメージをおっており、上部に生えている大きな触手がなくなっている。
瀕死の状態だ、なぜかヒュドラはとどめを刺さない。
まるでいたぶって遊んでいるような感じがする。
! 近くに8メートルの巨大なヒュドラが見ている。
子供のヒュドラに狩りの練習させているつもりか、違うだろうそれは……
「怒ちくちょう。
またヒュドラかよ、今度は私が狩ってやるよ」
私は狂戦士化を使い、雷神の怒り(ライジン)で全身に雷をまとわせる。
俊足を使い母親ローパーのところへ向かう。
…… …… ……
ヒュドラのいる大部屋にたどりついた。
8メートルはある巨大なヒュドラを前にして、私は咆哮をする。
巨大なヒュドラに対して戦闘態勢へ入った。
透視能力で巨大なヒュドラの弱点を探る。
透視すると灰色の魔核が4つ見える。
3つの頭の額に小さい魔核があり、後ろには脳みそがそれぞれ独立してある。
胸辺りの心臓近くに魔核があり、魔核と脳と心臓に太い線を引くようにつながっている神経が体中に枝わかれしている様子がみえる。
ヒュドラは4つの魔核があるのか、すべてをつぶさないと復活してしまう可能性がある。
牽制を含めた意味で3つの頭付近に狙いを絞り、上位無属性状態異常打撃魔法を唱える。
「上位無属性状態異常打撃魔法」
「バシュン」
巨大なヒュドラの目の前に魔法が炸裂し、3本の首の頭が意識が朦朧としている。
状態異常効果がうまくかかったようだ。
私は触手で神剣をつかみ、3本の首の根元を切りつける。
「ドサリ、ドサン」
2つの首は根元から切れ床に落ちた。
左と中央の2つの長い首は切り落とされ地面に落ちた。
3本の首をすべて切り落としたかったができなかった。
落ちてきた頭を触手で打ちつけ、魔核と脳をつぶしてしまう。
次に胸付近にある大きな魔核にたいして、上位無属性衝撃破魔法を唱える。
「上位無属性衝撃破魔法」
無属性魔法の衝撃破はヒュドラの体に直撃する。
巨大なヒュドラは無属性魔法の衝撃破で壁まで吹っ飛ばされてしまう。
壁に打ちつかれ倒れこんでしまった
残念ながら胸にある魔核は破壊できなかった。
首が1本残っているが、床面に頭を伏せてしまっている。
私は近づき、残った頭を大きな触手で打ちつけつぶした。
まだだ。
神剣を触手でにぎり魔核と心臓を切り裂いてしまう。
8メートル級の巨大なヒュドラは絶命した。
私は俊足を使いすばやく動いて母親を襲っているヒュドラの前に立つ。
襲っていたヒュドラは親ヒュドラが殺された様子を見て呆然としている。
私はヒュドラにたいして8本の触手を1本にねじりまとめて、横から大きく打ちつけた。
「ドガン」
大きな打撃音が響いた。
ヒュドラは壁まで吹っ飛び、打ちつけられて這いつくばっている。
ダメージが大きすぎて動けないでいる。
私はヒュドラの前に立つ。
ヒュドラは私を見てこぎざみに震えだしたのがわかった。
透視能力で急所を見極めて触手で殴打をはじめる。
「ドカッ、ドカッ、ドカッ、ドカッ、ドカッ、ドカッ、ドカッ」
触手は急所にあたり、ヒュドラは絶命した。
念のために神剣で3本の首を切り落とし胸を切り裂く。
…… …… ……
私は狂戦士化状態を解き、母親ローパーに近寄る。
後ろには、生まれたばかりの小さな子供たちがいた。
3匹ほどいるな、子供たちを後ろに隠して、守っていたのだな。
狂戦士化を解いた状態なので、スターテスは下がっているが神剣を通せば高回復はできるだろう。
神剣を通して新しく覚えた上位回復魔法をかける。
母親ローパーと子供たち3匹は神剣と上位回復魔法のおかけで傷が回復し、なんとか命を取りとめた。
母親ローパーにいたっては失っていた大きな触手もきれいに再生して以前の状態へ戻っている。
神剣と上位回復魔法の組み合わせはスターテスが下がっても再生までできるとは、さすが上位回復魔法といったところか……
…… …… ……
ふう、なんとか助かったようだ。
私がもっと早くこの階層へ来ていれば、こんな傷つかずにすんだのに……
いつも一歩遅く後手にまわる。
…… …… ……
母親ローパーは起きあがり私を見つめている。
私のことを覚えているだろうか?
母親ローパーは体から触手を出し私の事を触る。
あぁ、覚えていててくれたんだね、母さん。
私は再会を喜び、涙を出す感覚を思い出す……




