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会話相手はAIだけですが、なぜか文明再構築の設計図ができました 第五部  作者: マスター


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20/23

第68話 本人がいない場所で、本人のことを決めない

第68話です。


前回、防災訓練前の事前確認時間について、参加希望が五件に増えました。


三十分に詰め込まず、二日に分ける。

一件十五分。

間に五分の記録時間。

時間が合わない人には、書面や後日確認の入口を用意する。


足りない時間を、人の我慢で埋めない。


そう整理したところで、新しい相談が届きます。


本人は不安が強くて来られない。

家族だけで話を聞きに行ってもよいか。


家族の心配は大切です。


けれど、本人がいない場所で、本人のことを決めてよいのでしょうか。


今回は、「本人がいない確認」がテーマです。

 家族の心配は大切でも、本人の声を置き去りにしてはいけない。


 理央は、画面の一行目を見つめていた。


 ファイル名は、


『本人がいない場所で、本人のことを決めない.txt』


 昨夜、森崎さんから届いたメッセージ。


『二日目の方から、「本人は不安が強くて来られないので、家族だけで話を聞きに行ってもよいか」と連絡がありました』


 本人は来ない。


 家族だけが来る。


 不安が強い。


 防災訓練の参加方法を確認したい。


 気持ちは分かる。


 むしろ、とても自然だ。


 家族なら心配する。


 本人が不安で来られないなら、代わりに聞きに行こうとする。


 けれど。


 本人がいない場所で、本人の困りごとや行動を決めてしまうのは危うい。


 七つのチャット欄が開く。


 G。


 ミニ。


 クルス。


 リアル。


 ローラ。


 マナ。


 検索AI。


 ミニが言った。


『代理確認イベント……これは慎重モード!』


「うん。かなり慎重」


 リアルが即座に続けた。


『本人不在で家族が相談する場合、本人の同意、共有してよい情報、家族が聞ける範囲、本人の意思確認が重要。理央が判断してはいけない。防災担当・管理組合側で扱いを確認すべき』


「はい」


 ローラが言った。


『家族の心配を否定しないことも大事ですね。否定すると、相談そのものが閉じてしまいます』


 Gが続ける。


『つまり、家族の心配は受け取る。でも、本人の意思を飛ばして決めない』


 理央は、メモに新しい見出しを作った。


『家族だけで来る場合に分けること』


 一、家族が聞いてよい一般情報。

 二、本人の同意がないと扱えない情報。

 三、その場で決めてはいけないこと。

 四、本人へ戻して確認すること。

 五、担当者が持ち帰ること。


 五つ。


 今回は、五つに収まった。


 ミニが言った。


『五点、復活!』


「内容は重いけどね」


 まず、一つ目。


『家族が聞いてよい一般情報』


 訓練の日時。

 集合場所。

 事前確認時間の目的。

 無理な階段移動を求めるものではないこと。

 不安がある場合は防災担当へつなぐこと。

 実災害時の個別行動は、その場で決めないこと。


 これは、一般情報だ。


 本人がいなくても説明できる。


 次。


『本人の同意がないと扱えない情報』


 本人の詳しい困りごと。

 身体や生活状況に関わること。

 家族以外へ共有してよいかどうか。

 カードの内容。

 本人が参加するかどうかの判断。


 ここは、慎重に。


 次。


『その場で決めてはいけないこと』


 本人の訓練参加の可否。

 実災害時の避難方法。

 誰が助けに行くか。

 本人の意思を確認しない支援登録。

 家族だけの判断での個別対応。


 理央は、ここで少し手を止めた。


 助けたい気持ちがあるほど、先に決めたくなる。


 でも、それが本人を置き去りにすることがある。


 クルスが言った。


『善意が先に走ると、本人の声が後ろに置かれてしまうのですね』


 リアルが言った。


『比喩として妥当。ただし家族支援を否定しないことが重要』


 理央は、森崎さんへ送る文案を作った。


『ご家族だけで一般的な訓練の流れを聞くことは可能かもしれません。ただ、本人の詳しい困りごとや参加方法、実災害時の個別行動を、本人不在で決める形にはしない方がよいと思います。ご家族の心配は受け止めつつ、本人が何を共有してよいと思っているか、どこまで聞いてよいかを確認する必要がありそうです。』


 送信。


 数分後、森崎さんから返信。


『ありがとうございます。こちらでも同じ認識です。家族だけの場合は、一般情報の説明と、本人に確認していただく事項の整理に限定しようと思います』


 理央は、少し息を吐いた。


 森崎さんは、もう線を引いてくれている。


 ただし、その線を紙にしないと、当日ぶれる。


 マナが言った。


『家族のみ参加時の確認メモが必要です』


「だよね」


 理央は、新しいファイルを開いた。


『家族のみ参加時_確認メモ_v1』


 最初の一文。


『家族の心配を受け止める。ただし、本人の意思を確認しないまま、本人のことを決めない。』


 次に、三つの枠。


『説明できること』


『確認してもらうこと』


『その場で決めないこと』


 説明できること。


『防災訓練の日時、集合場所、当日の流れ。

事前連絡カードは任意であること。

訓練では無理な階段移動を求めるものではないこと。

不安がある場合は、防災担当・管理側へつなぐこと。

実際の災害時の対応は、災害の種類や建物・設備状況により異なること。』


 確認してもらうこと。


『本人が、どの情報を家族から伝えてよいと思っているか。

本人が、訓練に参加したいのか、見学したいのか、今回は案内だけ知りたいのか。

本人が、事前連絡カードを使いたいかどうか。

本人が、家族同席で話したいかどうか。』


 その場で決めないこと。


『本人の参加可否。

実災害時の個別行動。

支援対象としての登録や扱い。

本人の困りごとの共有範囲。

当日スタッフへの個別情報共有。』


 リアルが言った。


『妥当。ただし「支援対象としての登録」という言葉は制度的含意があり得るため、担当者側で表現確認が必要』


 理央は、表現を少し変えた。


『本人の同意が確認できない個別支援の扱い。』


 これなら少し柔らかい。


 森崎さんへ送る。


 返信。


『この三分類で進めます。家族向けの案内文も作ります』


 午後。


 小会議室で、短い打ち合わせが開かれた。


 森崎さん。


 理事長。


 管理人。


 自治会長。


 理央。


 議題は、


『本人が来られない場合の事前確認』


 理央は席に着く前に、いつもの言葉を言った。


「私は、家族相談や個別対応の判断はできません。今日は、文面と、本人の意思が置き去りにならないようにする視点だけお伝えします」


 森崎さんが頷く。


「はい。今日はその視点が必要です」


 理事長が少し難しい顔をして言った。


「家族だけで来るのを断るのは、冷たい気もします」


 それは分かる。


 家族が心配している。


 本人が不安で来られない。


 その時に「本人がいないなら駄目です」と言えば、入口が閉じる。


 でも、何でも話してよいわけでもない。


 ローラが言った。


『断るか受けるかではなく、範囲を分けるんですね』


 理央は言った。


「ご家族だけで来ること自体を否定する必要はないと思います。ただ、その場で本人の参加方法や個別対応を決めるのではなく、一般情報を説明して、本人に確認することを持ち帰ってもらう形がよさそうです」


 森崎さんが頷く。


「はい。家族向けには、そう伝えます」


 管理人が聞く。


「では、家族の方が『本人は階段が無理です』と言った場合は?」


 会議室が少し静かになる。


 重い。


 階段が無理。


 本人が言ったのか。


 家族がそう思っているのか。


 どちらなのか。


 しかも、その場でどうするかを決められる話ではない。


 リアルが言った。


『本人の状態に関する情報であり、本人の意思確認が必要。運営側は一般的案内と担当者確認に留めるべき』


 森崎さんが答えた。


「その場合は、『ご本人の不安やご希望を確認したうえで、事前連絡カードまたは別途確認でお知らせください』と返します。家族の方の心配としては受け取るけれど、本人の意思として確定しない」


 理央は、その言い方をすぐメモした。


『家族の心配として受け取る。本人の意思として確定しない。』


 今日の中心に近い。


 ミニが言った。


『また強い一文!』


 理事長が頷く。


「なるほど。家族の話を無視するわけではないが、本人の意思とは分ける」


 自治会長が言った。


「これは、今後も必要になりそうですね」


 理央は、少し怖くなった。


 今後も。


 防災訓練だけではない。


 高齢者。


 子ども。


 体調が不安な人。


 家族。


 近所の人。


 善意。


 心配。


 同意。


 本人の声。


 生活圏の設計は、人の関係にも入り込んでいく。


 軽くは扱えない。


 森崎さんが、家族向けの案内文を読み上げた。


『ご家族のみで事前確認へお越しいただく場合は、防災訓練の一般的な流れや、当日の参加方法についてご説明します。ご本人の参加方法や個別の対応については、ご本人の意向を確認したうえで、必要に応じて防災担当・管理側で確認します。この場で、ご本人不在のまま個別の対応を決定するものではありません。』


 理央は、静かに頷いた。


 大事なことが入っている。


 一般的な流れは説明する。


 個別対応は、本人の意向確認が必要。


 本人不在で決めない。


 ただ、少し硬い。


 ローラが言った。


『最初に、心配している気持ちを受け取る一文があるとよさそうです』


 理央は言った。


「冒頭に、『ご本人の参加について心配な点がある場合は、ご家族から一般的な流れを確認していただくこともできます』と入れると、少し入りやすいかもしれません」


 森崎さんが書き足す。


『ご本人の参加について心配な点がある場合は、ご家族から防災訓練の一般的な流れを確認していただくこともできます。』


 そのあとに、先ほどの範囲説明。


 冷たさが少し和らいだ。


 できることを先に置く。


 そのあとで、できないことと、つなぐ先を置く。


 第65話で学んだことだ。


 理央はメモした。


『本人不在の確認では、できることを開き、決めないことに線を引く。』


 会議の終盤、自治会長が言った。


「家族が本人の代わりに事前連絡カードを書く場合はどうしますか」


 また来た。


 代理記入。


 代筆。


 本人の同意。


 理央は、前に作ったQ&Aを思い出す。


『本人の知らないところで困りごとを記入することは避けてください。』


 森崎さんが言った。


「そこは、Q&Aの文面に合わせます。本人が記入しにくい場合は、本人の意向を確認したうえで、代筆について担当者へ相談。本人の知らないところで書かない」


 理事長が頷く。


「本人の知らないところで書かない、は大事ですね」


 管理人が言った。


「家族が心配しすぎて、先回りしてしまうこともありますから」


 理央は、小さく頷いた。


 先回り。


 それは、悪意ではない。


 心配だ。


 でも、心配は本人の声を追い越すことがある。


 理央はメモした。


『心配は、時々、本人の声より先に走る。』


 その日の夕方、家族向けの案内文が個別に送られた。


 理央は、直接相手を知らない。


 知る必要もない。


 森崎さんから、個人情報を除いた形で連絡が来た。


『ご家族の方から了承をいただきました。本人に確認したいことを持ち帰る形で、一般情報の確認に来られます』


 理央は、ゆっくり息を吐いた。


 よかった。


 家族の入口は閉じなかった。


 でも、本人を置き去りにもしていない。


 少なくとも、今のところは。


 夜。


 理央は今日の記録をまとめた。


『本人がいない確認_会議メモ』


 決まったこと。


『一、ご家族のみで来る場合は、一般的な訓練の流れを説明する。

 二、本人の参加方法や個別対応は、本人の意向確認が必要。

 三、本人不在のまま個別対応を決めない。

 四、家族の話は「家族の心配」として受け取り、本人の意思として確定しない。

 五、代理記入や代筆は、本人の意向確認を前提にする。』


 気づいたこと。


『一、家族の心配は大切でも、本人の声を置き去りにしてはいけない。

 二、家族の心配として受け取る。本人の意思として確定しない。

 三、本人不在の確認では、できることを開き、決めないことに線を引く。

 四、心配は、時々、本人の声より先に走る。

 五、本人がいない場所で、本人のことを決めない。』


 Gが言った。


『今日はかなり大事な境界線だったね』


 ミニが言った。


『代理相談ルート、慎重に開通!』


 リアルが言った。


『ただし、実際の事前確認時間で、家族が本人の意思として話し始める可能性はある。その場での聞き分けが重要』


「うん」


 紙の上では、分けた。


 家族の心配。


 本人の意思。


 一般情報。


 個別対応。


 でも、実際の会話では混ざる。


 家族は、本人のために話す。


 担当者は、聞き取ろうとする。


 そこに、本人の声がないまま、話が進みそうになるかもしれない。


 その夜、森崎さんから追加のメッセージが来た。


『もう一件、確認時間の参加方法について連絡がありました。こちらはご本人も来られるそうですが、ご家族が同席されます』


 理央は、少しだけ安心しかけた。


 本人も来るなら、よいのでは。


 そう思った瞬間、続きが表示された。


『ただ、ご家族の方が「本人は緊張すると話せないので、こちらで全部説明します」と言っています』


 理央の手が止まった。


 本人は来る。


 でも、家族が全部説明する。


 本人がいるのに、本人の声が消えるかもしれない。


 ミニが、静かに言った。


『次は、本人の前で本人の声が消える問題……』


 ローラが続けた。


『本人がその場にいても、話せているとは限らないんですね』


 リアルが言った。


『本人同席時も、本人の意思確認、発言しやすい場づくり、家族の代弁範囲を確認する必要がある。理央が判断してはいけない』


 理央は、新しいファイルを開いた。


『本人がいるのに、本人の声が消える.txt』


 一行目。


『同席していることと、参加できていることは違う。』


 そして、保存した。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


第68話では、「本人がいない確認」がテーマでした。


本人は不安が強くて来られない。

家族だけで話を聞きに行ってもよいか。


家族の心配は自然です。


本人が来られないなら、代わりに聞きに行こうとする。


それは悪いことではありません。


けれど、本人がいない場所で、本人の参加方法や個別対応を決めてしまうのは危うい。


今回の重要な気づきは、次の一文です。


家族の心配は大切でも、本人の声を置き去りにしてはいけない。


そしてもう一つ。


家族の心配として受け取る。

本人の意思として確定しない。


理央たちは、家族だけで確認に来る場合の範囲を整理しました。


家族へ説明できるのは、防災訓練の一般的な流れ。

日時、集合場所、当日の参加方法、つなぎ先。


一方で、本人の参加方法や個別対応は、本人の意向確認が必要です。


本人不在のまま、個別対応を決めない。


代理記入や代筆も、本人の意向確認を前提にする。


本人の知らないところで困りごとを書かない。


今回のもう一つの気づきは、次の一文です。


本人不在の確認では、できることを開き、決めないことに線を引く。


家族の入口は閉じない。


でも、本人の声も置き去りにしない。


そのための線引きでした。


そして最後に、新しい問題が見えてきます。


本人も事前確認に来る。

家族も同席する。

ただし、家族が「本人は緊張すると話せないので、こちらで全部説明します」と言っている。


本人がその場にいても、本人の声が届くとは限りません。


次回は、「本人がいるのに、本人の声が消える」ことがテーマになります。


同席していることと、参加できていることは違う。


理央はまた、声になりにくい意思をどう扱うのか、その境界線に向き合います。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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