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第102話「シロちゃんの弱点」

 ミコちゃんの弱点は長老みたい。

 コンちゃんの弱点はきっとミコちゃんだよね。

 たまおちゃんは百合巫女…

 シロちゃんの弱点とはなんでしょう?

 撃ちたがりの警察の犬…手ごわい予感です。


 夢の中ですね。

 え、なんで夢ってわかるかって?

 目の前に店長さんがいるんだけど……

 わたしを熱っぽい目で見つめているの。

「ポンちゃん、瞳を閉じて」

 夢ってわかっていても、ドキドキしますね。

 せっかくですから、夢にのっちゃいましょう。

 肩に重ねられた店長さんの手、感じます。

 近付いて来る店長さん、まぶたを閉じていたってわかるの。

 触れる唇とくちびる。

「チュウチュウ」


「チュウチュウ」

「……」

 目覚めるとレッドがわたしにキスの最中。

 レッドの横にはみどりもいますね。

 みどりはわたしをじっと見つめているの。

「チュウチュウ」

「レッド、朝のキッスはいらないですよ」

「おめざめですかな?」

「普通に起こしてください」

「えんりょせずとも」

「怒ってるんですよ」

 みどり、腕組みして、

「アンタ、早く起きなさいよっ!」

「みどり……みどりもレッドにキスされた?」

「うん……それがどーしたって言うのよっ!」

「なんだかレッドにキスされると、キスが軽く感じませんか?」

「朝のあいさつに軽いもなにもないでしょっ!」

 わたし、さっさと布団を畳んで押入れに片づけます。

 そんなわたしのしっぽをレッドがモフモフ。

 レッドには後で頭グリグリですね。

 と、みどりが服を引っ張ってます。

 なにかな?

「ちょっとアンタ!」

「なに、みどり?」

「ミコちゃんが呼んでるわよ」

「は~い」

 みどりに引っ張られて台所のミコちゃんのもとへ。

「ミコちゃん、おはよ~」

「あ、ポンちゃん、おはよう」

「なに、用事?」

 ミコちゃん、わたしを見て、それから一緒のレッドとみどりを見ます。

「みどりちゃんとレッドちゃんにはこれ」

 手渡すアンパン……昨日の残りです。

 ミコちゃん手渡しながら、

「『二人』で祠の掃除、お願いね」

「は~い」

「そんなの、朝飯前よっ!」

 レッドとみどり、アンパンを持って出て行きました。

 わたしとミコちゃんだけになります。

 ミコちゃん、わたしを見て、

「たまおちゃんとシロちゃんを起こして来てくれない?」

「うん……質問!」

「何、ポンちゃん?」

「レッドとみどりじゃダメだったの?」

「行けばわかるわよ、はい、これ」

「?」

 ミコちゃんがくれたのは一枚のお札。

 それを持ってたまおちゃん達の寝ている部屋へ。

 って、ふすま、開きません。

 さっき渡されたお札、これがミソでしょ。

 きっと封印されてるんでしょうね。

 ペタっと貼ったら、ふすまが光りました。

 今度は力を入れなくても横にすべります。

「あー!」

 裸で寝ているシロちゃん……別に裸で寝ているんじゃなくて、パジャマ半分脱がされてるんです。

 たまおちゃん、そんなシロちゃんに抱きついて、首筋にむしゃぶりついています。

 わたし、ふたりをゆすって起こします。

「ほらー、二人とも、起きてー、朝ー!」

 二人とも低血圧?

 目をこすりながらモソモソ起きだしました。

 し、しかし朝から見せつけられました。

 たまおちゃんの趣味の世界……わたしは理解できません。


 朝の配達はたまおちゃんと一緒。

 バスケットを片手に老人ホームに向かいます。

「たまおちゃん、わたし、女の子同士でどーかと思うよ」

「ポンちゃんは子供だからわかんないんです」

「そうかなー」

「そうです」

「レッドやみどりもいるから、自粛したら?」

 たまおちゃん、怒った目でわたしを見て、

「ミコお姉さまやコンお姉さまが一度でも床を一緒してくれたら」

「ないんじゃないの?」

「ポンちゃんはコンお姉さまと一緒に寝ているんですよね」

 たまおちゃん、わたしを抱きしめて顔を寄せてきます。

 一瞬キスされるんじゃないかとドキドキしましたが……

 たまおちゃん、わたしのニオイをかいでいます。

「コンお姉さまのニオイがしますっ!」

「まとわりつくなー!」

「ポンちゃん、うらやましいっ!」

「どこが?」

「コンお姉さまと一緒に寝れるなんて!」

「わたし、コンちゃんにあんな事しないもん」

「なんでしないんですか?」

「女の子同士ですよ、どーして?」

 な、なんか噛み合ってないですね。

 わたしは「百合」な世界、さっぱりです。

「たまおちゃん、シロちゃんがいるからいいじゃないですか!」

 そーです、今日は抱き合って寝ていました。

「シロちゃん、正直かなり高得点ですよ、美人さんです」

「……」

「たまおちゃん、なにが不満なんですか?」

「シロちゃんは……最初は私も『やった』って思ったんです」

 なにが「やった」かは、知りたくもないですね。

「でも、毎晩一緒していて、気付いたんです」

「?」

「シロちゃんはマグロなんです!」


 たまおちゃんとは神社の前でお別れです。

 そこからは一人……って思っていたら、シロちゃんと遭遇です。

「あ、シロちゃん」

「ポンちゃん、配達でありますか」

「うん、シロちゃんは朝のパトロール?」

「そうであります……学校まで同行するであります」

「パトロールってお散歩だよね」

 途端にシロちゃん、銃を抜きます。

「聞こえなかったであります、何て言ったでありますか?」

「う、撃たないで」

「では、一緒に行くであります」

 このミニスカポリスは撃ちたがりなのが難ですね~

「ねぇねぇ、さっきたまおちゃんと一緒だったんだけど」

「たまおちゃん、はいであります」

「たまおちゃんが……シロちゃんはマグロって言ってたよ」

「はあ……それがどうしたでありますか?」

「シロちゃんマグロなんだ」

「マグロとは……マグロでありますよね」

「えーっと、わかる?」

「本官も大人ですから、わかるであります」

 シロちゃん、うんざりした顔で、

「本官、女であります、たまおちゃんに絡まれても嬉しくないであります」

「だよねー、わたしもわかんないよ」

「それをマグロと言われても、どうしようもないであります」

「そうなんだ」

「本官、一人で眠りたいであります」

 シロちゃん、考える顔になって、

「本官が犬だった頃をポンちゃんは知ってるであります」

「うん……パンをあげた事、あったよね」

「黒ネコを覚えているでありますか?」

「タマちゃん」

「まとわりつかれるのは、正直苦手であります」

「そうなんだ」

「本官、まとわりつかれるのであれば……店長さんがいいであります」

 む!

 この雌犬は危険です、店長さんを狙ってるんです。

 普段は全然その気がなさそうなのに、たまに本音をもらすのがコワイ!


「そんな事があるんだ」

 学校で千代ちゃんにバスケットを渡します。

 千代ちゃんが、

「ポンちゃんもシロちゃんも一人で寝ないんだ」

「本官、一人で寝たいであります」

「わたしはどーでもいいかな」

「一人の方がゆっくりできるであります」

「わたしは……すぐ寝ちゃうから、わかんないや」

 千代ちゃん、わたしとシロちゃんの言葉を聞きながらクスクス笑ってます。

「何がおかしいでありますか?」

「千代ちゃん、なんで笑うの!」

「ううん……シロちゃんは交番の犬だったんだよね」

「そうであります」

「私がゴハンあげたの、覚えてる?」

「覚えているであります」

「シロちゃん、あの頃もあんまり触られるの、好きじゃなかったような……」

 千代ちゃん、今度はわたしをしげしげ……

「ポンちゃんはすぐに寝ちゃうんだ」

「うん、わたしはすぐに寝ちゃうかな」

「そう言えば……家にゴハンを食べに来てた時も、寝ちゃってたかも」

 うーん、野良をやってた時の記憶は……

 その時はまだ子供だったし……

 本当にそんな事あったっけ……

「千代ちゃん、本当にほんとう?」

「うん、ゴハン食べたらすぐに軒下で寝てたよ」

「うわー……わたしらしいと言えばそうかも」

「それに……」

 千代ちゃん、わたしにそっと手を差し出します。

 なにかな?

「ちょっと……しゃがんで、頭を下げて」

「うん……なになに?」

「いいから、いいから」

 わたしがしゃがむと、千代ちゃん頭をナデナデ。

 うわ、なんだかすごい気持ちいい、うれしい、ホッとします。

 ついついニヤニヤしちゃうところです。

「どう、気持ちいい?」

「うん、うん……思い出した、野良の頃、なでられてました」

「ポンちゃんのお母さんタヌキは触れなかったけど、ポンちゃんは無防備だったよ」

「そうなんですか~」

 ふふ、だって頭ナデナデ、本当に気持ちいいもん。

 でも、急に寒気がしました。

 わたし、真顔になって一歩引き。

「千代ちゃん……これだけじゃないですよね?」

「え?」

「なんだか嫌な事もあったような気がします」

「うーん」

 千代ちゃん、悪戯っぽい笑みを浮かべて、

「いつもこの後、しっぽをモフモフしてたかも」

「あー、きっとそれですね」

 そっちは嫌な思い出ですね。

 千代ちゃん、シロちゃんをじっと見つめて、

「ちょっと、ちょっと!」

「何でありますか?」

 シロちゃん、千代ちゃんに顔を近付けます。

 わたしにしたように、千代ちゃん、シロちゃんの頭をナデナデ。

「交番にえさをあげに行ってた時、すごく喜んでいたような……」

 ナデナデ……シロちゃんの目の色が変わるのがわかりました。

 瞳孔が開ききってませんか?

「ねぇ、千代ちゃん、シロちゃん嫌がってなかった?」

「うーん、交番で犬だった時はナデナデはOKだったような……」

「固まっちゃいましたよ、壊れてませんか?」

「うーん、その……」

 シロちゃん、頭をナデナデされたところで動きが止まってます。

 でも、すぐに目に魂が戻ってきました。

「きゃーん!」

 頬を朱に染めて、千代ちゃんを抱きしめます。

「はふはふ!」

 千代ちゃんのほっぺにキスしまくりなシロちゃん。

 あまりの変わりようにわたしが固まっちゃいました。

 千代ちゃん、一瞬はびっくりしたものの、

「そうそう、撫でられるの、すごい好きで……」

「そ、そうだったんだ」

「はふはふ!」

 シロちゃん、千代ちゃんにキスしまくってます。

 でも、急にキスをやめると、千代ちゃんを置いて駆け出しました。

「すごいキスされちゃった……でも、シロちゃんどこに行ったと思う?」

「千代ちゃん、わたしに聞かれても……」

 わたし、そこまで言って、さっきシロちゃんが言ってたのを思い出しました。

「き、きっと店長さんの所ですっ!」

 さっき「まとわりつかれるのであれば……店長さん」って言ってたの。

 わたしもすぐに後を追います。

 店長さんの貞操の危機ですよ!

 お店に戻ってみると、店先ではコンちゃんが呆然として崩れ落ちています。

 柱にしがみついて、ミコちゃんは居間の方を見ているの。

「ミコちゃん、シロちゃん来なかった?」

「今、来た、コンちゃんがいきなりやられて……」

「店長さんが危ないっ!」

「今、やられているところ」

「ミコちゃん止めるところですっ!」

「だ、だって、シロちゃんのあんなところ、初めて見たし」

「バカーっ!」

 わたし、居間に突入です。

 ソファの上に横になっている店長さん。

 その上にシロちゃんがおおい被さっているの。

「しししシロちゃんっ!」

「はふはふ!」

「やめやめっ!」

「はふはふ!」

 シロちゃん、店長さんにキスしてむしゃぶりついています。

 もう許せないっ!

「シロちゃん、わたしの店長さんに……」

 止めようと腕をつかんだら、シロちゃんの怒った顔がこっちを見てるの。

「ガブっ!」

 もう、容赦なしでいきなり「ガブっ!」。

 わたしが手を放したら、かみつくのをやめてくれたけど……

「ウーッ!」

 怒ってます、もう完璧に犬に戻っちゃってませんか。

 噛まれた手の痛みよりも、シロちゃんの怒っているのが脅威です。

「はふはふ!」

 あ、また店長さんにむしゃぶりついています。

「やめやめっ!」

 店長さんが言ってもやめませんね……もはや本能の赴くまま?

「ポンちゃん助けてっ!」

 店長さんの叫び……わたしもそうしたいところです。

 って、わたしの背中をトントン。

 見ればミコちゃんが「打ち出の小槌」を渡してくれました。

「シロちゃん覚悟っ!」

 久しぶりの打ち出の小槌、この距離なら外したりしないんだから。

 クリティカルヒット、★3つのダメージ。

 シロちゃん、店長さんの上に崩れ落ちました。

 目を回して、頭上でひよこがダンスしてるの。

 店長さんの救出、成功です。


 シロちゃんの暴走、誰もおとがめなしでした。

 頭なでなで……シロちゃんにはNGかも。

 気持ちいいんですけどね、頭なでなで。

 でも、暴走されちゃ困りますもんね。

 わたしが朝の準備をしていると、またしてもミコちゃん。

「ポンちゃん、たまおちゃん達を起こしてきて」

「はーい」

 わたし、お札を貰ってたまおちゃん達の寝ている部屋へ。

 封印を解いてふすまを開けると……すごい事に!

 たまおちゃんとシロちゃん、素っ裸!

「ちょっ……どーしたんですかっ!」

 この間はたまおちゃんだけだったのに、今日はシロちゃんもすっぽんぽん。

 それにこの乱れっぷりは……

 シロちゃんはスヤスヤ寝息をたてています。

 でも、たまおちゃんはレイプ後みたい。

 目が、瞳孔が、開ききってるの。

「たまおちゃん、起きて、死なないで!」

 ゆすったら、すぐに瞳に魂もどりました。よかった~

「ポ、ポンちゃん……」

「どうしたんですかっ!」

「う、うん……」

 たまおちゃん、寝ているシロちゃんを見て、

「シロちゃん、頭を撫でたら発情するって聞いたから撫でたの」

「はぁ!」

「そしたら攻められちゃって、攻め落とされちゃった」

 たまおちゃん、モジモジして「ポッ」なんてなってます。

「すごかった」

 わたしの知らない世界みたいです。

 知りたくもないかな~


 ガランとした駐車場にレッドがいます。

「ねぇねぇ、コンちゃん」

「何じゃ、ポン」

「レッド、さっきからなにやってると思います?」

「うん、レッドかの?」


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