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焼き立てのパンは幸せの香りがする

あたしの家の朝は早い。


6時になったら、身支度を整えてダイニングに行く。

6時半くらいになると、近所の子供たちの年長組がやってくる。


アンナ姉は14歳、料理が上手でハキハキしている。

濃いこげ茶の艶のあるストレートヘアを、綺麗なボブに切りそろえ、

キリッとした意思の強そうな瞳に、スレンダーな割に発育がいいので大層モテる。


マックス兄は13歳で、家のパパに憧れて体を鍛えてるので、

歳の割にガッチリしていて大人っぽい。

だけど内面はてんで子供だ。

チビを連れてカブトムシ取りに行ったら見つけたら誰よりもはしゃいで池に落ちた。


キリエはあたしと同い年。口数が少ない、大人しいそうに見えるタイプだけど、

よく笑うし明るくて優しい、

マックス兄とあたしがカブトムシ取りあって喧嘩した時も優しく見守ってくれてた。


この3人(と、普段はママと)で、皆の朝ごはんを用意するのだ。


親と朝ごはんを食べたい、という子は家で食べてくればいいのだが、マリエルの方針で朝ごはんは贅沢に、と種類豊富に用意し、栄養バランスもしっかり考えているので、殆どの村の子供は一緒に朝ごはんを食べるのだ。時々寝坊した親が御相伴に預かる事もある。


村の子供は全部で9人。

来年にはもう2人増える予定だ。


具沢山のスープや、トーストに、ベーコンエッグ、牛乳にフルーツなど、沢山の料理を運んで行く。


行先は、家と繋がっている別の建物で、小さな体育館みたいな雰囲気になっている。


そこに大きなテーブルがあって、皆で食事を取るのだ。


子供を預かって貰うのなら、と村の大工さんや、親御さんが集まってユーリの小さい時に建ててくれたのだ。


日当たりが良くて、雨が降っても皆で遊んだり、歌ったり出来るので皆大好きな場所で、『おっきい部屋』と呼んでいる。


朝食の準備が整った頃、年中、年少組が来る。

年中が小学生くらい3人、年少が保育園児くらい2人だ。


皆でワイワイしながら食べるご飯は美味しい。


ここでは、年下の子もいるのでユーリもお姉さんなのだ。

下の子の面倒は年上が見る。


「ほら、ブリジット、豆はウインナーと一緒に食べちゃいな」


隣にすわった五歳のブリジットは、好き嫌いが多いのが困り物だ。


「嫌ー、だって豆苦手なんだもんー」


「ウインナーと一緒にばって食べて、すぐ飲み込んだら大丈夫だって。ママが豆は子供の脳にいいから食べろってうるさいんだよ!」


「えぇ〜、だってあんまり噛まないと飲み込めない〜」


「あー…じゃあ、ジャムかけなよ。ブリジット甘いの好きじゃん。甘くしたら食べれるって」


「えっちょっと、ヤダ!ユーリ姉やめて!もう!これトマトのスープなんだよ!」


「トマトなんて赤いから苺と一緒だよ!ほら、騙されたと思ってやってみって!!」


「騙されない!もう!食べるから」


プリプリしながらスープの豆を食べるブリジットに、内心ほくそ笑みながら、食事を楽しみ工夫を、とママに言われた事を思い出した。


あたし…子供の頃、皆でご飯を食べ出すまでママの手料理食べてたからな…もしかして馬鹿舌なのかな…


ちょっと不安になったけど、


あたしに出来る事、一個思いついた。



   ****************


お昼は朝に仕込んでおいたパンもメニューね加わったんだけど、一つ工夫をした。


「ヘイ!ブリジット!食べて!」


パン作りには定評のあるユーリなので、嬉しそうにブリジットが近づくと、焼きたてパンを口に突っ込まれた。


「熱い!もう!ふふっ」


乱雑なユーリにプリプリ怒ったが、ふんわりしたパンの感触と甘い香りについ顔が綻んでしまう。


パンの表面をかじると、中に何かはいっているのがうっすら見える。


「中何か入ってる。白い?くだもの?何これ?」


惣菜パンや菓子パンという文化があまり根付いていないので、具のあるパンは珍しいのだ。


「豆砂糖で煮たんだ」


「はー?!豆甘くしたのー??何で?豆だよ?!ヤダー!!」


苦手な豆を、未知の味付けにされてブリジットは素直に拒否反応を示す。


「ブリジット、良く甘いのじゃなきゃヤダって言うじゃん!甘くしてやったんだから食べれるって!パンと一緒にばって食べればいけるから!」


「もーちょっと、最悪なんだけど!ユーリ姉の塩かけてダメなら砂糖って発想ホントやめた方がいいからね!」


ギャーギャー2人で言い合っていたら、アンナ姉に嗜められた。


「あんた達、あんまり騒いでたらマリエルさんに叱られるよ。ブリジットも、せっかくブリジットの為にユーリが作ってくれたんだから食べてあげな。

…どうしてま無理だったら、あたしが手伝ってやるから。」


アンナにフォローされ、しぶしぶブリジットはパンをかじる。


「あ…思ったよりは食べれる…かな?うーん、でもやっぱ豆!」 


辛口評価だったが、それでも半分は食べた。


ブリジットが食べやすいようにと気遣ってくれたのは嬉しかったのだ。


「あたしは結構好きだけどな。インゲン豆って甘くしても食べれるもんなんだ。ユーリの何でも塩か砂糖ぶっかけるのも、たまには役に立つじゃん」


「んー、でもこれ、ユーリ姉のパンが美味しいから食べられるんだと思うよ?あんなにパンバッタンバッタン捏ねるから、フワッフワのもっちりパンになるもんね」


「あー、あのキッチンで捏ねててもおっきい部屋に捏ねる音響くやつねー。パンに何か恨みでもあんのかってくらい捏ねれるの、ユーリくらいだよねー」


あっはっはと2人に笑いながら貶されているのか褒められているのかわからない感想を述べられ、


「え、あたしなりに頑張ってみたんだけどひどくない?」


ちょっとだけ落ち込んだユーリだった






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