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召喚者達はその異世界で  作者: 八日園 啓地
獣たちの夜戦
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58 その依頼、詳細は

 不知火さんが舞姫とセレアと俺の分のお茶を運び終えて、サキ達がいるところまで下がる。

 「にゃは。まあ、座るがよい」

 舞姫に促され、俺とセレアはお茶が置かれた場所へと座る。

 「それじゃあ、早速本題に入らせてもらうぞい。要らぬコトに時間を割いたからのう。にゃは!」

 舞姫の後ろにいる不知火さんが何かに耐えるように肩を震わせていて、サキが困った笑みを浮かべている。

 「お主等には伝えているが、今回の依頼は魔物の討伐、又は撃退じゃ」

 後ろの様子を知らずに舞姫は続ける。

 「……魔物のことについて詳しく聞かせてください」

 セレアが質問する。

 「うむ。今回、そこの……えーと?」

 「カケルです。相島翔」

 「そう、そこの少年に倒してほしい魔物は」

 …………名前教えた意味。

 「イノシシじゃの」

 「イノシシ……ですか?」

 セレアが困惑したようにおうむ返しをする。

 「そうじゃ。死人こそおらんが怪我人は騎士だけで二十を超えておる。中々の暴れん坊じゃ」

 笑えない話を舞姫はにゃは! と笑い飛ばす。

 それは俺一人加わって何とかなるレベルではない。

 「あの、正直そこまで俺強くないですよ?」

 何か勘違いをしているといけないので、前もってハードルを低く設定しておく。本当に強いわけではない。

 女神の加護者が持つプレアも大半はよく分からないことに使ってしまった。

 現状、それの恩恵を受けている要素と言えば、他の加護者は初めから備わっていたらしい言語の理解化のみである。

 今更だがあまりにも理不尽だ。

 「安心せい。お主を呼びつけたのにはちゃんと理由がある」

 そう言って舞姫は再度笑い声をあげる。ひとしきり笑い終わった後、目尻の涙を拭って話を再開する。

 「よいか? お主には拝殿の裏の本殿にある刀でイノシシを討伐してもらいたい」

 「刀……?」

 「なんじゃ、知らんのか? アルバーレ王国では特に有名な話じゃろ」

 俺の疑問顔に舞姫は意外そうな目で見る。

 「もしかして、七つの聖罰剣(せいばつけん)の話ですか?」

 「それじゃ、たぶんそれ! なるほど、あの剣はそっちでは聖罰剣と言うのか」

 「セイバ……何?」

 話についていけなくて、俺はセレアに尋ねる。

 「聖罰剣よ。大戦時代に入って危機的状況に陥ったリグルートを守るため、一人の青年が対他種族用の剣を七本造ったのよ。今は七本の内半分以上は行方不明だけどね」

 「そう、その青年は妾達ソウルビーストの間でも有名でな。当時奴隷だった先祖達を解放してくれたのじゃ。ソウルビーストをここまで繁栄させるキッカケを作った者として今でも敬われておるぞい」

 そんなにすごい奴がいたのか。生前はさぞ人気者だったに違いない。

 「……ああ、成る程。つまり、そういうことですね」

 俺が納得したと同時にセレアも理解したらしく、あっと声をもらす。

 「まあ、そういうことじゃ。今、本殿にはその青年が造ったとされる聖罰剣の一つがある。名を百獣王牙(ひゃくじゅうおうが)『ベスティア』、別名獣殺しじゃ」

 「そ、それは対ソウルビースト用の武器だったはずですけど……」

 剣の名前は知ってるセレアが当惑した表情を浮かべる。

 「それがどうかしたのか?」

 獣殺しと呼ばれるならイノシシもお手の物だろう。何がセレアを疑問視させているのか分からない。

 「だからソウルビーストには無類の強さを発揮するけど、それ以外にはただの剣よ。どこにでもある、ね」

 つまり、ソウルビーストでない限り大して意味をなさないということで、イノシシはソウルビーストではないから聖罰剣の対象の範囲外ということになる。

 「それならダメじゃないですか」

 俺が舞姫に向き直ると、舞姫が困ったように後頭部を掻いている。

 やがて彼女は意を決したように深く息をはく。

 何がそこまで彼女を憂慮(ゆうりょ)させているのかは知らない。しかし、ベスティアの話とは別件だということだけは彼女の表情から推測できた。

 「できれば秘密にしていてもらいたいのだがのう。何せこれは一部の連中にしか伝えておらん。先程怪我人が出たと言ったが、何も一方的にやられたわけではない。イノシシにも傷を負わせることもあったのじゃ。その血液からあるはずのないものが発見されたのじゃ」

 「あるはずのないもの?」

 俺が聞き返すと、舞姫はゆっくりと口を開く。まるで自分でもまだその真実が受け入れられないため自身も再度確認するかのように言う。

 「イノシシの血液から『獣性』の魔力反応があったのじゃ。つまり、あの魔物は元ソウルビーストの誰かということじゃ……」

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