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召喚者達はその異世界で  作者: 八日園 啓地
第1章 九日間の絆
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11 その閃雷、参る

 「どうも先生、ご無沙汰しています」

 「こちらこそ。……ライザー君の横にいる君は誰かな? 見た目からしてこちらの世界(・・・・・・)の人ではないね」

 ライザーがアキヒロの言葉に怪訝な顔になるが、俺にはその言葉の意味が分かる。

 「じゃあ、あなたも召喚されたんですね」

 「そうだ。ここに来てもう七年になる。君はいつからこの世界にいる?」

 「まだ一週間です」

 ライザーだけが話についていけていないため、益々表情が困惑の色を強くしていた。

 「そうか。まあ、ここも悪くないよ。ゆっくりしていくといい。…………それができたらの話だがね」

 アキヒロは右手にタブレットを持ち、操作する。すると、今まで待機していた機械兵達がライトソードを起動し、動き出す。

 「さあ、三対二だ。私は高みの見物といこうか」

 アキヒロの言葉を合図に機械兵達が俺とライザーに向かってくる。

 このまま戦ってもいいのだが、先程からの騎士達との連戦で、魔力を消耗している。ライザーがいるなら勝てるかもしれないが、セレアを助ける為の魔力がなくなってしまう。二人共消耗した状態になるのはまずいだろう。この後に今は姿が見えない中年貴族が控えているのだから。

 アキヒロからタブレットを奪うという作戦もある。アキヒロは自身の言葉どうり少し離れた所に移動しているため、それは難しい。

 「()るしかないか……」

 ここで負けたら、後のことを考えても無駄だ。目の前のことに集中しよう。

 俺が珍しく自分で考えて行動しようとすると。

 「カケル、なんの話をしていたかは理解できなかったが、ここは僕に任せるんだ」

 どこか自信有り()にライザーが言う。その表情からは自信と余裕が見て取れる。

 「道は僕がつくる」

 ライザーが『男子中学生が一度は言ってみたいセリフ集』(相島翔編集版)を言い、ライトソードを起動する。そして、構えて目を瞑り動かなくなってしまった。

 機械兵達がどんどん距離を詰めてくる。ライザーはまだ動かない。

 「ら、ライザー!? 敵が近づいて来てるんだけど!」

 ライザーは俺の慌てた様子に眼もくれず(目を閉じているから当たり前だが)、動かない。そして、一体の機械兵がライザー目掛けてライトソードを縦に振り下ろす。

 直前、ライザーがカッと目を開く。そしてライザーは物凄い速さでライトソードを振り、機械兵の腹を横一直線に切った(ライトソードなので本当に切れたわけではない)。

 直後、その機械兵は多少のタイムラグはあったが、重量感のある音を出して床に倒れた。

 その音を合図にしてライザーが素早く動き出す。あっという間に他の四体に近づき、斬り伏せていく。遂に機械兵達はライザーと一太刀も交えることなく、倒れてしまった。アキヒロも目を丸くしている。

 ………………なんだ今の? そういうのって召喚者の俺がやることじゃね?

 「……流石は『閃雷』といったところかな。二つ名に違わぬ実力だ」

 アキヒロが呟く。俺はそれのおかげでライザーの二つ名の由来に気づく。

 『閃雷』、その剣速とライザー自身の速さから取られた異名。

 ライザーは安全圏にいたアキヒロのところまで迫っていた。そして、ライトソードをアキヒロの首に突きつける。アキヒロは自分のタブレットを床に捨て、両手を挙げて降参のサインを出す。

 「チェックメイト、ですね」

 「私はただの一駒に過ぎない。よってこれはチェックメイトとは言えないね」

 アキヒロが芝居じみた様に笑う。その表情は同じ催眠にかかっている騎士たちと比べてどこか人間味を帯びていた。

 「では、貴方の王はどちらへ?」

 「後ろの扉が見えるか? あそこにいる。ああ少年、私のタブレットを拾ってくれるか? それを横の電子パネルに翳せば誰でも入れる様になっている。持って行き給え」

 アキヒロは自分の目で部屋の奥にある扉を示し、俺に声をかける。

 俺はライザーの方を見て、相手が嘘を言っていないか目で軽く相談してから、タブレットを拾う。

 ライザーは俺が拾ったことを確認すると、再びアキヒロを見る。

 「随分あっさり教えますね」

 「それほどあの人に心酔していない(・・・・・・・)ということだよ」

 「…………なるほど」

 ライザーはアキヒロの言葉になぜか納得した様だ。どういうことですか。

 「カケル、後は任せて先に行ってくれ」

 考え事をしていると、ライザーに指名された。先にというのは奥の扉のことだろう。

 「ライザーは行かないのか?」

 正直な話、ライザーがいてくれた方が助かる。一人で行くともしもの時の便りがいなくなる。先程のような強さを見せつけられたらなおさらだ。

 「僕はこの人を見張っておくよ」

 「見張らなくても大丈夫だよ。それは今、君が一番知っているはずだ」

 俺はアキヒロの言葉に疑問を抱く。どう考えても一番危なそうじゃないか。

 「万が一の時に備えてですよ」

 アキヒロがやれやれといった感じでため息をつく。確かにアキヒロはジャロウに操られているので、確かに野放しにはしておけない。

 「分かった。ここは任せ――」


 『急げ! 後はあの部屋しかない! だがあの部屋にはジャロウ様と所長がいる! あいつらからお二人をお守りするぞ!』


 俺の言葉を遮る形で研究室の入り口の向こうから声が聞こえてくる。

 騎士たちだ。どうやら、全部屋(ぜんへや)を探したらしい。

 「さあ、早く騎士たちの催眠を解いてもらえますか?」

 ライザーが慌てる事なく、アキヒロに尋ねる。

 「そのためには私のタブレットが必要だが、今そこにいる彼が騎士達に使えばスカーレット様の方がタイムオーバーになる可能性があるがそれでもいいのかな?」

 アキヒロの言葉に俺もライザーも返す言葉が出ずに、グッと言葉を詰まらす。

 「ライザー、援護する。まずは騎士たちから倒そう」

 「いや、君は早くスカーレット様のところに向かってくれ」

 俺の提案をライザーはバッサリ切り捨てる。

 「でも…………」

 「君がここに来た目的だろう。大丈夫さ、負けはしない」

 ライザーの言葉に俺は思わず黙りこむ。しかし、それはほんの一瞬だった。

 「……信じていいんだな」

 「もちろんさ。聖騎士の称号を背負っている以上負けは許されないからね。それに考えもある」

 ライザーは微かに笑う。俺はその言葉を信じて、扉まで全力で走る。

 扉が開け放たれる音がした。それと同時に、十数人の雄叫びが研究室の空気を震わせる。

 しかし、俺はそのまま振り返らずに走る。そして、アキヒロのタブレットを電子パネルに叩きつける様に置く。数秒かけて機械がデータを読み込み、やがて扉がゆっくりと動く。

 最終決戦の扉が開き、俺はそこに飛び込んだ。

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