閑話
「……ひょっとして、王子様?」
「へぁっ?」
「妖精の加護って知ってる?」
「ここが……妖精郷……」
「あなたは本当に、あの子にそっくりね」
「じゃあ、あなたはあたしのおばあちゃんなの!?」
「泣かないで、ごめんね。私の可愛い果実」
「もう黒い服なんて着ないー!!!」
「もう!ジューちゃんたら!」
「まあまあそう怒るでない、姉上」
「黙れ愚弟共」
「叔父はお前などと違って良い奴だ!」
「そうよ。あの子は少し気が弱いけど、あんな事をする子ではなかったわ」
僕は光に焦がれた。
「あなたのその赤い瞳が、優しく辺りを照らしてくれる」
「恋は良いぞ、恋は。兄上もしてみたらどうだ?」
「……私にはそんな暇などない」
「記憶がないの?」
「う、うん……名前も覚えてないんだ……」
「じゃああなたの名前、私が付けてもいいかしら?」
太陽が眩しい、緑が綺麗だ、水が美味しい。ーー全てが新鮮だった。
「ずっと、ここにいたい」
「……き、君が……その……す、好きなんだ!」
「ええ、私もよ」
「ずっと一緒にいましょうね」
古びたテーブルが、木目の床が、真新しいカーテンが、両手が、Dがーー全てが、赤く染まっていた。
「お前が、姉さんを殺したのか」
「お前、本当に最低な奴だな!」
「あなたなんて、だいっきらい!」
「……うん、ごめんね」
「私は君の……名付け親だから」
ーーどうかこの子が幸せでありますように。
「……お前、それ……」
「…………こっちが本当の色なんだって」
痛み、悲しみ、苦み、寂しさ、遣る瀬無さ。そういったものを、Dは味わい、噛み締め、咀嚼し、飲み込んでーーそうして彼女は一つ歳を取った。
彼女は一つ、大人になった。
親愛なるあなたへ。
「お母さん、外に誰かいるよ」




