表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第一章 運命の扉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/97

二つのこと


「じゃあ、まずは二つのことから始めようか?」


「二つのこと?」


 首を傾げるセシリア。可愛い。


「うん、まず一つ目だけれど、この瘴気が覆う範囲を把握しておきたい、かな」


「範囲?それはなぜ?」


「どこまでの範囲を魔物たちが暴れたのかが分からないから」


「ああ、そうね。それは大切かも」


 俺が言いたいことをセシリアは分かってくれたようだ。


 スタンピードで出現した魔物や魔獣を討伐できずに終焉を迎えた時、魔物たちは瘴気に変わる。つまり、瘴気が覆う範囲は魔物たちがどこまで足を伸ばしたのか、ということを意味している。


 このアンラビフォン迷宮が位置している山だけで終わっているかもしれないし、あるいはスタシーも瘴気の海に埋没したかもしれないからだ。


 もっとも、スタシーが無事なことは分かっているのだけれど…………


「もしも、スタシーを魔物たちが襲っていたら……」


「うん、全滅は免れないと思う。でも、その可能性は低いと思っているけれど」


 一応、知っていはいても、可能性は低いという言葉に置き換えておく。


「低い? それはどうして?」


「さっき、この広場で勇者小隊の誰かが倒れているのを見たんだ。もしも、スタシーまで魔物や魔獣が足を伸ばしたなら、勇者小隊は迷宮街のアンラビではなく、スタシーを守ろうとするんじゃないかな」


 大嘘だ。

 いや、嘘ではないか。実際、勇者小隊が倒れている姿は見たから。


 本当のt頃は、俺の【まっぷ】には、スタシーが表示されているから。そこに生きた人々がいることは確認できている。


 ちょっと回りくどい説明なってしまったのは、セシリアにまだ俺の力を説明していないから。


「……そうね。確かに、彼らなら人が多い場所を守ることを優先するわね」


 ただ、魔物たちがどこまで足を伸ばしたのかは、俺も知りたかった。

 この山だけなのか、あるいはスタシーの途中まで進んでいたのか?


 それに、せめて瘴気の中に埋もれた人々の魂は、俺なりのやり方で送ってあげたかったからね。何もしないと、アンデッドとして彷徨うことになるだろうから。


 そのため、ここからスタシーまでの一帯は確認しておきたかった。

【まっぷ】や【転移】は、優れたスキルであることは確かだけれど、一度、実際にその地点を訪れていないと、詳細まで確認する対象になったり、転移の対象にすることができないからね。


 まあ、これは俺一人でもできるけれど、できればセシリアと一緒に行った方が彼女のためにもなるはず、と思っている。


「それよりも、問題は二つ目かもしれない」


「二つ目?」


「そう。このアンラビフォン迷宮のスタンピードが、どこまで進んだのかを調べること」


「どこまで進んだかって……本当なら始まるのは三か月ほど先だけれど、それが早まることをルイは心配しているの?」


「うん。というか、もう早まるのは確定したはずなんだ」


 もちろん、俺に予知のような力やスキルは備わっていない。でも、俺が過去に経験した14度のスタンピードの状況と、念のため【かんぱ】に尋ねた答えからも、アンラビフォン迷宮のスタンピードが始まるタイミングが早まったことは確実だと思っている。


「それと、どの規模まで拡大したのか、ということも調べておきたいかな」


「そういえば、さっきもEXランクの魔獣が出現するかも、って言っていたわね」


「うん。確定じゃないんだけれど、迷宮内に繋がっていたと思われるもう一つのスタンピードは、かなりの魔素を迷宮内に残したはずなんだ」


「そうね、ルイが倒した分を合わせると、討伐したのは全部で100万頭近かったわね」


 セシリアが少し遠い目になったのは、密度が濃い一週間を思い出したからだろう。


「そう。その影響は本当なら出現していた3階層に何らかの形で現れていいと思うんだけれど、結局、3階層にいるはずの通常のボスにも会えないぐらい何も起きなかった」


 何も起きない、ということはそれだけ何かをため込んでいると考えた方が良い。そして、スタンピード前の迷宮で魔素がため込まれたなら、それはスタンピードのランクを押し上げることになるかもしれない。


 それこそ、俺がまだ出会ったことがないランクのスタンピードまで成長させているかも……


 こうして関わった以上、俺の手が届く範囲のことはしておきたいからね。

 一つのイレギュラーは、他にもイレギュラーを引き起こすことがある。


 今回のことで言えば、三つのスタンピードが一つの迷宮を中心に、ほぼ同じ時期に発生する、というのがイレギュラーなんだけれど、もしもアンラビフォン迷宮のスタンピードのランクが、これまで経験したことがないクラスに成長するようなことがあった場合、どこまでその影響がこの大陸内に広がるか分からないからね。


 普通のスタンピードなら、仮にアルファクラスであっても、このシュドリー王国を越えることはないと思うんだけれど、飛行できる魔獣が登場すればその範囲がどこまで広がるか予想ができないところがあるし。


「確かにそうね……」


 俺の「何も起きていない」という言葉が示唆する不穏な個所をセシリアも気がついてくれたようだ。


「倒された魔物や魔獣の魔素は、いったん迷宮が吸収するんだけれど、3階層で何も気配がなかったということは、迷宮内のスタンピードが発生するために必要な魔素として、吸収されたのかもしれないと思っているんだ」


「もしも、そうだったとしたら、どのタイミングでアンラビフォン迷宮のスタンピードが発生するのかしら?」


「分からない。一か月早まるのかもしれない。一日しか早まらないかもしれない。あるいは、明日始まっても不思議じゃないと思う」


「だったら、先に調べるのはこの迷宮ってことでいいのかしら?」


「いや、いったん迷宮に潜ると状況が動くまで外に出られないかもしれないから、先にスタシーの状況を確認してから潜ろうと思う。スタシーまで往復しても、何時間もかかるわけじゃないし」


「そうなの?」


「うん。【転移】のスキルが使えるから、今すぐに行って、戻ることもできるよ」


 少し呆れた目をするセシリア。


「それで、もしもスタシーに行くとしても、セシリアには言っておかなきゃいけないことがあるんだ。いや――謝っておかなきゃいけないことかな」


 この話は、今するべきかどうかを悩んだんだけれど、セシリアが自分が置かれた状況を知っておくことは大切なので、話しておくことにした。


「謝る?何を?」


 きょとんとした表情になるセシリア。

 その表情を見た俺は、少し心が苦しくなった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ