いざ人質交換へ
俺は駅近くの大学付近に行くと、マネージャーが運転する車が止まっていた。
マネージャーが俺を見つけると窓を開け、言った。
「助手席から入って」
俺は助手席から車に入った。
「ちょっとまだ手こずっていてね。住山くんにも手伝ってもらおうと思って」
そう言うとマネージャーは親指を立てて後部座席を示した。
振り返ると、七星が猿ぐつわをされたまま暴れていた。
マネージャーが運転席から後ろに入ると、俺も同じように後ろに入った。
「メッセージしたように例の電撃装置をつけようとしているんだが、あんまりに暴れるんで」
そこには小さなベストがあった。
触ってみるとモバイルバッテリーが入っている感じの重さで、電極がいくつか出ていた。
「簡単に外されないように下着の上につけるんだけど、一人でやって逃げられちゃいけないから手首の綱は外せないし、体が柔らかいのか、この娘足で蹴ってくるんだよ。住山くん足を押さえててくれるかな」
ショートパンツ姿で、生足を出した格好だ。
七星は威嚇するように、足を曲げ、そして、素早く伸ばした。
確かに、これは、まともに食らったら大変だろう。
「ほら、足にしがみつくとかして押さえてよ」
「七星さん、協力してください!」
彼女は猿ぐつわされていて、まともに声が出せない。
「仕方ないなぁ……」
マネージャーは何度か踵を顔に食いながら、足を押さえた。
車が揺れている。
「ほら、足、渡すからこっちきて」
七星は、まだ体をくねらせながら足を動かし、抵抗していた。
「しっかり押さえて」
俺は足を渡された。
体を使い、全力で押さえ込まないととてもじゃないが、押さえきれない感じだった。
「うわっ」
「体の弱い住山くんには悪いけど、ちょっとの間だから辛抱して」
マネージャーさんのその言葉で、足の動きが少し弱くなった気がした。
手を縛っているロープを一旦外す。
そのまま彼女の上着を脱がせると俺の方に放った。
謎の電撃ベストをつけると、マネージャーが言う。
「今度裏返し」
俺は自分自身も裏返りながら、押さえ続けた。
多分、勝手に緩められないように後ろ側で調節するようにしてあるのだ。
「はい終わり!」
俺が押さえいている足の力は、すでに抜けていた。
上着を着せられ、手首は後ろで縛られた。
「離していいよ」
俺は足を離した。
踵の蹴りが、目の前で止められた。
七星の目には涙が溜まっていた。
猿ぐつわが外される。
「この屈辱、絶対晴らすから、覚えとけ!」
マネージャーから再度様々なことを再確認した。
彼女の着ている電撃ベストは、俺のスマフォと連動していて、スマフォとの定期的な通信が無くなった時に電撃が発生する。
もう一つ、俺に渡された自撮り用スイッチでも、電撃ベストを起動することができる。
彼女を連れていく準備は整った。
二人で車を出ると、俺は半グレ集団の連絡先にメールを入れる。
すると、待っていたようにすぐに返信がくる。
『駅から鴨川方向に歩いて来い』
ただそれだけの情報を持って、俺は橋のある通りに出る為、大きなへ向かい交差点を東へ曲がった。
今のところ、七星は俺が言った通りに歩いてくれている。
前を歩く七星が言った。
「本当にこれ、君と離れたら電撃が来るの?」
「さっき仕組みを聞いたでしょ。だから、試すのはやめた方がいいですよ。本当に倒れるほどの電圧がかかるみたいですから」
「じゃあ、さ」
七星は立ち止まり振り返った。
俺は急に止まり切れず、急接近してしまった。
七星が体を預けるように倒れ掛かる。
「この状態だったら君にも電撃がいくんでしょ」
「そ、そうなります」
「ほら、女子の胸が当たって気持ちいい?」
いや、好きでもない人の体が当たってきても反応しないだろう……
と思っていたが、七星の体に俺は反応していた。
もしかして、俺は年頃の女性の体ならなんでもいいのか?
「それにさ、君。さっき私の足こっそり舐めたでしょ」
いや、そんなことは決してない。
だが、あれだけ暴れたのだから、口は触れたかもしれないが……
「そういう変態行為をしたことは言わないでおいてあげるから、私を逃して」
「……」
七星がいないと高橋を救えない。だからそれだけは決してできない。
その時、スマフォが振動してメールを確認した。
『鴨川に来たら川沿いに北に進め』
川沿いの道をどれにしようか迷った挙句、俺たちは一旦、河原に降りてそこから北へ進ことにした。
七星を前に歩かせ、俺が真後についている格好だったが、カップルとすれ違う度、変な目で見られた。
それは七星も気づいていたようだった。
「ほら、変な目で見られてる。今度すれ違う時、私が叫んだら、どうする?」
「……こういうプレイ中だって言う」
無視されたかと思ったが、七星は突然笑い出すと、
「なかなかいい答えね」
と言った。
再び、スマフォが振動する。
今度は西方向だ。
近くの橋まで進むと、戻るように橋を西へ渡り、歩く。
渡ったかと思うとまたメールが来て、東に戻り、今度は鉄道を指示された。
「正直、日焼けが怖かったから、助かったわ」
後ろ手に縛っているため、座席には座らず二人で扉付近に立っていた。
連中は、どこへ導こうと言うのか。
二人で歩き出してから、そろそろ三十分が経とうとしていた。




