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真っ白なページに綴る、僕の青春  作者: Minateru


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37/50

第三十七話ー二人の静電気(一)

そよ…そよ…

朝の陽射しが、窓の隙間から忍び込んでくる

冷たいそよ風が、頬をかすめていく

廊下には今、人の姿がない

それぞれの席には、もう主がいる

ガラッ。

教室の扉が、再び開く

見慣れた人影と、手に抱えたプリントの山の山

まだ目を細めたままの目と、もう片方の手に小さなコーヒーカップを持っている

……

コツ…コツ…

「よし。」ハヤマ先生が教室の中を見回し、教壇にゆっくり近づく

「みんな、落ち着いて。」

「もう授業を始める時間だよ。」

コトン。

「ちょっと変かもしれないけど…」ハヤマ先生がコーヒーカップを机に置き、手を僕に向ける

「トガミさん、席を替わって!」

すっと。

「でも先生。」僕は目を丸くして立ち上がる

「この前、替わったばかりじゃないですか?」

「先生も言ったのに…」

ぽり…ぽり…

「それもわかってるんだけど…」ハヤマ先生が後頭部をかきながら、体を後ろに反らす

「他の先生たちからも言われててね。」

「だから仕方ないよ。」

…………

ざわざわ…ざわざわ…

教室中にささやき声が響き渡る

何人もの視線が、一斉に僕へ向いた

「ちょっと待って、それって…」

「できれば俺たちの近くに替わってほしいんだけど。」

「一番前の席なんて絶対嫌だよ!」

「どうせなら…」

……

コン。コン。

「話はそこまで。」ハヤマ先生が軽く机を叩く

「トガミさん。」ハヤマ先生が指を三列二番目の机に向ける

「とりあえずあそこに座って。」

「後でまたちゃんと並べ替えるから。」

……

「で、君はあっち…」ハヤマ先生が視線をプリントの山の山に向ける

「えっと…」

ガタッ。

「川崎ネネです。」緑色の髪の女の子が席から立ち上がる

「そうそう。」ハヤマ先生が顔を上げ、川崎さんを見る

「とりあえずトガミさんと席を替わってくれ。」

「はい。」川崎さんが小さく頷く

コツ…コツ…

「じゃあ、早く席を替えて。」ハヤマ先生がチョークを黒板に軽く叩く

「今日はまだたくさんやるからね。」

………………

がさがさ…

僕は机の下から教科書を一冊ずつ取り出す

小さな文房具を自分のカバンに入れていく

くい…

「…」誰かの手が、そっと僕の袖を掴む

「行かないで…」小さな囁き声が、空気の中に響く

「…」僕の体が突然止まり、両手が動きを止め、無意識に顔を向ける

……

コンコン…

「何か問題でもあるのかい?」ハヤマ先生がチョークを何度も叩く

「トガミさん。」

「いいえ。」僕は慌ててカバンの方に向き直る

「何でもありません。」

……………………………………………………………………………………………..

気づけば、周りはクラスメイトだらけだった

あまり話したことのない背中ばかりの中で

ぽんぽん…

「最高じゃん、これ!」背中に手が叩かれる

「これからは女の子たちと席争いしなくて済むな。」

「レン!?」僕は振り向き、目を大きく見開く

「なんで…お前ここに座ってるんだ…?」

「俺の席だろ?」レンが机に頭を乗せ、目を丸くして僕を見る

「この前の席替えでこうなったんだよ?」

「ん?」僕は首を傾げ、指を口に当て、天井に視線をやる

「まあいいよいいよ!」レンが目を閉じ、笑顔を広げる

「細かいことは気にすんなよ!」

「ここにいるんだから、わからないことあったら…」

「…俺に直接聞いていいぞ。」

「まあ、そうだな。」僕は目を閉じ、腕を組み、顔を下に向ける

「これからはもっと俺を助けてくれよな!」レンが手を口に当て、周りをチラチラ見る

「女の子たちのせいでチームメイトを放置すんなよ。」

「俺が助けを求めた時に無視すんなよ。」

「わかったな?」

「わかったわかった。」僕は両手を下ろし、まぶたをゆっくり開ける

「でもまず俺が問題を解き終わるまで待っててくれよ。」

「もちろん。」レンが胸に手を当て、両目を閉じる

「相棒はゆっくりでいいよ。」

「俺は…」

ガンッ!

「もう始まったばかりでもう授業中だぞ?」ハヤマ先生が強くチョークを叩き、こちらを睨む

……

「…」僕たちは慌てて背中を向け、二人は顔を教科書に埋める

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

キーンコーンカーンコーン。

太陽は今、完全に姿を現している

陽射しが前より眩しくなっていく

冷たい空気も、もうすっかり消えていた

そして何人もの生徒が、机に顔を伏せ始めている

………

カリカリ…カリカリ…

「ここで見ての通り…」先生が黒板に書き続ける

「物理は私たちの日常の周りにある。」

「摩擦力は物を持つことを助けてくれる。」

「円運動は以前より速く動けるようにする。」

「位置エネルギーは移動に必要なエネルギーを減らしてくれる。」

「でも運動はいつも同じように固定されているわけじゃない。」白い線が黒板を埋め尽くす

「遅くなる場合もあるし…」

「速くなる場合もある…」

トンッ。

「そしてある場合には…」先生が両手を止め、体をクラス全体に向ける

「別の形のエネルギーが生まれるんだ。」

…………….

ふわぁ…

「…」レンが手を口に当て、体を机にゆっくり伏せていく

「まだ授業始まったばかりなのに…」僕は後ろをチラリと見る

「そんなに早く潰れるなよ!」

「まだ新しい単元やってるんだぞ。」

あ〜あ…

「もう無理…」レンの目がゆっくり閉じ、両手を組んで机に置く

「これ…俺にはキツすぎる…」

「残りは…お前に…任せた…」

「おい。」僕は指でレンの腕を軽く突く

「もう少し頑張れよ!」

「せめて授業のタイトルくらいは書いておけよ。」

「もう…遅い…」レンが顔を腕に埋め、体を僕の背中に寄せてくる

「少し…お前の背中…貸してくれ…」

「レン?」僕は唇を動かし、レンの方を見る

「レン!?」

はぁ…

「もう何も言う気にならない。」僕はゆっくり黒板の方に向き直る

………………………………….

コツ…コツ…

「静電気。」先生が教壇の周りを歩きながら言う

「みんなも聞いたことがあるかもしれないね。」

「元々はいつも私たちの周りにあるものだ。」

「似たような現象として、磁石を思い浮かべると分かりやすいかな。」

コトン。

「でもね。」先生が突然足を止める

「みんな知ってるかい…」

「静電気は、物同士がこすれ合うことで発生するんだ。」

「例えば髪の毛とか、ウールの繊維とか。」

ごそごそ…

「この二つの磁石みたいにね。」先生がポケットから二つの磁石を取り出し、離して掲げる

「もし離しておいたら…」

「ただの道端の石ころと変わらない。」

「でも、近づければ近づくほど…」先生が両手をゆっくり近づける

カチッ。

「どんどん強くなって…」

「そして強くくっつき合うんだ。」

……………………………………………………………………………..

教室の中で、視線はまだ黒板に注がれている

何人かは机に突っ伏し

何人かは問題を解き

何人かの机では電気の明かりが灯っている

ころころ…

一枚の紙が、小さく折りたたまれた状態で

ゆっくりと僕の机の上で転がってくる

「何だこれ…」僕は教室の中を見回す

「結局…」

……

ぱさっ。

僕の手がゆっくり紙を開く

視線は教室の中を絶えず見回している

「後で一緒に昼ご飯食べない?」折り目の多い紙の真ん中に文字が浮かんでいる

「…」僕は椅子の背にもたれかかり、黒板の方を見る

「何なんだよ、これ。」

………

ころころ…ころころ…

紙が次々と飛んでくる

インクの跡が、だんだんはっきり見えてくる

「聞いてる?」

「こっち見てよ」

「なんで無視するの?」

……

「…」僕の体があちこちに向きを変える

ころころ。

「バカ。」一枚の紙がまっすぐに僕の額に当たる。

......

僕の視線が、その紙の飛んできた方向をたどる

そこには、こちらに身を乗り出している女の子がいる

黒髪に赤い筋が混ざった髪

そして小さな手の向こうで、いたずらっぽい笑みを浮かべていた


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