「Do you know me ?」 一話
私は昨日、所謂誕生日を迎え17歳となった。高校生になっているから誕生日如きで浮かれはしないが、もう3年で成人かと思うと少し憂鬱だ。というか、眠い。
「江奈。雪音ちゃんが迎えに来たわよ。」
母の声が聞こえた。私の親友、雪音が登校を共にするため迎えに来たらしい。よく覚えていたなと思った私は悪くないはずだ。
自慢できることではないが、私はとても普通だ。普通過ぎて逆に忘れられるほどに。そのせいで親友も私のことを忘れる。だから、朝こうして雪音がやってくることも珍しいのだ。
「今日で10回目だね。ようやく2桁だ。」
「そうね。でも、去年よりは覚えている頻度が多いからそろそろ忘れられなくなるんじゃない?」
「だと嬉しいけどね。それじゃ、行ってきます。」
見慣れた扉を開けると母の言葉通りに雪音がいた。本当に2桁だ、2桁になったと、今更になって実感がわき、声が若干上ずる。
「おはよ、江奈。やっと10回目だね。…まったく、もう少し異常になってよ、忘れるの嫌だから。」
「異常になってって、すごいこと言うね。でも、嫌だよ、面倒だ。」
「言うと思ったよ……。」
雪音の顔に呆れの色が見える。
「あ、そういえばトキヤくんがNMに出るってさ。」
「…マジですか。」
トキヤくんこと、柊トキヤは私の好きなアイドルだ。先ほど述べたように私は普通故に男性アイドルに対してはミーハーと言えるだろう。トキヤくんが番組に出るならば何としてでも見なければ。などと考え込んでいると人とぶつかってしまう。人の多い中でよそ見をしていたのだからこちらに非がある。
「すみません、少し考え事をしていてよそ見をしていました。」
「いえ、気にしないでください。僕こそすみませんでした。」
はて。彼をどこかで見た気がするが…どこだったろう。




