1-9 異世界の友好的文化交流
お盆の連休中10話投稿の目標から遅くなりましたが9話目です。
私が警戒を緩めたのを察したのか、ゴブリンは大きく息を吐いて安堵しているように見える。
しかし、襲う気がない事は判ったが、何が狙いなのかはいまだ見えない。なら最低限の警戒だけは解いてはいけないだろう。
「あなたは一体何が目的なのかしら?」
試しに話しかけてみる。すると顔を上げてこちらを伺う表情は何処か嬉しそうな印象を受けるが、
すぐさま首をかしげて頭をかき出した。当たり前だが言葉はやはり通じていないようだ。
しかし、互いに今すぐ相手をどうこうする意思のない事は認識し合えたのかもしれない。
しばらく腕を組んで悩んでいた奴は、自分のそばに落ちていた枝を二本拾うとこちらに向かってきた。
「あなたが襲う気がないのは理解したわ。でも気を許しているわけではないの。それ以上は近づかないで。」
いまだ火が燻る枝を向けて警告する。
すると今度は両手を挙げゆっくりと一歩下がった。
やはりこいつはある程度の知性をもっている個体のようだ。進化前の固体にそういった者も居ると聞いた事がある。こいつは上位種に変化する前のものかも。
なら警戒はしても不用意に刺激を避けるべきかもしれない。今の距離は維持しつつもこちらにも敵意がない素振りだけでも示すのが良いかもしれない。
向こうも同じ考えに至ったのか、拾った枝をゆっくりと下手投げで寄越してきた。どうやら足に添える枝にしろというのか?
いやぁ、参った。
どうにか彼女も警戒を解いてくれはしたが、やっぱゴブリンを近づけさせる気はないようだ。添え木にして貰おうと枝を渡しに近付こうとしたら、何か早口で言ってきた。
まぁ、先程に比べて目付きの険しさや手の震えが止まってる様子から、ある程度の信頼は勝ち得たようだし、まずは足の治療をしてもらおう。
ゆっくりと放物線を描くように、下手投げで枝を投げてわたすと彼女は左足に添えてくれた。
包帯でもあれば固定できるが、そもそも、そんな上等な物なんて持ってたらそれ見せて治療の意思が早く伝わってるわなぁ。代わりになる布状の物・・・。
あ、イノシシの皮でいいか。ついでに肉を渡せばより信頼を得られるかもしれない。彼女には安全に帰宅してもらい、俺に脅威がない事を広めて貰わなくちゃ。
いまだこちらを遠巻きに伺う狼に警戒しつつ、肉と皮を手に戻ってきた。
あいつら何時になったら諦めるんだ?
イノシシ皮を見た彼女の表情が何処か呆けて見えたが、あれか?
ゴブリンが貢物を持って来たことに驚いたのかな。
俺は敵意がありませんよぉ。お肉上げるからどうか村の人達にも良く言ってくださいねぇ。
そんな事を思いつつ、考えられ得る限りの最上のスマイルをしたら小さく悲鳴を上げて枝を向けられた。解せん。
気を取り直して包帯代わりの紐造りでもするか。
川底の砂利で荒く擦っただけの皮だし余り綺麗ではないけど、傷口に当てるわけでもないし気にしないで良いか。乾いて縮んだせいかごわごわするのも見逃してもらおう…いや、紐状に切るんだし大丈夫。
余り気にしてても進まないし、不衛生というなら彼女を早く村に帰せばいいさ。
爪で細かく切り裂き紙縒りを作るように手の平で擦っていくと、思っていたよりも紐っぽいものに仕上がった。50センチ程の物を3本造り彼女に、もちろん不用意に近付かないように投げ渡す。
ゴブリンが物を作るなんて作業に驚いたのか、しばし固まっていた彼女に紐を指差して拾うように促すと、はっと気づき拾うと無事使ってくれた。
添え木がしっかり固定された事を確認すると彼女は立ち上がろうとした。しかし特に冷やす等の処置もしなかった為、痛みに顔をゆがめてまた座ってしまった。
このままでは迎えが来ても歩く事が出来ないか。さっきの作業にも驚いてくれてたし、松葉杖でも造れば友好的に見てくれるかもしれないな。
思い付きでの行動ではあったが、松葉杖は中々好評だった。余り表情に出さないか、出ても直ぐ警戒してた彼女もこれにはずっと驚きっぱなしだった。ゴブリンが物を作るなんて思わないもんねぇ。
大分打ち解けてきたかなぁなんて思っていると、背後から遠くにではあるが狼の鳴き声と人の声が聞こえてきた。まずいな、彼女を探しに来た人達と狼が出くわしてのかも知れない。
先程までこちらを伺っていた他の3頭も向こうに向かっているようだ。この世界の人の戦力って物は知らないが、前の世界でも狼は科学の発達した現代でも危険な動物として認識されていた。
もしこの世界が、俺のよく読んでいたファンタジー異世界なら魔法があるだろう。それなら村の人でもと思うが、おおむねその手の作品内の村人は使えても生活魔法だけって設定が多かった。
彼女にも今は遠くにある喧騒が耳に届いたのか、両手で口を押さえて向こうを伺っていた。
予定より大分遅れての投稿になり申し訳ありません。
ペース維持も今後の課題です。
次回で序章を終えて閑話を挟み2章にする予定です。多少話数が増えても日曜の夕方頃には終わらせたいと思っています。
拙い文章力ではありますがお付き合いいただければ幸いです。