悪夢の大国
羽ばたき、そして捨て身の攻撃を掛けようと滑空し始めたコリダロス。
アレンへ向け滑空する最中、足を掴まれ転がるように地に落ちた。
「おやめくださいコリダロス様!」
足を掴んだのはコリダロスの部下であった。
「貴様! 何をしているのだ!」
激高するコリダロスに臆する事なく部下は続ける。
「あのお二人方は刻印者様です」
部下のその言葉はすぐに頭に入らない様子のコリダロス。それを見て部下は言う。
「あの男性の右手をご覧になって下さい」
そう言われアレンの右手を凝視すると、コリダロスは初めてアレンが刻印者だと気が付いた。
「なんだ? 内輪もめか?」
アレンとマナはコリダロスとその部下が何か揉めている様に見えていた。
「あ、アレンこっちに来るわよ!」
コリダロスと部下たちは、ゆっくりと歩きこちらに向かって来た。
アレンは納めていた剣を抜き様子を伺う。
すると先ほどまでのコリダロスとは思えない予想外の行動を取った。アレン達の5歩ほど手前で止まったコリダロス達は、片膝を付き武器を地面に置いたのだ。
「お前、なんの真似だ?」
突然の変化を見せるコリダロス達に、アレンは率直に問いかけた。
コリダロスは凛とした面構えをし口を開いた。
「刻印者様と知らなかったとは言え、今までのご無礼をお許しください」
そう言い終わると頭を下げるコリダロス、それに部下たちも続いて頭を下げた。
「ちょっと待ってよ、刻印者様って何よ? 私たちはこの国の者では無いし、頭を下げられる理由がないわよ?」
マナの方に向き直しコリダロスは答える。
「改めて申し上げますが、この国は大国との戦争に入ろうとしております。しかしその戦力差は非常に大きく、我々がこの村に来た理由の様に、小さな無駄であろうと省かなくてはならない程でございます。それ故に御一人で強大な力を持つ刻印者様は、この国の外の者であろうと丁重にもてなすよう王からお達しがあったのです」
部下の男たちと立ち上がると、コリダロスは目を真っ直ぐにアレンに向けると話を続ける。
「ご無礼を重ねる様ですが、刻印者様には是非とも我が軍と共に敵国を退けるのにお力添えを願いたいのです」
少し間を置いてアレンは答える。
「さっきまで俺を殺そうとしてた奴らにそんな事を言われてもな。……はい分かったって言う訳ないだろ?」
「仰る通りでございます。しかしあなた方のお力を借りねばこの国は滅んでしまうのです」
「お前みたいに強い奴が他にも何人も居るんだろ? それにその世界樹? で出来た強力な武器もある。それなのに勝てない国ってどんな相手なんだよ?」
「……約半年ほど前に、この国と同盟関係にあった大国「キャスタル王国」を一方的に壊滅させたバルバロと呼ばれる国にございます」
その国の名を聞き動揺を隠しきれなかった。
二人とも忘れたかったが国の名だが、聞いた途端にあの日が鮮明に頭に蘇る。




