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隣にはアイドルが座っているけどハッカーな俺には関係なかった 〜『修学旅行で消えた生徒を探せ』編〜  作者: ゆずさくら


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寺での合流

 目的の寺とは少し離れたところでタクシーを降りると、俺たちは高橋、中島、吉村の三人に合流するために市街を歩いた。

 予めLINKアプリでメッセージを送り、高橋、中島、吉村に、例の二人組の男がいないか見てもらった。

 俺たちのタクシーもつけられている様子はない。

「うまく行ったみたいね」

 俺は頷いた。

 寺で合流すると、高橋が俺に向かって手招きした。

 俺は高橋と一緒に、端に避けた。

「つけてきた二人の顔は、事務所で調べてもらってる」

「七星の件と関係あるってこと?」

「だから、それを調べているんでしょ」

「ごめん」

 高橋は制服のスカートで、左足を軽く上げると、荷物をそこに乗せ、ガサゴソと探しものを始めた。

「……」

 思ったより足が上がっていて、俺の視線が高橋の足にいってしまった。

 彼女は『影武者』だが、今は『高橋ひかり』本人としてここにいる。

 女優がこんな場所で足を見せてる、などと写真を撮られてしまうのではないかと心配になる。

「何見てんのよ」

 俺は慌てて目を逸らす。

 高橋はノートPCを取り出すと、一旦俺に手渡した。

「ごめん…… その、見るつもりじゃなかったんだ」

 淡々と彼女は受け答えする。

「『彼女』がいるのに、結局、誰でもいいのね」

「その『彼女』って誰のこと?」

「そんなすっとぼけて。本人に聞こえるわよ」

 高橋は、渚鶴院の方を見ている。

「もしかして、渚鶴院と俺が付き合ってる、とか思っている?」

「昨日の電車の映像を見れば、百人が百人、そう考えると思うけど」

 俺は修学旅行初日、満員電車で渚鶴院と会った時のことを思い出していた。

 彼女は俺が潰されないよう、腕に力を入れ頑張って距離を保とうとしてくれている。

 それでも乗客の圧力に負けて、俺と渚鶴院の体は密着してしまう。

 彼女の匂いや、息遣いを直に感じる。

 思い出すと、気まずい感じになってきた。

 偶然とは言え、家族ではない女性とあんな距離にいたことなんて……

「!」

 いや、過去にあった。

 俺は以前、高橋とある建物に潜入した時、厨房の調理台の戸棚に隠れたことがあった。

 その時も確か……

 高橋の事を思い出していると、俺は顔が熱くなってきた。

「顔、赤いわよ」

「えっ、これは……」

「別に誰と付き合っていようが関係ないから」

 そのまま会話は勝手に打ち切られ、高橋は皆んなのもとへ行ってしまった。

 俺も黙ったまま追うようにして合流した。

 班の五人で寺を見学し、調べたいポイントを全て確認すると高橋は再び仕事があると言って、寺の外にいたマネージャーと一緒に去っていった。

 この後、俺は適当に班行動から抜けて、高橋に合流することになっている。

 渚鶴院が言う。

「思ったより時間が余ったわね」

 そう計画したからだ、と俺は思った。

 渚鶴院の言葉を受けて吉村が言う。

「またさっきみたいなことがあるかもしれないから、早めに移動しようか」

「そうね住山は速く歩けないから、早めに移動を始めましょう」

 そう言うなり、渚鶴院が俺の手を取ってきた。

「歩くペースが速くならないよう、コントロールして」

「ああ」

 渚鶴院と俺が先に歩き、中島と吉村がついてくるような格好で、市街を歩き始めた。

 時間があまるように計画しておき『ちょっと行きたいところがあるんだ』とでも言って、班行動から抜ける予定だった。だが、班の前列を歩いているし、手を繋がれている。このままだと班の全員に注目されてしまい、こっそり抜けると言うことは出来ない。俺は、大幅に計画を見直す必要に迫られた。

 修学旅行先のような土地勘のないところで、人とわざとはぐれるのは難しい。

 トイレに隠れてもいいが、そんな場所は大抵出入り口が一つだ。外で待たれたらアウトなのだ。

 それともペースを上げて予定より早く着いてしまえば空き時間ができるかも知れない。

 そうすると高橋と計画していた時間帯と前後してしまう。

 先に目的地に着いて、どうやって抜け出す?

 トイレに行ったことにして帰り道に迷ったことにでもするか。

 俺は渚鶴院の手を離して立ち止まった。

 スマフォを取り出すと高橋にメッセージを送った。

『時間を少し後にずらそう。抜け出ることが難しくなった』

 既読がつくのを見て、スマフォをしまった。

 俺たちは再び歩き出した。

 自分の一番速い歩きをして、予定よりかなり早く目的の寺に着いた。

「着いたね」

「さあ、中で休憩しようか」

 中島と吉村がそう言った。

 俺は門をくぐった時、視線を感じた。

「!」

 さりげなく班の行動から外れ、感じた視線の先を確認する。

 寺の外だ。

 慎重に門の影に隠れながら、外を見ていく。

 しばらく動いて探していると、寺の外で、顎髭サングラスと両腕タトゥーがブラブラしているところを見つけた。

 なんであの二人がここに来ている?

 俺と渚鶴院が囮になって、アプリでタクシーを呼び、撒いたはずだった。

 中島と吉村をつけてきたのだろうか。

 だとしたら、前の寺の周辺やここに来るまでの途中で気づけたと思われる。

 彼らはピンポイントで、ここを張っていたのではないか。

 そんな予感がした。

「住山、どうしたの?」

「……」

「あっ、さっきの二人」

 俺は慌てて渚鶴院の腕を引いて、寺の中に戻した。

「なんでここに!」

「聞いて」

 俺はこの話に深入りしないで欲しいと言うことと、しばらくこの寺を離れることを説明した。

「本当につけられているなら警察とかに相談するのは?」

「まだ何もされてないから警察に届けることはできない。とにかく俺に時間をくれ」

 不安気な表情だったが、同意してくれた。

 彼女に小さく手を振り、俺は修学旅行で調べた寺の敷地の図を見ながら、裏口を通じて外の通りに出た。

 通りを振り返るが、つけてきた男二人は気づいていないようだった。

 気づかれないよう、端を歩きながら通りの角につくと、再び高橋と合流した。




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