13 空に掲げる
ダルトン城塞から見えるペラネス大峡谷の景色は、その全てが凍り付いていた。
城塞の上にいる人間は誰もが息を呑み、顔を蒼褪めさせた。
「うわあああん」
ゴッホンは泣き叫ぶ仲間の魔法士の少女、亡き親友の妹を抱きしていた。
もし二か月前に来たのが第一王子出なかったら。
もし一か月前にここに居たのが青騎士だったら。
あり得ない仮定、妄想、願望、そして怒り。
無くなった親友も、そしてその妹も開拓者を生業とするものだ。
死への覚悟はすべきものである。
しかしそれを超えて、感情が溢れてしまった。
泣き叫ぶ少女がゴッホンの胸を叩く。
「うわあああん」
少女の気持ちは痛いほど理解できる。
それはゴッホンが抱くものであるし、他の仲間が抱くものだからだ。
「ネーデ、カダト、エト」
ゴッホンは仲間の名前を呼ぶ。
仲間達の視線がゴッホンに集まる。
「俺達は開拓者だ」
少女、ネーデを抱きしめる力を強める。
涙に濡れた視線がゴッホンを見つめる。
「もう一度言う。俺達は開拓者だ」
仲間達の目は誰もが涙で濡れていた。
「A級を持つ開拓者はあれを見て立ち止まる事は許されない。あの力を見て、あの力を目指す責務がある」
高位開拓者に与えられる名誉と特権は、A級という立場に課された責務の裏返しである。
「カーマックは死んだ」
腕の中のネーデへと、強く心を込めた視線を向ける。
「俺達はあいつに生かされた。ならあいつの行けなかった場所に俺達は行くべきだ」
ゴッホンの言葉に仲間達が頷く。
泣きやんだネーデの頭を撫でて、仲間達へと視線を交わす。
「長く休んじまったが、ここから再出発だ」
「「おう!!」」
大剣が、杖が、剣が、弓が澄んだ蒼穹へと掲げられた。
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