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第101話「ミコちゃんの嫉妬」

 み、ミコちゃんがわたしに殺意をっ!

 どーして?

 わーい?

 わたし、どっちかと言えば、ミコちゃんのお手伝いだってしていますよ!

 なんでわたしをにらむんでしょ…こわいっ!


「モフモ~フ」

「コラー!」

 チョップですチョップ。

 この赤毛の仔キツネは、何度言ってもわかりませんね。

「レッド、人の嫌がる事をしちゃだめでしょ!」

「ポンねぇよろこんでいます~」

「怒ってるんです」

「げんきになってますよ」

 朝イチにモフモフやられると……確かに元気になるでしょうか?

 イヤイヤ、元気じゃない、怒ってるんです。

「ダメなものはダメなんです!」

 チョップ! チョップ!

 ああ、レッド、ニコニコしています。

 むー、本気チョップ出せないからしょうがないですね。

 わたし、レッドの頭をグリグリしながら、

「もう充分モフモフしたでしょ、学校の準備してください」

「はーい!」

 元気な返事をして、レッドは行っちゃいました。

 しっかし、なんでわたしのしっぽなんでしょう?

 みどりのしっぽも同じくらいモフモフな気がするんだけど。

 って、レッドが行っちゃったのに、背後に殺気を感じます。

 ハッとなって振り向いてみるけど……誰もいませんね。

 気のせいかな?

 レッドがみどりと一緒に戻って来ました。

「ポンねぇ、どうかしましたか?」

「いや……レッドは今、帰って来たところだよね」

「ですね~」

 わたし、みどりを見ます。

「何よ、アンタ!」

「みどりも今来たばっかりですよね」

「そうよ、文句ある?」

「いや……」

 わたし、みどりをじっと見つめます。

 見つめられて一瞬モジモジするみどり。

 でも、すぐにいつものツンツンモード。

「アンタ、何なのよー!」

「いや……みどりはいつも不機嫌だなって」

「別に不機嫌じゃないわよっ!」

「いつもツンツンしてるじゃない」

「アンタがじっと見つめるからでしょー!」

「別に……いいじゃないですか」

「見せ物じゃないのよー!」

 みどり、わたしをポカポカ叩きます。

 ふふん、子供パンチなんか痛くないもーん。

 でもでも……

 さっき一瞬感じた殺気はみどりやレッドじゃないですね。

「殺気」が勘違いだったんでしょうか?

 いや、すごい殺気を感じたんです。

 わたし、野良だったから、こーゆーのはちゃんと感じ取れるんですよ。

 レッドかみどりって一瞬思ったけど違います。

「!!」

 考え事してたら、またしっぽに触られている感触が!

 見ればレッドとみどりがモフモフしてます。

「コラー!」

 二人ともチョップです、チョップ。

「さっきやっちゃダメって言ったでしょーっ!」

 って、わたしが怒鳴ったら、みどりが真面目な顔で、

「アンタのしっぽ、すごいモフモフね」

「ぼくもそーおもいまーす」

「真面目に言ってもダメなものはダメなんです!」

 モフモフされながら感じます!

「殺気」です「殺気」!

 レッドとみどりにチョップをあびせながら、ゆっくりと目を動かします。

 柱の陰に発見しました。

 み、ミコちゃん!

 柱の陰からこっちを見ているミコちゃんの目は殺気で燃えてるんです。

 め……目が合っちゃいました。

 ミコちゃん柱の陰から出て来て、わたしの方にやって来ます。

「ほらほら、レッドちゃんもみどりちゃんも学校でしょ」

「はーい」

 二人はミコちゃんに連れられて行っちゃいます。

 わたし、モフモフから解放されたうれしさよりも……

 ミコちゃんの視線から解放された方がうれしいの!

「……」

「!!」

 そんな事思ったら、一瞬ミコちゃんがこっちを見ました。

 冷たい、さめた、刺すような目です。

 わ、わたし、なにか怒らせるような事やったんでしょうか?

 身に覚えがありませんっ!


「わたし、ミコちゃんがこわい……」

 お茶の時間にコンちゃんに相談です。

「ミコは最初からこわいに決まっておるのじゃ」

「それはコンちゃんは昔悪さしたからでしょ」

「で……ポンは身に覚えないのかの?」

「わたし、ミコちゃんに迷惑かけてないよ」

「しかし目が怒っておるのじゃろ?」

「朝は怒ってた」

「ポンの死ぬ日も近いのじゃ」

「た、たすけて……」

「しかし本当に身に覚えないのじゃな」

 すると窓の外にレッドとみどりの姿。

 レッドはミコちゃんと手をつないでて……

 みどりは保健の先生とおしゃべりしながら歩いています……

 早速四人の分もおやつを準備です。

 でもでも今日は残り物のパンだからお茶の準備だけですね。

「ただいま~」

 元気な声、同時に駆けて来る足音。

「モフモーフ」

「れ、レッド、いきなりですか」

 わたし、お茶の準備で手が離せないのに。

 もうモフモフされっぱなしです。

 あああ……みどりと保健の先生も一緒です。

「アンタのしっぽ、モフモフね!」

「本当、病みつきになるモフモフね」

「先生が一緒になって人の嫌がる事やっちゃダメでしょーっ!」

 って、レッドやみどり、保健の先生の間を光る物が!

 わたしの胸元に当たった……と思ったけどスルー。

 みんなびっくりしてポカンとしてるの。

 わたしはドッキドキだけどね。

 い、今のは「ゴット・アロー」コンちゃんやミコちゃんの術です。

 発射された方を見ても……コンちゃんがお茶を飲んでます。

「コンちゃんっ!」

「なんじゃ?」

「今、ゴット・アロー撃ったよね!」

「はあ?」

 む……しらばっくれて……って思ったけど、本当に違うみたいです。

 ミコちゃん……ミコちゃんです!

 ミコちゃんの術はわたしには効かないんですよ!

 見回せば……柱の陰からわたしを見てます。

 怒ってる目でこっちを見てるの。

『コンちゃんたすけてーっ!』

『知らぬ、死ね』

『わたし、先輩ですよ』

『むー、しかし、原因わからんのではのう』

『聞いたら教えてくれるかな』

『聞くのがこわくないかの』

『こわいよー!』

 って、保健の先生がお茶を持ってきてくれました。

 みどりがパンをテーブルに置きます。

 レッド、モフモフしてます。まったくモウ!

 そんなわたしの胸元にゴット・アロー!

 でもスルーしてコンちゃんに命中です。

 ああ、コンちゃん爆発してすすけてます。

 レッドもみどりも保健の先生もびっくり。

 わ、わたし、もう聞くしかないです。

「あ、あの……ミコちゃん」

「……」

「今、わたしを狙ったんだよね?」

「……」

「わたし……なにか恨まれるような事したっけ?」

 ミコちゃん、柱の陰から出てきました。

 ぽろぽろ涙をこぼしまくり。

「な、なんで泣いてるの」

「だ、だってー!」

 泣いているミコちゃんにレッドとみどりがとりつきます。

「なかないでー」

「何でないてるのよっ!」

 保健の先生もハンカチを出してくれます。

「うう……だってだってー!」

 ミコちゃん、レッドとみどりを抱っこして、

「ポンちゃんいつもレッドちゃんと仲良くしてるもん」

「はあ?」

「いつもしっぽでモフモフ」

「……」

「私もしっぽが欲しい、レッドちゃんにかまってほしい」

 じゅ、充分一緒じゃないです?

 だって毎晩一緒に寝てるでしょ?

 それにモフモフは嫌なんですよ!

「ポンちゃんいつもレッドちゃんを独り占めして!」

 わたしはできれば敬遠したいところです。

 でもでも、なんですか……みんなの視線がわたしを責めてる。

「ポンねぇだめですよ」

「アンタ、ちょっとは遠慮しなさいよ!」

「ミコちゃんの気持ち、わかるわ~」

 レッドもみどりも保健の先生も、なんですか、わたしを悪者扱いして!

 ゴット・アローですすまみれのコンちゃんも、

「ポン、おぬしが悪い」

「ど、どーせわたし、悪者ですよっ!」

「そうじゃそうじゃ、おぬしが悪いのじゃ!」

 コンちゃん、ダンボールを持って来ました。

 今夜はダンボールなんですね、とほほ。

「ミコねぇ、なかないでー」

「そうよ、ミコちゃん、泣いちゃだめよ」

 レッドとみどりが慰めています。

 でもミコちゃん涙が止まりません。

「だ、だって……レッドちゃん、しっぽがいいんでしょ?」

 ミコちゃん、みどりのしっぽをモフモフしながら、

「わたし、人間だからしっぽはないし……」

 って、保健の先生が胸を張ります。

「それなら、この前、店長さんに言われて作ったのがあるわよ!」

「!!」

 みんなびっくりです。

 保健の先生、ちょっと戸惑った顔でわたしを見ながら、

「ポンちゃん、スーパーに買い物に行ったんじゃないの?」

「え、えっと……えーっと……」

 スーパーに買い物……思い出しました!

「店長さん、猫のしっぽを付けていました」

「コスプレ用にしっぽを作ってあるのよ~」

 保健の先生、白衣の中からあの「猫のしっぽ」を出します。

 便利な白衣ですね。

 ミコちゃんの腰に「猫のしっぽ」ポンと装着。

 このしっぽ、すごいんです。

 本物みたいにうねうね動くの。

 黒くて細長いしっぽ。

 レッドとみどり、さわってます、握ってます。

「モサモサしてます~モサモサ」

「気持ちいいわねっ!」

 レッドとみどりも気に入ったみたい。

 ミコちゃんにも笑顔が戻りました。


 でも、わたしはダンボールの夜なんだよなぁ~

 ミコちゃんを泣かせたからなんだって。

 泣きたいのはこっちです。

 ぐっすん!


「チュウチュウ」

「レッド、朝のキッスはいらないですよ」

「おめざめですかな?」

「普通に起こしてください」

「えんりょせずとも」


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