第11話 シェアルーム……
起きるとやつはそこに居た。
どうして? なぜ? ホワイ?
えぇぇ、なんでこの部屋の中にあいつがいるの?
まったく気づかなかった。
部屋の隅で1匹のローパーが休んでいるのだ。
昨日後ろをついてきたあいつだ、まいたと思ったのだが私を追って付いて来てしまったらしい。
私が何かあった時用に、避難場所として予定しているところで休んでいるのだ。
この部屋は実は改装している。
少しでも生存確率を上げるために、隠れやすい場所を、詳しく調べておいたのだ。
この階層に最初に来た時には大まかだが広範囲索敵をおこなった。
階層を上がると住処にしているモンスターの種族も変わってくる。
どうしても下調べは必要になる。
このダンジョンは上階に登るほどモンスターは弱い種族が住処にしている傾向がある。
私のように、階層を移動しているモンスターもいるので強いモンスターも稀に紛れ込んでいるのだ。
この階層に来た時に、登った階段から右周りに外周にそって一まわり探索をおこなった。
外側からの広範囲索敵でそれなりに強いモンスターの個体がいるのを確認している。
わかったのは外周の隅に一カ所に大きな部屋がある。
そこには、とある強いモンスターが1匹いて住処にしているみたいなので気を付けている。
一度、確認のため、部屋に入ったときは襲いかかってこなかった。
体は大きいが子供らしく気が弱そうに思えたのだ。
潜在能力はとてつもなくあることは予想できる。
成長すれば圧倒的に強くなるのがわかっているモンスターがいるのだ。
その部屋から通路をまたいだ先の部屋には経験を積んだ上位のインプらしいのが何匹かいる。
奴らは慎重でテリトリーに入ってこなければ襲われる心配はなさそうなのでそちらも放置している。
無理に争って痛い目を見たくないので無視している。
今の私だったら全力で戦えばなんとかなりそうなんだけど、余計な戦いはしなくてもいいだろう。
そいつらがいるエリアの反対の一番遠い場所の小部屋を現在私が寝床にしているのだ。
このエリアにいたそこそこ強いやつはすでに駆逐して安全を確保している。
安全を確保できている私が縄張りにしているこの部屋にあいつは堂々と入って来て休んでるのだ。
この部屋は安全確保のために、隠れやすいように、岩とか壁、崩れた外壁、柱など他の場所からいろいろ運んで苦労して配置をおこなったのだ。
隠れやすく、逃げやすく、戦いやすい、シミュレーションを何度もしている。
結構苦労して作った部屋なのにあいつは堂々と居座っている。
今あいつがいる場所は2次的な非常用に考えて配置しているから、隠れるのに最適で居心地はいいと思う。
その場所にいるのはあんまりではないか、苦労して私が改装したのに。
それに近くには壁に沿って、小さい柱が横倒しに倒れている。
母親ローパーと住んでいた時に、獲物をくぼみに置き、隠していたことがあったので、それを参考にして非常食用の倉庫を作ったのだ。
下床が硬く掘るのに苦労して作った倉庫である。
入り口は小さいがなかは結構掘り下げられたので広くできている。
冷却魔法が使えるようになったので、狩りで余った食材を冷却魔法をかけて保存しているのだ。
倉庫内のストックも満杯になっている。
まさかと思うが倉庫の中が見つかって、非常食が食われてしまう可能性が出てきてしまった。
あぁ、なんてことだ、どうしよう、どうしたらいい、どうにもならない。
これってどうしたらいいか本当に悩んでしまう。
上の階層に本当に引っ越しをしなくてはならないのか、せっかくこの部屋を作ったのに気が重くなる。
そうこうしてるとあいつも起き出してきた。
観察してみるとやはり私の日課と同じように石片を集め食べはじめている。
これはローパーというモンスターの特徴なのかな?
食べ終わったらしくこちらをじっと見つめている。
近づいてみようかな、でも勇気がでない。
いまのところはこちらからのアプローチはやめておこう。
こんなに近くにいても声をかけられないとはなんとも情けない。
…… …… ……
私もいつもどおりの日課で石片を食べて狩りと探索に行くとしよう。
探索に動き出すが、たぶん後ろから付いてくるだろう。
詳しく散策していないエリアに行ってみようと思う。
やはりあいつは後ろから付いて来ている。
昨日とは距離がだいぶ近く、半分の20メートルくらいを一定距離を置いて付いて来ているな。
索敵を全快でおこなっているが、なぜかあいつだけは反応にひっかからない。
索敵で通路の右の部屋に、モンスターらしき反応がある。
1匹いるな、大きいな、3メートルクラスのモンスターかこの感じ蜥蜴のモンスターか。
右の小部屋には大きなワニのモンスターがいた。
今までの経験でワニのモンスターは体が大きいだけでそれほど強いモンスターではないことがわかっている。
慎重に行動し、できるだけ気配を消し、ワニのモンスターに近づく。
私が生まれた時に、母親ローパーが私と子供たちを背負って戦った、蜥蜴のモンスターの方が遥かに強いことはわかっている。
このワニのモンスターの特徴は大きいだけで特にない。
攻撃手段は噛みつきしかしてこない。
他の攻撃はスキル、魔法を使う前に簡単に倒してしまったので経験がないのだ。
下層にいた蜥蜴のモンスターよりも動きが遅く表面の外皮も柔らかいので、外皮からでもダメージが通ることは知っている。
噛み付き攻撃はそれなりに力があるみたいだが、動きが遅いという致命的な欠点があるのでわりと簡単に倒せる部類のモンスターだ。
攻略は蜥蜴のモンスターと同様に触手を下にまわしてひっくり返してしまえば動きを封じることができる。
裏返しになってしまえば手足ばたばだしているだけで起きあがれないのだ。
そこまでしなくても触手の連打で倒してしまえるのだが一応気をつけておこう。
ワニのモンスターが気づいてむかってきた。
やはり足が遅いな、こちらは触手を硬質化させけん制程度の威力でたたいて見る。
ダメージは通っているみたいだ。
ワニのモンスターは一端引いた様子をを見せたが隙ができたので腹の下へ触手を持っていきひっくり返す。
うまくひっくり返った。
こうなるとワニのモンスターはどうにできなくなる。
今回は触手の先端に硬質化と電撃の魔法をかけ、電気鞭状態で軽くたたいた。
練習を兼ねてスキルを使用している。
あっさりと倒してしまった。
とどめを刺す時には、触手を刃の形状に変え喉元を切り裂いた。
これで終わりか、さてと今回はどうしたものか、1匹しか獲物はいないからな。
付いてきたローパーも私のそばまではさすがにこない。
20メートルくらいの離れた距離を維持している。
さすがに1匹だと横取りはできないよね。
しかたないな、半分にわけてあげよう。
どのみち付いて来て、私が用意した部屋に居座る気なのだろう。
今のうち仲良くしておいても損はないだろう。
私は大きな触手を大型の斧の形状に変えた。
大型の斧の形状に変えるのは初めてだ。
硬質化でいつもより硬く触手を強化をした。
高い位置から大きな触手を振り下ろし、ワニのモンスターの胴体を切り裂く。
初めてやったがうまく切り裂けた。
床のほうも刃の跡がくっきり残り切り裂かれている。
威力があるな、大型の斧も使える、力が入る、今度いろんな形状を試してみよう。
半分に切りさいたワニのモンスターの尻尾のほうを触手でつかみ部屋の隅の方に持っていく。
広範囲索敵をかけ、敵がいないか確認をする。
いないのを確認できたので私は食べはじめる。
半分に切り分けたワニのモンスターのそばに付いてきたローパーは移動した。
触手を出して食べはじめている。
同種族モンスターなので仲良くしておこう。
母親いがいに、はじめてあったローパーだからね。
同種族のモンスターは私が生まれた時からかなりの月日がたったが見かけなかった。
下手すると他にいないのではと思っていたくらいだ。
このダンジョンは生存確率が低いので種族ごと滅ぼされてもなんら不思議ではない。
同種族のよしみで仲良くしたいので大目に見よう。
だがそれが過ちだったことはこれからわかる事だった。
…… …… ……
獲物を食べ終わり移動を開始する。
あのローパーはまだ食べているけど先に移動しよう。
どうせ後から付いて来ると思う。
ある程度、先へ進むと小部屋があった。
そこにモンスターの反応がある。
スライムのようだ。
厄介かな、体長30センチから1メートルほどのスライムが13匹いた。
折れた柱と壁に張り付いている。
わりと低い場所なので攻撃は届きそうだ。
数が多い、今の私だったら多くても倒せるはずだ。
でも一度死にかけた経験がありトラウマになっているから怖いんだよな。
だがここで放置もできない理由がある。
スライムって分裂もするけど融合もする。
核が傷つく、割れて一端分裂しはじめる。
分裂したまま魔核が修復して1個体として生存する。
魔核が傷つきすぎていると、死んでしまうが魔核が)無事に残っていれば何度でも再生できるから厄介だ。
分裂して再生して、また融合を繰り返す。
そうするととんでもなくでかくなってしまうんだ。
モンスターを食らいながら融合してでかくなって、手おつけられない大きさになったら大変だ。
ここにいるスライムはなんらかの理由で核が傷ついて分離っしたやつかも知れない。
こんなに数がいるのは珍しいのだ。
ここは数が多いけど今のうちに倒しておこう。
全部倒せなくても数は減らすことはいいことだ。
スライムは融合速度は遅いので戦闘中は絶対にならない。
魔核を完全に破壊しないといけない。
今回は数が多いのだけが問題なのかな。
私は前と違って中位範囲雷撃魔法の魔法が使える。
この魔法は私のまわりを広範囲に雷撃を放電させられる魔法なのだ。
もし張り付かれた状態でも対応できる唯一の魔法だ。
スライムにもこの魔法は効く。
これが使えるので少しだけ安心できる。
それに後ろには、あのローパーがいるからいざという時に助けてくれるかもしれない。
やはり追いついてきているな、でも、索敵には引っかかっていない。
さてと、それでは戦闘態勢にはいるか、スライムはこちらには、気付いてはていないな。
気配を極限にまで下げる。
硬質化を使って体の隅々まで硬くする。
触手をより硬く強化する。
今回は外回りの大きい触手は使わず、頭部の20本ある細い形状の触手を使用する。
先端を槍に変え一斉攻撃だ。
第1弾目で13本、全部を標的にする。
第2弾目で7本、打ち漏らしたやつの追撃、2段構えにしよう。
気配を極限に消し、俊足で近づき、射程距を確認後標的をあわせ発射だ。
前に練習もしているのでなんとかいけそうだと思う。
5体以上スライムが残ったらすぐ逃走、一時この場を撤退、時間を空けてから戻って再攻撃開始だ。
スライムの一件で慎重になってしまっている。
広範囲索敵を使用し他に敵がいないか確認する。
よしOKだ。始めるとしよう。
俊足を使いスライムがいる小部屋に入った。
スライムは気づいた様子はない。
よし射程距離確認、標的の魔核を狙い完了だ。
発射……
スライムの魔核にめがけ先端を槍の形状に変えた触手を発射した。
13本の触手が襲い掛かる。
第1段目はどうだ……
「ドス、ドス、ドス、ドス、ドス、ドス、ドス、ドス、ドス、ドス、ドス、ドス、ドス」
スライムの魔核に命中し次々と粉砕される。
13本中、9命中これは大成功だ。
すかさず第2段目を発射する。
外した残り4匹のスライムの核にめがけて襲い掛かる。
「ドス、ドス、ドス、ドス、ドス、ドス、ドス、ドス、ドス」
残りスライム4体の魔核も打ち砕かれた。
これで全滅だ、スライムは床面にすべて落ち死んた。
おぉ、うまくいったというかうまくいきすぎた。
まぁ、スライムが気づかず、ほぼ動いてなかったのでうまくいったのであろう。
それに陰で練習していた成果が出たってところかな。
うまくいった、自分でも驚いている。
でも問題が起こったのはここからだった。
…… …… ……
13匹のスライムは床面につぶれた状態で落ちている。
広範囲索敵開始、敵がいないか感知する。
大丈夫のようだな。
! あれ、あいつがいつのまにかこの部屋にはいっているぞ、こいつのことはいまだ感知できていない。
まぁ、いいかスライムを食べるんだよね、と思ったらすでに食べはじめていた。
えぇぇー、それはないでしょう。
もう先に食べはじめているよ。
それも結構なはやさで食べている。
まさか全部食べる気か?
私は臨戦態勢を解いて頭部の触手をしまい、スライムをかき集め食べはじめた。
早く食べないと全部食われてしまう。
結局私が食べられたのは5匹分のスライムだった。
普通、狩った本人が優先だよね。
8匹分も食べられてしまったよ。
その前にワニのモンスターを半分も譲ってあげたのに。
スライムはおいしいからってそれはないよね。
食べ過ぎたようで体がパンパンに膨れ上がっている。
さすがにショックはでかかった。
でも怒れないので……
帰って寝るか。
しょうがない、あいつにかかわってしまったのが悪いんだ。
これからは、付きまとってくるかもしれないが、あきらめよう。
同じ種族のローパーだからな。
…… …… ……
私の部屋にルームメイトができた。
勝手に住み込んでいる。
私が狩った獲物をなかば強制的に奪っていくという厄介なルームメイトだ。
私は昭和の時代にあったとされる『みつぐ君』になってしまったらしい。
前世では木下来飛だったが、この異世界では『みつぐ』と名乗ることにしよう。
…… …… ……
ルームメイトが住み込んでからかなりの時間がたった。
彼女はビッチだ、私の後ろに張り付いてほぼ強制的に私が狩った獲物を奪っていく。
いままでどれだけ貢いだことか。
それでも狩りの最中に一度だけ助けてもらったことがある。
相手は蝙蝠のモンスターだった。
体長は70センチくらいあり、黒い外見で頭がやけに大きく人間の頭くらいあり、体と頭のバランスがわるく私の知っている蝙蝠のイメージと違って気持ちがわるかった。
素早く、こちらの攻撃がまるで当たらなかった。
超音波かな? 先読みされ大きい触手の攻撃がまったくあたらない。
雷撃系魔法を使用してもあたらず、すべての攻撃がヒット&ウェイでうまくかわされ牙と爪らしき攻撃で体と触手を切り刻まれた。
8匹という数の多さにも悩まされた。
そんなさなか、彼女は支援というか、私の前に立ちふさがり触手を操りいとも簡単に蝙蝠を捕まえていくのだ。
それも捕まえたと思ったら触手で首を絞めそのまま首を折り自分の口の中に放り込むという荒業をやってのける。
それを見た時、とんでもなく、ツェー、と思わず叫びたくなった。
いとも簡単に食べてしまう。
これは戦闘ではなくただ捕まえて食べていたのだ。
恐ろしいと思ったよ。
ほんの数分で決着がついた。
8匹の蝙蝠をすべて一人で食べてしまったけどね。
それを見て私もまだまだと思い彼女にさらに頭があがらなくなってしまった。
どういう能力でできるのか?
また彼女は私の索敵に反応しない?
謎の多いルームメイトだ……




