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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
一章 ムルマンスクの孤児
3/434

3 スライム1

 田中が学校を卒業して十数年。


 その間の社会人生活が「異世界転移部」で得たの知識のほとんどを田中から失わせていた。


(まぁいいさ。仮に知識を持っていたからといって、うまく使えたとは限らないし)


 生前の田中は博覧強記というタイプではない。

 記憶頼りの生半可な知識では、かえって大怪我することだってありうる。


(配られたカードだけで、なんとかやっていくしかないさ)


 森に着いたグレアムは心の中で、部下達に出てくるように呼びかける。


 葉の裏から。

 木のウロから。

 土の中から。


 グレアムの周囲に粘体状の拳大の魔物――スライムが現れる。


 枯葉色や土色、緑色なのは迷彩のためだろう。


 それが数百匹。


 スキル「スライム使役」。


 グレアムに配られた唯一のカードだった。


(スキルのある世界でよかった。これが無かったら本当に詰むところだった)


 この力を与えてくれた存在――神がいるなら感謝してもいい。


(この世界のガイダンスまでしてくれれば、なお良かったんだんが……、まぁ、俺じゃ無理か)


 物語ではガイダンスをしてくれるのは、基本、善良な人間に対してだ。


 前世で、お世辞にも良いことをしたとは言いにくい自分では、出てくるのは悪魔ぐらいだろう。


(益体もないことを考えた)


 気を取り直してグレアムはスライム達に問いかける。


 お前達、俺を呼んだか?


 グレアムは「スライム使役」の効果で、孤児院から森の外縁部まで――約二km程度の範囲内にいるスライム達と意思疎通ができるのだ。


 とはいえ、スライム達から返る言葉は「はい」か「いいえ」がせいぜいで、それ以上の言葉を望むと途端に意味不明になる。


 だから、スライムに質問する時はこうして二者択一で返せる質問をする。


 否、否、否。


 そろって否定の意を返すスライム達。


(誰かに呼ばれたような気がしたのは気のせいだったか。……あれのせいで俺も神経が高ぶっているのかね。まぁいい。仕事しよう)


 スライム達に集めさせておいた枯れ木をカゴに入れていく。


 何匹かのスライムは果物も持ってきていた。


 グレアムはそれを一つ食べると、残りをカゴに入れた。


 孤児院の子供達への土産にするつもりだった。


 一日分の仕事を十分で終えると、後はいつもの日課のこなす。


 スライム研究。


 前世では空想の世界でしか存在しなかったこの魔物の危険度は最低とされている。


 魔物の中でも最弱。


 普通のネズミ一匹にも勝てない。


 そういった世間の評価は、実際にグレアムが検証したところ、妥当で正当なものであることがわかった。


 一度、ネズミに戦いを挑ませてみたが、激しい怯えの感情がスライム達から伝わってきた。


 命じれば戦うが、グレアムは嫌がることはさせたくない。


 だが、今後、グレアムが生き延びるには必要な検証だ。


 なので、ネズミの口と足を縛りスライムに挑ませてみた。


 すると怯えながらも戦おうとするが、ネズミが身動きするたびに後退して戦いにならない。


 ようやく戦いを始めれば、牙も爪もないスライム――攻撃方法は獲物を消化する酸を吐きつけるか獲物の顔に貼り付いて窒息させるしかないが、酸は致命傷となるほど強力なものでもないし獲物に貼り付いても簡単に引き剥がせる。


 グレアムは早々にスライムを戦わせることを諦めた。


 おおよそ戦うには向かない魔物だった。


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