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8.早朝、部長と二人。

いや恋愛的に進展するのかな?みたいなタイトルで、まったく恋愛的には発展しないので・・・えー、すみません。

 上出来!100点満点です!

 何が・・・というと、(部長の)家から会社まで、15分でたどり着けました!

 カーテンが閉まっている窓がほとんどの中、一つの窓だけ、明かりが灯っています。

 ・・・どうせうちの部ですね。

 まだ他の社員の方がいる時間ではありませんし、昨日は皆さん部長の言葉通りに帰ったはずなので、部長以外の以外ですね。

 つまり部長。

 ふぅっ、と自分を奮い立たせるように息を吐き、歩みを早めました。

 動かない自動ドアの横に立ち、凹凸のある丸いボタンに乗せた指に力を籠めます。

 ピンポーンと高い音を上げたそれから、数秒して低い声が漏れてきました。

『名乗れ。』

『早乙女です。』

『入れ。』

 これは、うちの部だけに許された、早朝や深夜に会社に入るためのインターホン。

 外の社員がインターホンを押すと、中の社員が応答して鍵を開ける・・・という役割です。

 基本的に応答するのは部長なので、部長の机に応答用の機器は設置されています。

「くっ・・・相変わらず重い、このドア・・・。」

 ロックが外された自動ドアを開ける方法は、たいてい手動。

 真っ暗で、春なのに冷たい無機質さを感じるロビーを通り、階段に足をかけます。

 ・・・エレベーターが動いてないんですよ・・・!

 カツン、カツン、と自分の足音だけが響く空間。

 ここで倒れかけたことも幾度とありますが、階段のおかげで体力がまだ保たれているといっても過言ではないでしょう。

 階段の扉を出ると目の前に、唯一明かりが灯った部屋があります。

「失礼します。」

 返事は返ってきません。

 ただ、カタカタとキーボードをたたく音だけが鼓膜を揺すります。

 私も・・・と、デスクに座ってパソコンを開いて、いざパスワードを打とうとしたとき。

「早乙女。」

 静けさの中、下手したらフロア中に響くほどしっかりとした声で、名前を呼ばれました。

 朝ということも相まって、ぎゅっと喉が締まって返事がとっさに出ません!

 しかし私が話し出すより前に、部長が形のよい唇を開きました。

 真っ黒な瞳が光を反射して、こちらに向けられます。

「昨日は悪かった。急に結婚だの同棲だのと、混乱させただろう。今日は定時上がりは難しいだろうが、ちゃんと話そう。」

「ぁ、ありがとうございます・・・。」

 取り繕っている風もなく、ただ純粋な謝罪のようですね。

 謝罪や感謝ほど、本当なら気持ちがこもる分、嘘とわかると苦しいものです。

 それを嘘では言わないのが、うちの部の社員・・・と、ここに就職して一か月で確信しました。

 部長は、再び目にパソコンの画面の四角を映しながらせわしなく両手を動かしてます。

「あの、寝ましたか?」

「っ、くっくっくっ・・・またそれか。食べてますかだの寝ましたかだの・・・麻生が増えたな。」

 呂木先輩、めっちゃ部長の保護者してますね。

 幼馴染なのか、家族なのか・・・。

 部長はすっと視線を上に向けて思案した後、

「さすがに徹夜はしていない。寝た。」

 と答えを返してくれました。

 うーん、嘘ではないようですが・・・経験上、あの隈の黒さ的に、まだまだ疲労は取れていない感じです。

 せいぜい寝てて2,3時間ですね。

 部長、命が危ないです。

「悠貴部長。今から仮眠は難しいですか?」

「ん?まぁ、一時間程度なら、俺がギア上げたら、お前の分くらいカバーできるが・・・」

 先生!この人馬鹿です!

 私の言い方が悪かったかもしれませんが、さも当然のことのように自分を消費しないでください。

「私ではなく、部長が。」

「は?・・・無理だな。そろそろほかの社員も来る。」

 ばっさりですね。

 なら・・・。

「今日、全員で本気で頑張るので、部長は定時に上がって、家で寝てください。リビングの床だけはきれいです。」

「俺は昨日も定時上がりだ。」

 お医者さん!この人もう駄目です!

「でも結局、戻って仕事していますよね?定時で上がった意味がありません。」

「なぜお前は、たかが上司を心配する?しかも急に同棲などと言い出す者に。」

 何故か・・・って、明白ではありませんか。

次回、二人の家庭状況が少し分かるかもしれません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 心配だからに決まってんだろ!!! 以上です。
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