第五十頁 ― 絡まり合う思考
がやがや…がやがや…
階下のあちこちに、人影がぎっしりと溢れていた
果物売り場には次々と新しい商品が並べられ
冷凍ケースが一台また一台と、徐々に空になっていく
そして奇妙なほど高く積み上げられた缶詰のタワーが、ちょうど真ん中に鎮座していた
…
こつ…こつ…
俺は副委員長の後をついて歩く、買い物カートを押しながら
一歩また一歩、寄り添うように隣を歩いて
目は棚から棚へと、ゆっくり巡らせていた
……
つ…つ…
「戸上さん。」副委員長がカートにそっと手を置き、俺の方へ視線を向けた
「もう少し付き合ってくれて、ありがとう。」
…
「気にしないでよ。」俺は微笑んで、目を細めた
「どうせこっちのエリアにも買いたいものがあったし。」
「ちょうどついでだと思えばいいよ!」
…
「でも…」俺は背筋を伸ばして、目をぱっと開けて辺りを見回した
「もう少し遅く来すぎたんじゃないかな?」
「周りにあんまり残ってないし。」
…
ふっ…
「まだ知らないんだね。」副委員長はくすりと笑い、片手を口元に添えた
「値引き開始の時間にはまだだいぶ早いから。」
…
「もっと早い時間にやるものだと思ってたんだけど。」俺は首を傾けて副委員長を見る、目を大きく開けたまま
「普通、こういうのって一気に出すもんじゃない?」
…
「それはそうなんだけど。」副委員長は前を向いた
「このお店だけ、値引きの時間帯がちょっと違うの。」
「早い時間に来られないお客さんのために、そうしてるみたい。」
…
「ちゃんとお知らせに書いてあったよ。」副委員長は目を丸くして、俺の方へ顔を向けた
「知ってて当然だと思ってたんだけど?」
…
「へ…」俺は体を固まらせて、背中がわずかに後ろへ傾いた
…
「そういうことか。」副委員長は小さく口を動かした
……………
「ねえ、戸上さん。」副委員長は顔をうつむけた
「もしかして…誰かにここのこと、教えてもらったの?」
…
「な…な…な…」俺の肩がわずかに揺れて、顔をそっぽへ向けた
「急にそんなこと聞くの?」
…
ぎゅっ…
「大したことじゃないんだけど。」副委員長は顔を上げてほほ笑み、カートの縁をぎゅっと握りしめた
「ちょっと気になっただけ。」
「このお店のセール情報、最近やっと公開されたばかりだから。」
「しかもネットには載せてないし。」
…
「あ、そうなんだ。」俺はほんの少し微笑んで、頭をわずかに下げた
「実は誰かに誘われたから一緒に来ただけで。」
「俺も知らなかったんだよ。」
…
ぐっ…
「戸上さん。」副委員長の歩みがだんだんと遅くなっていった
「その、誘ってきた人って…」
「クラスの子で…二人とも知ってる人…だったりする?」
…
…
ぽりぽり…ぽりぽり…
「うーん…」俺はほほにそっと手を当てて、顔を横へそらした
「知り合い…って言えば、そうかな?」
「同じクラスだし。」
…
…
す…
「戸上さん。」副委員長の足取りがさらに重くなって、視線をうつむけたまま
「もしかして…」
「その子…最初のテスト、受かってて…」
「最近…急に…仲良くなったりしてない…?」
…
んー…
「そうかも…しれないかな?」俺はあごに手を当てて考えた
…
…
ぴたっ!
「戸上さん。」副委員長が突然立ち止まって、顔をまっすぐ地面へ向けた
「教えてよ…」
「その子…男の子…それとも…女の子…?」
…
「それはちょっと…」俺は顔をそっぽへ向けた
………………
ピンポンパンポーン♪
店内のあちこちに、チャイムの音が響き渡った
台車が次々と列をなして現れ
スタッフが奥で果物を包む作業を休みなく続けて
そして手前では、一人のスタッフがマイクを人混みへ向けていた
「お客様にお知らせいたします!」
「まもなく本日最後の値引き販売を開始いたします。」
「残りの数量が少なくなっております。」
「こちらのカウンター周りに一列にお並びください。」
「押し合い、割り込み、商品の取り合いはご遠慮ください。」
「ご希望のお客様全員にお届けできるよう、精いっぱい対応いたします。」
「ご協力ありがとうございます。」
…
どどどどど…
あちこちから、人々がカウンターへと一斉に走り出した
我先にと立ち位置を奪い合い
視線をカウンターの奥へと必死に伸ばしていた
……
ぐぐぐ…
「まずい!」俺は列に目をやりながら、カートを前へ押し進めた
「もうあんなに並んでるのか?」
「俺たちも…」
…
…
がしっ
カートが突然、動きを止めた
カートの前には副委員長が、まっすぐ立ちはだかっていた
両手でカートの縁をしっかりと掴んで、顔はまっすぐ下へ向けたまま
…
「教えてよ、戸上さん。」副委員長はかすかに口を動かした
「結局、あなたをここへ連れてきたのは…」
「誰なの?」
…
「それは後でゆっくり話せない?」俺は首を伸ばして辺りを見渡した
「今は本当にタイミングじゃないし。」
「とりあえず先に買い物を済ませようよ!」
…
ガシャンッ!!
「…」副委員長はカートをがっちりと掴んで、体を低く落とした
「ダメ…」
「後になったら…遅すぎる…」
「あの子が…もう…」
…
「副委員長?」俺は首をわずかに傾けて、目を細めた
…
「教えてよ!」副委員長が顔を上げて俺を見た、目を大きく見開いて、まつ毛の端にかすかな涙が光っていた
「あなたをここへ連れてきたのって、結局誰なの?!」
「その子と、どういう関係なのよ?!なんで教えてくれないの?!」
…
…
「それは…少し言いにくくて…」俺は顔をそっぽへ向けて、頭をわずかに下げた
「もう少し時間を置いてから…話そうと思ってたんだ…」
…
...
ぽた…
「やっぱり…そういうことなの…?」一粒の涙が副委員長の頬をつたって落ちた
…
すっ…
「副委員長!」俺は急いでカートを脇へ押しのけた
…
「やめて!」副委員長は顔をうつむけて、両手で何度も顔をぬぐい続けた
「お願い…」
「何も言わないで。」
「何もしないで。」
「もう…好きにしてよ…」
「少しの間だけ…そっとしておいて…」
…
すっ…
「…」俺はそっと副委員長へ手を伸ばした
…
たったったっ…たったったっ…
「あっちへ行って!」副委員長は顔を伏せたまま、走り去っていった
…
だっ…
「待って…副委員長!」俺は必死に後を追いかけた
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たったったっ…たったったっ…
私は棚の間を必死に走っていた
顔を深く伏せ、何度も目を拭いながら
唇が小さく何かを繰り返し呟く
「どうして…どうして…どうして…」
「いつの間に…あの子が…そんな…」
「結局…私が何を間違えたの…」
「私が何をしたから…あの子は私を置いていったの…」
…
「私のせい…」顔を深く伏せ、どこを走っているのか、自分でも分からなかった
「私の失敗…」
「私が役立たずだから…」
「私じゃもう可愛くなくなったから…」
「もうあいつの側にいられなくなったから…」
「だから今…あの子は…」
……
ドンッ!
私の体が突然床に倒れた
足が止まり、ゆっくり顔を上げた
…
ゆら…
目の前には巨大な缶の塔
下の方の缶がゆっくり揺れ始め
…
ガシャーン!!
全てが私に向かって崩れ落ちてきた
巨大な影が空間を覆い
無数の缶が視界を覆い尽くした
…
「危ない!」後ろから声が響いた
…
…
ゴロゴロゴロ…
缶たちがあらゆる方向に転がっていく
何層もの缶が私の体を囲んだ
…
私はその中で体を縮こまらせ
大きな影に覆われながら
髪を床に散らし
両手を胸の前で強く握りしめ
目を見開いたまま動けなくなっていた
…
「どうして…あなたは…」私の唇が小さく動いた
…
ぽた…
額から一筋の赤い滴が落ちた
背中にいくつかの缶がまだ残っている
私に向かって明るい笑顔を浮かべながら
「決まってるでしょ?」戸上さんは目を丸くして私を見た
「こんなところで君を一人にできるわけないだろ!」




