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召喚者達はその異世界で  作者: 八日園 啓地
電子の子ども達
81/143

80 その事情、説明を

 着いた場所には教会のような建物があった。周りにはまるで避けるように他の建物がなく、その建物だけが寂しそうに建っていた。加えてここに来るまでの道で見たどの建物よりも老朽化が酷いことも寂しさを助長している。

 「さあ、入ろうか」

 アキヒ古びた扉を開ける。

 動くたびに鈍い音を鳴らす扉をアキヒロの後にくぐる。

 中も外観違わずの有様だ。しかし、古びてはいるものの、真ん中を空けて左右に並べられている長椅子や真ん中の通路の先にある講壇があって一応教会らしい備品があった。

 「アキヒロ、この教会何なんだ?」

 「教会ではないが……まあそこら辺のことはいいだろう。この建物については気にする必要はないよ」

 アキヒロは真ん中の道を歩いて講壇に近づく。

 俺も彼の後を付いて行く。

 アキヒロは講壇に立ち、俺はその向かい側に立つ。俺が教えを請うような絵面になってしまった。

 「少し待っていてくれたまえ」

 アキヒロは既存の宗教の教えを、ましてや自ら開いた宗教の教えを説くことはせず、しゃがんで講壇の裏に隠れてしまった。

 そして、扉の鈍い音が聞こえてきた。

 後ろから誰かが入ってきたのではなく、前から音がした。

 「アキヒロ? 何してるんだ?」

 俺は講壇の裏に回り込んで彼の姿を確認する。

 そして床が縦に開かれて地下に続く梯子も確認できた。

 「か、隠し扉……?」

 「そうだ。私を含めて三人しか知らない。さて行こうか。扉は閉めて来てくれ」

 アキヒロが梯子を伝って地下の暗闇の中に消えて行く。

 「ま、待てよ!」

 梯子をしっかり握って下に降りる。

 「……っと! 扉っ……」

 一応言われた通り扉を閉めておこう。

 急停止して手を上に伸ばす。幸い指を引っ掛ける場所があって簡単に閉めることができた。

 地上の明かりが途切れて正真正銘の真っ暗となり、自身の手すら見えなくなった。これでは梯子を降りることも難しい。

 そう思ったのは数秒だった。

 突然、強い光が両目を襲う。

 両手は梯子を握っていて目を庇えないため、目を瞑って顔を下に向ける。そして刺激的な光に目が慣れ始めて、ゆっくりと目を開けた。

 土の壁に沿って穏やかな光が灯されている神秘的な光景だった。その光は梯子にもあって俺の顔のすぐ近くで光っている。穏やかな光だが、流石に顔の近くにあると眩しい。

 梯子はそこまで長くはなかったため後少し降りたらジャンプで降りることができそうだ。

 俺が飛び降りたことを確認してアキヒロは先に進む。一本道に加えて道に沿って灯されている光のおかげで薄暗い中でも楽に進むことができた。

 薄暗い道の奥には扉があった。アキヒロがその扉を開ける。

 そこは背後の光景と真逆のものだった。

 一面白で覆われた部屋で、今通ってきた道のせいかとても明るく感じる。部屋の中央には巨大な結晶があり、不思議な存在感を出していた。

 そして、その結晶の近くに見たことある女の子がいた。

 「さっきぶりだな、えーと……インフェクトだっけ? 挨拶が遅れたけど俺は相島翔。よろしく」

 遅れたというか遅すぎだろう。しかし今言っておかないともうタイミングはない。

 「よろしくお願いします、カケルさん! ……あの、先程は突然押し掛けたり急に出て行ったり慌ただしくして申し訳ないです」

 本当に申し訳なさそうな顔でこちらをのぞき込む。

 「いや、気にしてないよ。それよりもまた来てくれると嬉しいよ。カグヤも喜ぶしね」

 インフェクトは意表を突かれたように首を傾げる。

 「また行ってもいいんですか?」

 「ああ、もちろん」

 「……ありがとうございます。絶対また行きますね!」

 心の底から嬉しそうに彼女は笑った。

 この子、表情がコロコロ変わって見ていて飽きないな。表情が豊かというか感情が豊かというか。今一瞬で感じたことに正直なのだろう。

 「…………さて、挨拶はそのくらいでいいだろう。本題に入ってもいいかな?」

 アキヒロが手を鳴らして会話に一区切り入れる。

 「まずは彼女について君に知ってもらわなければならないな」

 アキヒロはインフェクトを示す。

 「それはいいけど……本題ってそれ?」

 「まあ、一部ではある」

 随分と含みのある言い方だ。

 それに昼に俺の家でもできたのに何故こんな場所まで連れてきたのだろうか?

 「そう疑うような目をしないでくれ。これは他の人に聞かれたら困ることなんだ」

 そのために絶対に盗み聞きされない場所が必要だったということか。たしかにここなら誰もこないだろう。

 「さて、どこから話そうか………………昼に黒服の男達に襲われただろう?」

 「うん、何かを探しているみたいだった」

 暗号みたいな名前のものを探していた気がする。英数字の羅列だったため覚えていないが、少なくとも怪しい男達から狙われるような代物は俺の家にはない。

 アキヒロの助力あって倒した黒服達は、インフェクトを連れて出て行ったアキヒロと入れ違いで来た騎士達に引き取ってもらった。

 「彼らが探していたのはインフェクトだ」

 「は?」

 俺は思わず予想外な形で話に登場してきた彼女の方を見る。

 彼女は困ったように笑う。

 「ここからはわたしが説明します。あなたでは詳しく語れないでしょう?」

 「そうだな。君の方が適任だろう」

 アキヒロは何処からか持ってきた椅子に腰掛ける。

 「カケルさん、落ち着いて聞いてください」

 インフェクトはそう前置きして語り出した。

 「わたしはとある施設で育てられました。そこにはわたしくらいの子供がたくさんいます。そこは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 たくさんの子供と危険な香りがする実験を行なっている施設。危険性と怪しさに輪がかかる。

 「それって……」

 「はい、人体実験です。当然国に隠れて、密かに行われています」

 言い切る彼女の声と顔は少し陰りがあった。

 人体実験。

 その言葉に驚きも動揺もしていた。しかし、それでも何も言えなかったのは話に頭がついて来ていないせいだろう。

 「研究内容はリグルートに能力(スキル)を持たせることが可能かどうか…………言い替えれば人工的に能力(スキル)を造る実験です」

 「…………人工的に……ってそんなことができるのか?」

 いつまでも遅れをとる頭をフル回転させて彼女の話に追いつく。人体実験という言葉には色々引っかかる部分もあるが、それは一旦置いておこう。

 今は能力(スキル)の話だ。

 そもそも能力(スキル)絶対神法書(シガンマナ)の七つのルールの一つ、全種族のリグルート化による副作用みたいなものだ。リグルートの容姿と魔力量で以前の力が使えなかった他種族は元々の力を何百年もかけて数段階落とした。その結果、先祖の力を威力が下がったとはいえ再現することができたのだ。

 つまり、能力(スキル)は遠い昔の再現であるため、人工的だろうと自然的だろうと再現するものがなければならない。そしてリグルートはそれがない。

 「もちろん簡単にはできません。彼らが求める領域まで至ったのは二人だけです」

 「その一人が……君なのか?」

 インフェクトは黙って頷く。何かを心配するように不安げな表情のまま彼女は話を続ける。

 「そしてワンセルフ……もう一人もこの街にいます」

 普段は立ち入り禁止とされて住民一人いないダストリーを街と呼ぶには抵抗があるが、それはともかく、

そんなことが 分かるのは能力(スキル)のおかげなのだろうか。

 「ダストリーでここ二、三日の間事件が多発しているのは知っているかい? タイミングからするとそのもう一人が関わっている可能性が高い」

 アキヒロが横から口を挟んで補足説明をしてくる。どうやらここで説明役は交代らしい。

 「さて、そこで君に頼みたいことがある。それが今日の本題だったからね」

 「ちょっと待って。いくつか質問させてくれ」

 胸にある引っかかりを解消する機会は説明役が変わった今だ。

 「いいとも、なんだね?」

 正直、情報が多すぎて整理が追いつかない。それでも目の前の男に最初に聞きたいことは一つだけだ。ずっと気になっていた。

 「……あんたはその研究に関わっていたのか?」

 こいつはインフェクトと出会った時から彼女の存在を知っていた。国の目を欺いて行われていた実験の被験者のことを知っていた。それだけで嫌な想像は大きくなる。

 アキヒロは普段と変わらない様子で俺を見据える。互いの視線が行き交う。

 体が金縛りにでもあったかのように硬くなる。

 ふとアキヒロが笑みをこぼして、口を開く。

 「そんなわけないだろう。それならば先程彼女がしていた説明は私の口から説明するさ」

 「それならどうして彼女のことを知っていたんだ? あんたが俺の家に来たのはインフェクトがいると知っていたからだろう」

 アキヒロは驚いたように目を見開く。そして興味深そうにもう一度笑った。

 「そこまで見抜いていたとはね。思った以上に君は鋭いようだ。……いいだろう。本題の前にそれも説明しておこう」

 アキヒロはタブレットを取り出して俺に見せる。

 「私のタブレットは特別製でね。昼に見せたように任意の範囲内でのタブレット並びに魔導具の使用を制限することができる」

 突然関係ないことを言い出してきた。

 「お、おい一体何を……」

 「いいから最後まで聞きたまえ。……そもそも私が造ったタブレットを含む魔導具は電子魔力をエネルギーとしている」

 「え? 個人の魔力じゃないのか?」

 ライトソードやバーチャルバレットの扱い方を習った時、魔力を注いで刀身や弾丸を造ると教わった。実際、それらを使用すると徐々に魔力を削られている。

 「たしかに個人の魔力を消費するものもあるが、それらもあくまで根っこの原動力は電子魔力だ。例えるなら電子魔力はコンセントで個人の魔力は電源だとでも思ってくれ」

 インフェクトは何のことか首を傾げているが、俺はそれなりに納得した。具体例で疑問符を浮かべている彼女を見てこの世界にはコンセントがないことを思い出した。日本ではコンセントがあった電化製品もこの世界ではコンセントは付いていない。それでもちゃんと稼働している。

 「元々電子魔力は私がクリスタル・コアを作った時にできた付属品だ」

 「クリスタル・コア?」

 その言葉には聞いたような記憶があった。確か、昼間アキヒロが言っていた気がする。そして今までの会話でも何度か出てきた。

 「タブレット、ライトソード、バーチャルバレット、その他全ての魔導具を管理する役割をもつ結晶だよ。君の目の前にあるそれだ」

 アキヒロが巨大な結晶を指差す。

 結晶は天井に届きそうなほど大きい。改めて見ると、自ら発光していることに気づく。明かりも何もないのに明るいのはこの結晶のお陰みたいだ。

 「これを……作った?」

 こんな神秘的なもの人間が作れるのか? という純粋な疑問が湧く。

 「作ったというのは少々誤解を招いたかな。すまない。正確にはプレアを使用したんだ。しかし予想以上に大きいものが出てきて置く場所を私の部屋からここに変えたんだ。……移す時もプレアを使う羽目になってしまったがね」

 アキヒロはタブレットを仕舞って、話を戻した。

 「さて……君の家にインフェクトがいると分かった理由だったね。……ふむ、もう少し説明がいるな」

 確かに今の説明では俺の質問の答えになっていない。

 アキヒロはインフェクトの方を見遣る。

 「君の能力(スキル)を教えてもいいかな?」

 「……どうしても教えなきゃダメですか?」

 「ああ、その方が一番手短に終わるからね。それにいずれは伝えないといけないことだ」

 気が進まないインフェクトに向かってアキヒロはきっぱりとした口調で説得する。それでもインフェクトは口に手を当てて数秒の間だけ悩んだ。

 「……それなら、わたしから説明したいです」

 「そうか」

 アキヒロは端的に了承の意を告げる。その言葉を聞いてインフェクトが俺に近づいて、目の前で足を止めた。

 そして両手をゆっくりと慎重に広げる。何かに怯えているかのように震えていた。両手を広げ終えたところでインフェクトは不安げに口を開いた。

 「わ、わたしに……触れて……ください」

 上目遣いで、弱々しい声でそんなことを言われてしまった。

 「え、え、ちょ、ちょっと……!?」

 先程までの真面目な空気が全て消し飛ぶくらいに状況が一変した。彼女の若干潤んだ瞳が妙な雰囲気を助長させている。

 俺は中途半端に手を宙に浮かせて固まってしまう。

 「早くしたまえ。まだ本題にも入っていないのだぞ?」

 アキヒロが退屈な様子で催促してくる。

 こっちの気も知らないで……。しかしこの男のからかいがないのは意外だった。俺に対して意地の悪い発言をしてきそうなものだが。

 いや、そもそもこんな小さい子相手に動揺するのがおかしいのか? そうだ、そうに違いない。

 普通に触ればいいだけのところを気にしすぎるとまたロリコンだ何だと言われかねない。今度こそ冗談ではなく本気でそう認識されてしまう。

 …………しかし彼女はロリと言えるのだろうか? 詳しい年齢は分からないが十歳以上十五、六歳以下くらいだろう。そこら辺の年齢はロリコンの範囲に相当するのか否かは微妙だ。そんな時は体格で是非が問われるが、百七十センチある俺の胸の辺りが彼女の身長だ。

 強いて言うなら半分ロリ。略して半ロリといったところだ。一体自分でも何を言いたいのかよく分からなくなってきた。

 「あ、あの…………」

 「あ、ごめんなさい!」

 思わず敬語になってしまった。インフェクトも突然の敬語に首を傾げてしまっている。

 これ以上待たせたら彼女に申し訳ない。

 まあ、無難に手首辺りでいいか。

 広げられた彼女の手首辺りに手を伸ばす。

 そして、その華奢な腕を俺の手はそのまますり抜けた。

 彼女の腕を俺の手が貫いたわけではない。物理的な干渉もなく、何の抵抗もなくすり抜けたのだ。

 「……え?」

 インフェクトが不安そうにこちらを窺う。

 彼女の腕から手を抜いてもう一度握ろうと手を伸ばす。再度確認しても結果は変わらなかった。信じられないが、本当に幽霊のようにすり抜けたのだ。

 もしセレアがいたなら気絶モノだろう。

 かく言う俺もすぐに説明を乞いたいが口が回らないほど驚いている。

 「……これはどういう…………?」

 「わたしの能力(スキル)は《他機影響(インフェクト)》。クリスタル・コアが支配する電子魔力やそれをエネルギーとする魔導具に干渉することができます」

 彼女は両手をゆっくりと下げて、自分の身体を抱きかかえるように腕を組む。いや、よく見ると指が腕に沈んでいた。どうやら自分自身すらも触れないらしい。

 「そして……()()は今思えば最終実験だったかもしれません。わたしは実験で気を失って目が覚めたら……いえ、気づいた時には電子魔力の中を漂っていました」

 「え、えーと……要するに実験でそうなったってこと?」

 足りない頭で何とか要約するが、インフェクトは何故か一瞬驚いた顔をして静かに首を横に振った。

 「いえ、その時のわたしは見せかけの身体すらありませんでした。カグヤちゃんと出会ってこの姿になりました」

 「え? カグヤ? 何で?」

 インフェクトにも分からないらしく困ったように首を傾げる。

 「恐らく彼女の特別能力(ユニークスキル)のせいだろう。まあ、この場合はお陰と言った方がいいかもしれない」

 アキヒロが見計らったように口を挟む。

 「カグヤの……?」

 基本的に同種族の能力(スキル)は同じだが、二種族だけ例外となる。この二種族は一人一人が異なる能力(スキル)を持つため彼らの能力(スキル)特別能力(ユニークスキル)と呼ばれている。かぐやはその二種族のひとつ、ディアボロスだ。

 特別能力(ユニークスキル)《グリムリィーパー》。

 あの銀髪のロリは死神を宿している。

 「それがどう関係するんだ?」

 「その質問に答える前に君の死神のイメージは何だい?」

 「死神のイメージ? まあ……人の魂を刈り取るとかそんな感じかな」

 カグヤもそのイメージに沿うように、能力解放時に現れる双剣で相手の精気や気力、生きる源を刈り取ることができる。

 カグヤには悪いが、名前に神とあってもあまり関わりたくない。

 「だが、死神には別の側面もある。というか、こっちが本来の存在意義なんだが……。死神は元々魂の管理者だ。彷徨う魂を冥府に……つまりあるべき場所に導いてくれる」

 魂の管理者。

 確かに身体が無くなって意識だけがぼんやりと魔力電子の中に存在したインフェクトは『彷徨う魂』とされるかもしれない。

 「だけどカグヤは能力なんて使ってないはずだ。それに仮に使っていたとしても……その……失敗、してるじゃないか」

 インフェクトがここに存在しているということは冥界に、つまりは死後の世界に送られていないということだ。

 加えて、カグヤとジャンケの証言ではインフェクトは一人で路地裏にいたらしい。カグヤの特別能力(ユニークスキル)を発動していたことは聞いていない。

 「その二つの質問は一つの答えで充分だろう。それは彼女の特別能力(ユニークスキル)は彼女自身でも制御できないからだ」

 「制御できないって……そんな話一度も聞いたことがない」

 「恐らくは気づいていないのだろう。能力(スキル)と違って特別能力(ユニークスキル)はオンリーワンの能力だ。小さな暴走は気づかれにくい。その能力のことを詳しく知る者がいないからね」

 能力(スキル)であれば、ちょっとした変化でも周りと同じ能力だからすぐに異変を察知できる。しかし、特別能力(ユニークスキル)はその異変でさえ能力の一端とされてしまう。

 「だけどカグヤの能力が暴走してる何て証拠はないだろう?」

 「……例えば特定の物に触れることができなかったり、食事が特別だったり……あまり知られていないが普段の生活に能力の影響が見られたら制御できていない可能性が高い」

 食事。

 カグヤの食事は精気や気力だ。月に数回でいい彼女の食事は俺から摂取する。女神の加護者の異常な回復能力のお陰で何ともなかったから考えもしなかった。

 「能力が知らずに暴走したから中途半端な結果が出たってことか?」

 「そうだ。冥界には連れていかれずに電子魔力を利用して意識が可視化した。まあ、その暴走で……いやこの場合は本来の役割を全うしているのかな。ともかく結果的には紅月の民の頭目が彼女を()()()に引き止めるきっかけとなったということだ」

 「……結局あなたがほとんど説明してるじゃないですか」

 インフェクトは頬を膨らませて、拗ねた口調で言う。

 そう言えば彼女から説明をするという話だった。というか、話が広がりすぎて一向に畳めない。俺はアキヒロの依頼を聞くためにあとどれくらい時間がかかるのだろうか。

 「ああ、すまない。……つまり、電子魔力とほぼ同化していたインフェクトが可視化できるようになって、そのせいで彼女の周りの電子魔力は異質になった。さっきも言った通り彼女は電子魔力のお陰で可視化した。その姿は電子魔力で作られている。私はタブレットでそれを確認して君の家を訪ねたわけだ。蛇足になるが、あの黒服達は偶然見えるようになった彼女を見つけたんだろう」

 これで一通り説明が終わった。しかし、依頼に至るまでの説明が終わっただけで依頼の説明はこれからなのだ。正直、気が重い。

 「さて依頼の内容だ。ようやく本題に入れる」

 アキヒロも長々と説明に疲れたのかため息をつく。

 「君には最近ダストリーで起こっている事件の首謀者の目的を調べて欲しい」

 最近起こっている事件はインフェクトのように能力を人工的に付けられた子らしい。その子も関わっているはずだ。

 いくら子供でも出会ったら油断しない方が良さそうだ。

 少しばかりの緊張が身体を走る。

 アキヒロはそんな俺を見透かしたように笑う。

 「安心したまえ。君には最新の鎧をくれてやる」

 「これは…………」

 渡されたのはアニメや特撮モノでしか見たことがない戦闘用スーツだった。

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