0.旦那様がエリート上司だなんて、企画書には書いてません!
う~ん、新連載始めちゃいました!
こんな小説あったらいいな~って思ってたんです!
どうかお付き合いください。
窓の外には、桜色の花びらが絶え間なく落ちています。
その光景は、何処か異世界を思わせるもので、徹夜の疲れもすべて浄化されるような気になりました。
横にいる上司もそんな気持ちでしょうか。
私はまだ2徹ですが、確か彼は・・・5徹目くらいなはずです。
彼の疲れも浄化されていればいいのですが・・・。
ふいに、彼が私に向き直りました。
私もあわてて、上司の方を向きます。
その花びらと同じ色の整った唇が、言葉を紡ぎました。
「早希、今日からお前は俺の妻だ。」
・・・・・・。
・・・はあっ!?
緊急速報です。
上司からの突然の呼び出しに吐きそうになりながら行ったところ、まともに話したこともないのに求婚されました。
・・・なんて、あり得ません!
あり得ないのに・・・目の前で起きてます!
彼は嘘をついていない、と私の目が証明します。
嘘がついていたら、黒い影が背後に視えるのです。
でも彼の後ろには・・・視えません。
ひらひらと舞う桜の花びらがあるだけです。
ヒュッと喉が鳴ります。
それが、恐怖からくるものなのか、他の感情からくるものなのかなんて、考える暇はありませんでした。
相手が悪いのです。
神の手が1mmもブレずにいてくれてよかった・・・と噂されるほど整った顔のパーツ。
毎日スキンケアに何時間もかけている人が見たら嫉妬どころか卒倒するレベルの、雪のように透き通った白い肌。
そして、暗闇をすべて吸い込んだような漆黒の髪を無造作に遊ばせています。
極めつけは、刃物のように切れ上がった、オニキスのように艶めいた濡羽色の瞳。
彼が通ると、たとえ彼より立場が上の方でも道を避けるそうです。
一度、既婚者の女性が彼に近づいて、女性の夫が会社に乱入してきたことがありました。
私が入社して1週間のことです・・・あんな修羅場、初めて見ました。
家庭を崩壊させるほどのイケメンっぷり、瞬きの間に書類を片付けていく優秀さ・・・。
我が社の隠れたアイドル・・・
「悠貴部長。冗談でしょう?」
分かってます。
本気だということは、分かっています。
それでも、私の能力のバグを願うしかありません。
「冗談じゃない。いいな?俺の妻になれ。・・・詳しくは後だ。今日は定時上がりを許可する。俺とこい。」
相変わらず、彼の背後には花びらが舞うばかりです。
嘘でないことは一目瞭然でした。
心の中で何かが崩れていきます。
あまりの展開に、目の前が霞みました。
その後の仕事に全く手がつかなかったのは言うまでもないでしょう。
これは、真っ黒の会社で企画書を書かずにスタートした、エリート上司の彼と嘘が分かる私が紡ぐ物語。
・・・旦那様がエリート上司だなんて、企画書には書いてません!(決して)
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