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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第二章 幽玄の森

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蘇った古い会話


 階段を降りると、そこは9階層までとは違い、通路ではなく広場が広がっていた。

 縦横が200メートルはあると思われるその広場は無人で、もちろん魔物の気配も感じない。


 そして――


 正面の壁には大きな両開きの扉が埋め込まれていた。

 豪勢でも華麗でもない。木で作られた古めかしい扉だったが、その古さを感じさせるところが風格を纏っているように見える。


 間違いない、ここがボス部屋だ。


 そしてセシリアはここにいる。


 なぜ、それが分かるのか?


 それは、俺の【まっぷ】に扉の中で激しく動き回る二つの点が示されているから。

 白い点は、鑑定するまでもなくセシリアだ。俺が最後につけた【ついせき】のスキルにより、座標が示されている。


 本当なら【まっぷ】は、視界に収めないとその機能を果たせないが、【ついせき】によってセシリアの座標が特定できたことで、このボス部屋の内部も【まっぷ】の対象になったようだ。


 とするなら、赤い点はこの迷宮のボスだろう。


 白い点は、赤い点の攻撃を防ぐことに注力しているのが分かるが、それは正しい戦いだった。

 まるで舞うかのように赤い点と時折交差しながら、近づいて離れてをきれいな線の跡を見せながら繰り返している。


 まあ、これなら問題はない。

 俺がかけた【まもる】のスキルは、並(・)大(・)抵(・)で(・)な(・)い(・)ボスでも寄せ付けないからね。


 そして、赤い点は確かに並みの敵ではなかった。


【かんてい】してみると……



 種別:ゴッドシープ(特殊ダンジョンボス)

 レベル:240,886

 攻撃力:19,126,755(191,267,550)

 魔力 :21,089,330(210,688,394)

 防御力:14,159,235(141,592,350)

 精神力:26,618,243(266,182,430)

 運  :83


 スキル:【ジャッジメント】、【エターナルファイヤー(★★★★★)】、【デスライト(★★★★★)】、【リザレクション(★★★★★)】、【インハンス(★★★★★)】



 おお、神と名付けられているか……


 そしてステータスは、特殊ダンジョンボスと銘打たれているのも納得するしかない数値になっている。


 スキルにあるインハンスが、「強化」を示すスキルだから、カッコ内が強化された数値ということだ。億を超えている。セシリアの【限界突破】の魔獣版と言ったところだろうか?


【エターナルファイヤー】は消すことが難しい「不滅の炎」、【デスライト】は即死効果がある光だから、なかなか厄介なボスと言える。

【リザレクション】は完全治癒の効果を持つスキルだ。そして、固有スキルの★がついていない【ジャッジメント】は、そのスキルをかけた相手の精神力を破壊する凶悪なスキルだ。精神が破壊されてしまえば生きている屍でしかないからね。

 防ぐには、ゴッド・シープの精神力を上回る必要があるから、事実上の防御不可のスキルと言えるかもしれない。


 もっとも、これらの強力な攻撃スキルは、いずれも俺がセシリアにかけたひらがなスキルの【まもる】をすり抜けることはできない。


 とはいえ、この大陸の妖精族は誰一人として、このボスに勝つことはできないだろう。


 俺が知るこの迷宮のボス、サンダーシープは、ステータスは5桁でしかなかったから、このゴッドシープは、スタンピードボスが転移した後に残された魔物や魔獣たちが再び迷宮に戻ることで作られた、新たに誕生したボスと考えてよいだろう。


 やっかいではないが、面倒な敵ということが言える。


【まもる】で守られたセシリアなら、このボスに負けることはないが、逆に勝つことは難しい。


【ふやす】を使って各ステータスは10倍になっているけれど、そこに【限界突破】を使って底上げしても、まだ足りないからね。


 おっと。


 華麗な動きをしているセシリアの白い点につい見入ってしまったけれど、そろそろ救出に向かおうかな……


 俺は、扉をゆっくりと押した。


(え?)


 だが、扉は開かない。

 慌てて今度は、引いてみる。


 だが、扉はびくとも反応しない。


 急いで、【まっぷ】に映る白い点を【かんてい】で確認してみると……



 名前:セシリア

 種別:人族

 年齢:17歳

 性別:女

 職業:勇者(■■■)


 レベル:1,000

 攻撃力:132,494(1,324,940)

 魔力 :107,727(1,033,910)

 防御力:107,440(1,074,400)

 精神力:122,844(1,228,440)

 運  :84


 スキル:【剣術(★★★★★:剣聖)】、【回復(★★★)】、【縮地(★★★★)】、【耐性(★★★)】、【灯り(★★)】、【集中(★★★★)】、【限界突破】、【鑑定(★)】、【魔力剣(★)】、【お■■■】



 HPのような生命力を現わすステータスは表示されないけれど、どうやら、セシリアは危機的な状況に陥ってはいないようだ。

 魔力が減っているが、【ふやす】で10倍に増えていることを考えると、減ったのは元の値で4,000程度。まただ十分に余裕はある。


 それと、【限界突破】はクールタイムではないところを見ると、まだ使っていないようだ。クールタイム中なら【▽限界突破】という表示になるからね。


 とはいえ、【限界突破】を使ってもゴッドシープのステータスには届かないから、このまま放置はできない。


 ――転移はどうか!


 俺は、【転移】のスキルを使ってみたが、スキルは発動しなかった。


(そうだった!)


 その時、俺は思い出していた。


 そう、今、セシリアはボス部屋で「ボス戦」を行っている。基本的に迷宮内のボス部屋に挑めるのは一つのパーティのみ。誰かが戦っているとき、迷宮の扉は開かない。


 なんでこんなことをすぐに気がつかなったのか?


 たぶん、俺は自分で考えているより動揺しているのかもしれない。


(くそっ!)


 ひらがなスキルの【てんい】なら、例えボス戦が行われているボス部屋であっても、状況は違っていると思うけれど、残念ながらまだ俺には生えていない。


(何かないか!)


 俺は、自分の持つひらがなスキルを焦りながら見始めたのだが……


 その時――


(あ!)


 突然、脳裏に古い会話が浮かび上がった。


『ええ。視界に入れば、簡単に収納できるし、座標が分かるスキルが手に入れば、見えない場所のものでも収納できるの。例えば、太陽のコロナも燃えたままの状態で収納できるし、深海10万メートルの海の水も水圧がかかった状態で収納できるわ。それがどれくらい強力か……分かるでしょう?』


 なぜ、もうすっかり忘れていたはずの千年以上前にした師匠との会話が突然、記憶の底から浮かんできたのか?


 だが、理由は必ずあるはずだ。


 俺は、浮かび上がった言葉を何度も繰り返し呟き、そして――


「そうか!!!」


 俺は、あることに気がついた。



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