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隣にはアイドルが座っているけどハッカーな俺には関係なかった 〜『修学旅行で消えた生徒を探せ』編〜  作者: ゆずさくら


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16/31

縦ロール

 今日はお昼ご飯までが全体行動で、午後は班別の行動と個人フリーの時間がある。

 朝食を終えると、クラスごとに集まってオリエンテーションがあった。

 全体行動だが、大きなバスで一緒に動くのではない。

 今日は電車に乗って北の方へ移動する。

 誰かが間違えた、はぐれた時の方法。

 乗り遅れた時の連絡先。

 修学旅行前にも説明があった話なのだが、改めて説明された。

「今日はバッチリ縦ロール決めてきたね」

 渚鶴院は俺を見ると、言った。

「早起きして準備したんだ」

「良く寝れ……」

 言いかけて、彼女の目が赤いことに気づいた。 

 あのまま泣き続けたのだろうか。

「何よ」

 そう言うと視線を逸らした。

「今日もよろしく」

「こちらこそ」

 ホテルから、制服の生徒がゾロゾロと駅に向かって歩いていく。

 通りを歩いている人が、うざったそうに避ける。

 俺たちの班も順番が来て歩き出した。

「ほら、住山」

 駅までそんな距離があるわけではないし、急足で歩くわけではない。

 手を繋いでペースを落とさなくてもいいのだが……

「いやでも握りなさいよ」

 結局、俺は渚鶴院と手を繋いで、駅まで歩いた。

 駅にはすでに車両が止まっていて、次々と乗り込んでいった。

 北側へ進む路線は京都駅が終着駅になっていた。時間帯のせいなのか、一編成の車両数が少なく、車内は俺たちの学校の生徒で溢れかえっていた。

「住山、前に行けば座れるかもよ」

 俺たちは一旦車両を出てホームを歩き、電車の先頭に向かう。

 先頭の車両につくと、扉付近に藤原先生がいた。

 先生は通りすぎる時に軽く腕に触れてきた。

「後で話がある」

 少し扉口から離れて座ると、渚鶴院が言う。

「何の話?」

 現時点で藤原先生と共通の話題は『七星』の失踪の話だけだ。おそらくその話のはずだ。

「個人的なこと」

 電車が走り出すまで、しばらく時間があった。

 椅子に座れたので俺は、ノートPCを開いた。

 やっている内容は、中華製体温確認用の顔認証タブレットに、複数のサーバーから、データを転送しているのだが、表示している内容が内容なので、横から見ていてもわからないだろう。素人にコンソール画面を見せても大抵なんの反応もない。

 俺は簡単に進捗状況を計算してみた。

「何を計算してるの?」

「……」

「楽しそう」

 俺は彼女の顔を見た。

「楽しくはないけど、間に合いそうで安心した」

「よかったね」

 なかなか電車が出発せず、俺はノートPCを閉じて、昨日のことを思い出していた。



 吉村がベッドに入ったので、俺もノートPCを持って自分のベッドに座った。

 消灯の時間まではまだある。

 俺は急いで『中華製体温確認用の顔認証タブレット』へ偽装したデータを送り込むスクリプトを書いて、テストした。

 ある程度スクリプトの目処が立ってきてから、メッセージアプリを開いた。

 そうしないと、動揺してしまってスクリプトの作成が進まない、と思ったからだ。

 メッセージは高橋からだった。

『彼女との修学旅行を楽しんでおられるようですが』

 という意味不明な書き出しで、

『一番、地域的にはターゲットの住居地がありそうな地域なのに、彼女とイチャコラしているとは何事でしょうか』

 と続いていた。そして

『もう流石にやってられません。業務を放棄するなら、こちらも考えがあります』

 で終わっていた。

 どういう意味かはわからなかったが、これまでの高橋から考えるに、最大限に怒っている。

 俺は震えながらも、メッセージを打った。

『渚鶴院は、彼女じゃない』

『ジェラート』

 まさか、あれを見てたのか。

『なでなで』

 いや、それは…… とにかく素直に出来事をそのまま記述して返す。

『俺がスプーンを取ろうとして、彼女が口の中を痛くしたから』

 だが、高橋(かげむしゃ)の反応は最悪だった。

『それを彼女と業務中にイチャコラと言わずしてなんと表現しますか』

 俺は言葉を返せなかった。



 ようやくホームに出発の音が流れ、扉が閉まると電車が動き出した。

 隣にいた渚鶴院が、俺の肩に頭を乗せてきた。

 小さな寝息が聞こえてきた。

 俺と吉村の部屋にきた彼女は、昨日の晩、寝れなかったようだ。

 昨晩は、突然泣いて帰ったし、今朝も目が赤かった。

 何か精神的に不安定な状態のようだ。

 目的の駅まで、起こさないよう肩で彼女を支えようと考えた。




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