第29話 難関……
距離を開けているが、いつもどおり後ろへついてきている。
先ほど威嚇した事で怯えさせてしまった。
罪悪感がでてきてしまった。
よりいっそう彼女のことが気になってしまう。
心が弱いのかな。
いかん、いかん、そんなことを考えているより、今は狩りの最中だ。
どこからモンスターが襲ってくるかもわからない。
警戒だけは慎重におこなわないといけない。
索敵に引っかからないモンスターがいるのがわかってきたのだ。
対策がいまいちつかめないでいる。
こればかりは相手の気配の消し方がうまいとか、特殊能力で消せるとかで効果が変わってきている。
私だってうまく気配を消せれば、相手が気付かずに不意打ち攻撃は成功する。
他のモンスターが私よりうまくできるやつがいてもなんの不思議はない。
モンスターによっては、独特の気配の消し方がある。
一度同じ気配を覚えれば索敵でいかに隠れていようがわかる時がある。
これは経験からくるのかわからないが、鍛錬をつむのにこしたことがないと思う。
索敵と警戒だけは慎重にやらないといけないな。
そんなことを考えていると、通路正面に大きなモンスターの反応がある。
なんだろう? これは経験がない反応だ。
ゆっくりこちらに向かってくる。
いまのうちに防御系魔法をかけておこう。
上位物理防御盾魔法、上位魔法防御盾魔法、硬質化の魔法をかけ臨戦態勢に移る。
すこし進んだら、先ほど索敵でわかったモンスターらしき姿が見えてきた。
巨大な芋虫のモンスターだった。
今まで見たことがない。
体長が6メートルくらいある。
でかいな私の触手をあわせた全長より大きい……
芋虫の形にしては不自然だ?
体は黄緑色をしていて、小さめな頭が胴体前についている。
? 巨大な芋虫に見えるが、後ろの背もたれに赤い茸のような傘がついているのだ。
茸の傘の部分に眼のような部分がある。
これってまさか茸のモンスターが乗っている?
巨大な芋虫モンスターに茸のモンスターが寄生している感じに見えるのだがどうなんだ?
危険な臭いがプンプンするよ。
とりあえず様子を見るか。
巨大芋虫モンスターはこちらに気づいているが、動かないでじっとしている。
? 巨大芋虫モンスターの背に乗っている、赤い茸の傘が震えだした。
霧? 違う胞子か!
胞子のような細かい粉状のものを出してまき散らかせはじめた。
私はそれに触れてしまう。
あれ、からだが宙に浮いている?
上下がさかさまだ。
これは、幻覚だ。
たぶん幻覚系の成分がある胞子を吸ってしまったのか。
私も毒霧とか吐けるがまったく違う効果の毒だ。
と言うか、私には強力な毒耐性があるので効かないと思っていたけど、茸の毒はきくのね、これは困った事になったぞ。
とりあえず上位状態異常回復魔法を唱えてみた。
状態の異常が回復する。
上下がさかさまだった感覚がなくなる。
しかし、目の前にすごい勢いで突進していた巨大な芋虫モンスターがいた。
体当たりしてきた。
よけられない、まともにぶつかってしまう。
「ドカッ」
くっ、重くのしかかり全身に痛みを感じる。
その瞬間にまるで、前世で死んだ時に味わった感覚のようなものが呼び起こされる。
これって車にぶつかった時と同じ感覚なのか?
あの時は痛みを感じずにたぶん即死だったのだろう。
あの時に受けたダメージは、巨大な芋虫モンスターに体当たりされたくらいの衝撃だったのね。
人間だったあの時は、このくらいの衝撃を受けてたぶん死んだんだ。
この衝撃だと即死で間違いない。
私はぶつかり後方に転げてしまう。
私の体格で転げまわるとはなんてパワーがあるんだ。
すぐに起き上がろうとするが、体が重くて動きづらい。
またあの胞子攻撃の幻惑か、それともダメージで動けない?
感覚がわからなくなってしまった。
これは強敵だ。
こんなモンスターこの階層にいたのか?
とりあえず回復魔法と上位状態異常回復魔法の魔法を唱える。
状態の異常と体力は回復をした。
だがまた眼の前に、巨大な芋虫モンスターが突進してきた。
「ドガッ」
また体当たりをくらってしまう。
バカなこれはきつい、こんな連続攻撃を今まで食らったことがないぞ。
体が重く動けないのは幻覚のせいかダメージを受けすぎているせいかわからなくなってしまった。
このコンボにはまったら抜け出せないぞどうする。
私はまた回復魔法と上位状態異常回復魔法をすぐに唱える。
さらに今回は、追加で中位範囲雷撃魔法を唱え、全身から雷撃を放電する衝撃破を出した。
その瞬間に、
「ドガン、バチバチバチバチッ」
ぶつかりあった音と雷撃がぶつかりあう音が鳴り響いた。
私はぶつかった衝撃で壁際まで飛ばされてしまった。
やはりあの巨大な芋虫モンスターは、体当たりしてきたか、私は壁に寄りかかっているが追加の突撃がこない。
巨大な芋虫モンスターもダメージを受けたはずだ。
回復魔法と上位状態異常回復魔法の魔法を唱え、回復をする。
離れた場所には巨大な芋虫モンスターが横倒しで倒れていたのが見えた。
? おかしい赤い茸の傘がみえない、どこへいった。
まさか、私はそう思った瞬間に、頭上の触手の上に何かが乗りかかってきた。
やはり茸のモンスターが張り付いていたのか、おそらく幻惑の胞子で巨大な芋虫モンスターを操っていた可能性が高い。
茸のモンスターは幻惑胞子を使い私を操る気でいるのか?
茸のモンスターは私の上で体を揺らしている。
私はすぐに頭部にある触手全部の先端を槍に変え上に乗っていた茸のモンスターにめがけ全弾を発射した。
発射したすべての触手が茸のモンスターに当たりくし刺しにする。
貫いた茸のモンスターを前に放り出し、大きな触手で前方を連打する。
茸のモンスターはペチャンコにつぶれた。
ふぅ、やったか、巨大な芋虫モンスターはいまだ動かず横倒しに倒れている。
念のために、回復魔法と上位状態異常回復魔法をかけて回復を万全にしておく。
どうやら幻覚は見ていないようだ。
上位状態異常回復魔法を覚えていなかったら巨大な芋虫モンスターを同様にあの茸のモンスターに操られていた可能性も否定できない。
こんなモンスターまでいるとはこのダンジョンは怖いな。
茸のモンスターらしいつぶれた残骸があるのを確認した。
念のため、雷撃双槍撃魔法で茸のモンスターの残骸にに追い打ちをかける。
雷撃双槍撃魔法を受け黒焦げになってしまった。
これでいいだろう。
あとは巨大な芋虫モンスターの頭をつぶしとどめをさした。
なんだったんだ?
今までこのフロアにはこんな強いモンスターはいなかった。
冒険者が来たせいで、異変を感づいた強いモンスターが下の階から上がってきたのかもしれない。
あの冒険者たちのせいで厄介なことになった。
…… …… ……
大きいな食糧が手に入った。
巨大な芋虫モンスターを食べてしまおう。
茸のモンスターが乗っていたのにもかかわらず、差し引いてもかなりの大きさだ。
半分に分けても食べきれるかどうかわからない。
大きい方は彼女にわけてあげよう。
私が怒鳴ってしまい、怯えているから今も罪悪感が残っているんだ。
まぁ、大きい方を譲ってあげているのは、いつもどおり変らないんだけど、今までどおりにならないかな。
注意すると決めたけど、あとのことはまで考えてなかった。
彼女に怒鳴ってしまったのは間違いだったのかな?
今日は精神的にもまいってきてる。
人間だった時の人付きあいも難しかったけど、モンスターの付きあい方も難しいな。
ある意味、戦いよりも人付きあいのほうが難しいと思う……




