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気を引き締めなければなりません

 部屋でまったりと紅茶を楽しむ。メルダは紅茶を淹れるのが上手で、わたしはすっかり彼女の紅茶の虜となっていた。

「うん。やっぱりメルダの紅茶は美味しいわ」

「ありがとうございます」

 控え目に礼を言うメルダ。使用人の割には彼女は堅苦しくなく、雑談を持ちかければ相手をしてくれるし、接し方も完全な主従関係といった感じではなく、少し友人同士のような感覚がある。人によっては気に入らないと感じるかもしれないこの距離感がわたしには心地よかった。まぁ、メルダは頭がいい子だから、相手によって距離感を調節するくらいお手の物なんだろうけど。

 このあとはユエンが私に薦めてくれた本を読もうかな。あ、でも庭を見ていいよって言われたから、メルダと一緒に散歩しようかな? 本は明日にして、今日はちょっと色々見て回ろう。夕食はなにかな? ちゃんと人参を抜いて調理してくれているし、味も文句のつけようがないくらい美味しい。やっぱり王族ってすごいなぁ。わたし、嫁いできてよかったかも…。

「って! 違う違う!」

「どうされたんですか?」

 いきなり大声を出したわたしに、メルダは僅かに驚いたような表情を浮かべながら訊ねた。

「このままじゃだめなのよ!」

 そうよ、わたしは最初、この話を破談にしようとしてたのよ? 今となってはそれは無理になってしまったけれど、それでも父が急に婚約の話を進めて、わたしの知らないところで勝手に決定してしまったのにはなにかあるはず…。わたしはその謎を解明しなければならない。

「なにか至らないことでもありましたか?」

 メルダは自分の給仕に不満があるのではと勘違いしたようだ。そんなつもりは全くなかったので、彼女の方を向いて小さく首をふった。

「ううん、違うの。わたしとユエンって急に婚約することになったじゃない?」

「ええ、まぁ…。そういった印象ですね」

「だから、そこにはなにかあったんじゃないかって思うの。もしかしたらわたしの父がなにか企んでいるのかもしれない」

「…そう思われても仕方がない状況ではありますしね。でも、アリシア様」

「ん?」

 メルダが少し困ったように微笑む。

「いくら私相手であっても、あまりそういったことは口にしないほうがよろしいかと」

 メルダに言われて、わたしははっとした。

 そうよね、これはわたしの中の推測に過ぎないのだし、事実であろうとなかろうと、周りになにか勘ぐられるのはいいことではない。メルダ相手だとぺらぺらと思ったことを話してしまうのはよくないかもしれない。

「今の聞かなかったことに…」

「ええ、そうですね。紅茶のおかわりはいかがですか?」

 わたしは彼女の有能さに感謝しつつ、紅茶のおかわりを頼んだ。

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